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市民的及び政治的権利に関する国際規約第一選択議定書批准等に関する質問

参議院 第142回 第10号

提出者
参議院
提出日
1998年5月7日
内閣転送 1998年5月11日
答弁書受領日
1998年6月9日
提出から33日
答弁の項目数
5
質問 1,159字/答弁 1,412字

質問本文

市民的及び政治的権利に関する国際規約第一選択議定書批准等に関する質問主意書

政府は右市民的及び政治的権利に関する国際規約(B規約)第四〇条一(b)に基づく第四回報告の中で右選択議定書批准に関し、「…しかし締結に関し、特に司法権の独立を侵すおそれがないかとの点も含め我が国司法制度との関係等慎重に検討すべき問題がある」と述べ、又私が平成九年三月一四日参議院予算委員会総括質疑において行った右に関する質問に対して朝海和夫外務省国際社会協力部長は、「…この制度につきましては、B規約人権委員会での個人通報の実際の事例の分析などをして検討しました結果、 若干どうかと思う例もございまして、特に憲法の保障する司法権の独立など、司法制度などとの関連で問題点があるという指摘もある」と答弁しており、また当時の池田行彦外務大臣も「司法権の独立の関係でどうであろうかとか。例えば国内救済を尽くしていないのにB規約に基づく個人通報として受理されたというケースもあった」という内容の答弁を行っている。

そこでこの様な政府の報告・答弁を踏まえて以下の点を質問する。

一 右答弁にある「若干どうかと思う例」とは具体的にどのようなケースを指すのか。事件番号、当事者名、相手国を明らかにされたい。又各ケース毎に問題点を端的に指摘されたい。

二 「国内救済を尽くしていないのにB規約に基づく個人通報として受理されたというケース」についても一と同様特定されたい。

三 我が国は既に国際司法裁判所の強制管轄権を認めており、同裁判所の判決は我が国に対して法的拘束力を有しているが、このことは「憲法の保障する司法権の独立」を侵すおそれがあるのかないのか。ないとすれば、国際人権規約(自由権)委員会の見解が勧告的効力しかないのに「司法権の独立を侵すおそれ」を問題とすることといかなる関係に立つのか。

四 「司法制度などとの関連で問題がある」との指摘もあるということだが、

1 「司法権の独立を侵すおそれ」以外にも問題があるという趣旨か。そうであるとすればどのような問題があるのか、具体的に指摘されたい。

2 そのような指摘は最高裁判所の見解でもあるのか。

五 国連の有する手続きには、直接個人からの申立を審査する手続きであって条約によらずに国連各機関の決議によるもの(例えば国連人権委員会の恣意的拘禁ワーキンググループによるもの、ユネスコによるもの等)が知られているが、これらの手続きによる個人通報とその結果出される国連諸機関の見解や勧告についても「司法権の独立を侵すおそれ」があると考えているのか、「司法制度等との関連で問題がある」と考えているのか。考えていないとすれば、国際人権規約(自由権)委員会の場合と異なるとする具体的理由を示されたい。

右質問する。

参議院の原文・経過

政府答弁書

一及び二について

市民的及び政治的権利に関する国際規約(昭和五十四年条約第七号。以下「規約」という。)の選択議定書は、規約に規定されているいずれかの権利がこの議定書の締約国により侵害されたと主張する当該締約国の管轄下にある個人からの通報について、規約第二十八条1に基づき設置された人権委員会(以下「規約人権委員会」という。)は、当該個人が、国内的救済が不当に遅延する場合を除くほか、利用可能なすべての国内的救済を尽くしたことが確認されない限り、いかなる通報も審議してはならないと規定している。

この規定に関連する例を挙げれば、千九百八十四年(昭和五十九年)七月二十五日に採択された、通報番号千九百八十二年第百三十一号、通報者エヌ・ジー、関係当事国ウルグァイ東方共和国に関する見解においては、同国裁判所での手続が係属中であったにもかかわらず、当該通報の受理についての許容性を認める判断をしている。また、千九百九十四年(平成六年)七月十五日に採択された、通報番号千九百九十年第四百十七号、通報者マニュエル・バラゲール・サンタカーナ、関係当事国スペインに関する見解においては、同国裁判所での第一審判決が、提訴から数年を経過した後においても示されていないことについて、裁判が著しく遅延している事例に当たるとして、当該通報の受理についての許容性を認める判断をしている。以上の例については、国内的救済が尽くされたかどうか又は国内的救済が不当に遅延したかどうかに関する見解について、我が国として慎重に検討すべき点を含んでいると考えている。

三について

国際司法裁判所は、国と国との間の紛争を国際法に従って裁判することを任務とする国際機関であり、事件の当事者である国は、当該事件において同裁判所の裁判に従う義務を負う。我が国は、国際司法裁判所のいわゆる強制管轄権を認めているが、これは、同一の義務を受諾する他の国との関係において、当該国との間の紛争に対する国際司法裁判所の管轄を義務的であると認めるものである。このように、国際司法裁判所は、国と国との間の紛争を国際法に従って裁判するのであるから、同裁判所に係る右のような義務を受け入れたからといって、御指摘の司法権の独立を侵すというような問題が生じることはないと考えている。

これに対し、規約人権委員会の見解については、規約人権委員会が裁判係属中の具体的事件について一定の判断を示すことになれば、その判断に法的拘束力がないとしても、担当裁判官の審理、判断に影響を及ぼすおそれがあるのではないかと考えられること等から、司法権の独立を侵すおそれがないか慎重に検討する必要があると考えている。

四の1について

一事不再理規定がないことから乱訴を防止するための歯止めがなく、したがって、濫用のおそれが否定できないこと、現在の我が国の訴訟手続に基づく救済手続の体系に混乱をもたらすおそれがあること等の問題があると考えている。

四の2について

最高裁判所の見解については、政府として答弁する立場にはない。

五について

現在のところ、国連人権委員会の恣意的拘禁作業部会の見解等により司法権の独立等との関係で具体的問題が生じているとは考えていない。いずれにせよ、御指摘の決議に基づく手続については、規約の選択議定書による手続とその根拠が異なることもあり、両者を単純に比較することは適当ではないと考えられる。

参議院の原文

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