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憲法第九条の解釈に関する質問主意書

衆議院 第93回 第11号

提出者
衆議院
提出日
1980年11月4日
内閣転送 1980年11月8日
答弁書受領日
1980年12月5日
提出から31日
答弁の項目数
6
質問 1,403字/答弁 1,325字

質問本文

衆議院議長 福田 一 殿

憲法第九条の解釈に関する質問主意書

日本国憲法第九条に関し、政府の見解について質問する。

一 第一項で放棄した「戦争、武力による威嚇及び武力の行使」(以下単に「戦争」という。)は、

1 国際紛争を解決する手段としての戦争であり、そうでないいわゆる自衛戦争は放棄されていないと解するか。

2 従来、ほとんどすべての戦争は自衛の名の下に行われ、自衛のための戦争も国際紛争を解決するためであり、自衛戦争を含めてすべての戦争を放棄したものと解するか。

二 第二項前段の「陸海空軍その他の戦力(以下単に「戦力」という。)は、これを保持しない。」という意味は、

1 第二項の「前項の目的を達するため」とは、単に戦力を保持しないことの目的又は動機を述べたものであり、無条件に戦力を保持しない、従つて自衛のための戦力も保持しないと解するか。

2 「前項の目的を達するため」とは、国際紛争解決のための戦争を放棄するという第一項の内容を指すものであり、そのために戦力を保持しないのであるから、(一のーの解釈によつて)自衛のための戦争は放棄せず、そのための戦力の保持は許されると解するか。

三 第二項後段の「国の交戦権」については、国の戦争を行う権利と解するか、あるいは国が交戦国として国際法上有している権利と解するかについては、後者であると明らかにしているが、この交戦権の否認は、

1 前段と独立して規定されているところから、文字どおり国の交戦権を否認していると解するか。

2 前段と後段とを書き分けているが、全体の趣旨から前段との関連において、自衛のための戦力の保持が認められるならば、交戦権も認められると解するか。

四 自衛隊の存在が憲法違反でない根拠は、

1 自衛のための戦力は保持を禁止されていないと解するからであるか。

2 主権国としての国家が持つ固有の自衛権に基づき、それを裏付ける自衛のための力は、憲法第九条の戦争の放棄の規定にかかわらずこれを持つことができるが、同条は、戦力の保持を許さないことから憲法にいう戦力は持ち得ないが、その戦力に至らない、自衛のための必要最小限の実力は持ち得るものであり、自衛隊の持つ力はこの程度を超えない実力であると解するからであるか。

3 自衛隊が自衛のための戦闘行為を行う場合に、国際法上軍隊に認められている地位、権能は認められ、外国に対してこれを主張することができるか。また、外国に対し、その軍隊が国際法上守らなければならない義務の履行を要求する権利があるか。

五 海外派兵(武力行使の目的をもつて武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣すること。)は、自衛のためのものであつても、自衛のための必要最小限度を超えるものであるから憲法違反となると解するか。あるいは、自衛のための必要不可欠のものであるならば、憲法違反とならないと解するか。

六 徴兵制について

1 徴兵制をとることによつて充足される実力が、憲法で保持を禁止する戦力になるから憲法違反となると解するのか。

2 固有の自衛権に基づく必要最小限の自衛力が志願制によつては充足できない場合、あるいは志願制と併用することによつてより国民に公平に自衛力に参加させる(例えば選抜徴兵制によつて)必要があると判断された場合に、憲法第十五条を根拠として徴兵制をとることも憲法違反であるか。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

一について

憲法第九条第一項は、独立国家に固有の自衛権までも否定する趣旨のものではなく、自衛のための必要最小限度の武力を行使することは認められているところであると解している。政府としては、このような見解を従来から一貫して採つてきているところである。

二について

憲法第九条第二項の「前項の目的を達するため」という言葉は、同条第一項全体の趣旨、すなわち、同項では国際紛争を解決する手段としての戦争、武力による威嚇、武力の行使を放棄しているが、自衛権は否定されておらず、自衛のための必要最小限度の武力の行使は認められているということを受けていると解している。

したがつて、同条第二項は「戦力」の保持を禁止しているが、このことは、自衛のための必要最小限度の実力を保持することまで禁止する趣旨のものではなく、これを超える実力を保持することを禁止する趣旨のものであると解している。

三について

憲法第九条第二項の「交戦権」とは、戦いを交える権利という意味ではなく、交戦国が国際法上有する種々の権利の総称を意味するもので、このような意味の交戦権が同項によつて否認されていると解している。

他方、我が国は、自衛権の行使に当たつては、我が国を防衛するため必要最小限度の武力を行使することが当然に認められているのであつて、その行使は、交戦権の行使とは別のものである。

四について

1及び2 二についてにおいて述べたとおり、我が国が自衛のための必要最小限度の実力を保持することは、憲法第九条の禁止するところではない。自衛隊は、我が国を防衛するための必要最小限度の実力組織であるから憲法に違反するものでないことはいうまでもない。

3 自衛隊が国際法上軍隊として取り扱われるかどうかは、個々の国際法の趣旨に照らして判断されるべきものであると考える。

五について

従来、「いわゆる海外派兵とは、一般的にいえば、武力行使の目的をもつて武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣することである」と定義づけて説明されているが、このような海外派兵は、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであつて、憲法上許されないと考えている。

六について

1 一般に徴兵制度とは、国民をして兵役に服する義務を強制的に負わせる国民皆兵制度であつて、軍隊を常設し、これに要する兵員を毎年徴集し、一定期間訓練して、新陳交代させ、戦時編制の要員として備えるものをいうと理解している。

このような徴兵制度は、我が憲法の秩序の下では、社会の構成員が社会生活を営むについて、公共の福祉に照らし当然に負担すべきものとして社会的に認められるようなものでないのに、兵役といわれる役務の提供を義務として課されるという点にその本質があり、憲法第十三条、第十八条などの規定の趣旨からみて、許容されるものではないと考えている。

2 御指摘のような徴兵制度についても1に述べたところが妥当するものと考える。

なお、憲法第十五条は、公務員の任免権は終局的には国民にあるという国民主権の原理を表明するとともに、公務員の性格などについて規定したものであつて、これをもつて憲法が徴兵制度を許容しているとは考えていない。

右答弁する。

衆議院の原文

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