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日本の戦後処理問題に関する質問主意書

参議院 第155回 第13号趣旨が明らかではない ×1承知していない ×3検討してまいりたい ×1

提出者
参議院
提出日
2002年12月12日
内閣転送 2002年12月13日
答弁書受領日
2003年1月28日
提出から47日
答弁の項目数
13
質問 2,233字/答弁 4,365字

質問本文

かつての大本営も、現在の日本政府・外務省も、第二次世界大戦に関して生じた様々な問題を隠蔽し、「たいしたことはない」とその場をしのいで、次々と事態を悪化させ、国益を損なう政策を展開してきた。アジアの近隣諸国や米国との間に横たわる戦後処理問題も、つまらない省益や面子を捨てて、率直に問題を国民に知らせ、場合によってはドイツ政府が行ったように企業を説得してでも、誠実かつ迅速に、被害者の納得が得られ、本当の和解につながる政策を採るべきである。戦後処理問題での外務省の過去の対応における責任は極めて重い。

そこで、以下質問する。

一 今年の十一月十九日、大阪高等裁判所は、戦争中に日本製鉄大阪製鉄所で強制労働させられていた韓国人元徴用工二人が、国と新日本製鉄を相手取って謝罪と未払賃金の支払などを求めた訴訟の控訴審判決で、強制労働の事実は認定したものの、「原告らの請求権は一九六五年の日韓請求権協定によってすべて消滅している」との判断を示し、訴えを退けた。

1 これに関し、一九九一年八月二十七日の参議院予算委員会で、外務省の柳井条約局長は、一九六五年の日韓請求権協定では、相互に放棄したのは国の外交保護権であり、個人の請求権までは消滅していない旨答弁しているが、政府は現在もこの見解をとっているか。

2 この二人への未払賃金は東京法務局に供託してあると国が原告に説明しているが、それは事実か。

3 この二人の原告のような、朝鮮半島出身の元日本軍人・軍属及び民間の被徴用者へ本来支払うべき未払賃金で法務局に供託されているものは何人分で、総額は幾らか。それらを支払うために政府はこれまでどのような努力をしてきたのか。名簿を公表するなどして広報を行ってきたり、韓国において調査を行ってきたのか。また、北朝鮮に対してはどうするつもりなのか。

二 昨今北朝鮮の拉致問題が国民の注目を集め、報道にも頻繁に取り上げられている。今回の拉致被害者支援法には「未曾有の国家的犯罪行為によって」という文言があるが、敗戦後そのまま捕らえられ、極寒の地で長期間抑留された上強制労働させられた、シベリア抑留は、より大規模で組織的な人権侵害で、そのことは一九九三年に来日したエリツィン大統領も認めて謝罪している。ところが、政府・外務省は、真相の究明や抑留者への補償などこの問題に対してなすべきことを何もなさず、この不作為が原因で多くの日本人が、今日まで長く大変な苦労を強いられてきた。現在でも、平均年齢八十歳を超える方々がこの寒い中を国会前の路上に座り込んで、シベリア抑留の問題を解決のため訴え続けなければならない情けない状況である。

1 十一月二十二日に元抑留者の方々が未払賃金の支払を求めて国会前で座込みを行った後、小泉総理あての要請書を内閣府に提出した。この要請書に総理は回答をしたのか。

2 この未払賃金の問題についての政府の見解を答えられたい。

3 元抑留者に対しては、労働証明がないとの理由で未払賃金が支払われていないようだが、ロシア政府は、元抑留者らの求めに応じて一九九二年以来「労働証明書」を発行している。ロシア側はこれらの「労働証明書」で問題が解決することを期待すると公式に表明しているが、日本政府はこの「労働証明書」を公式文書と認めていないが、それはなぜか。

4 強制連行・拉致・抑留という観点でシベリア抑留は国際法違反ではないのか。国際法違反であるならばロシアに対して補償を請求すべきではないのか。

5 一九五六年の日ソ共同宣言でロシア(ソ連)に対して国としての請求ができなくなったのであるならば、抑留問題が被害者自らの意思でなく、国が徴兵して送り出した結果生じたものなので、元抑留者に対し、政府が未払賃金を払うか補償を行うべきではないか。

6 政府はシベリア抑留について国家としての政治的責任を感じていないのか。政府はこの問題は終わったものと考えているのか、解決を先延ばしにして年老いた元抑留者が死亡して問題が自然消滅するのを待っているのか。

三 戦後、第二次世界大戦に関する補償裁判は、一九九九年以降米国でも起こされていて、日本企業や日本政府が訴えられている。

1 現在までに幾つの裁判があって、日本企業は何社訴えられているのか。

2 特に日本軍の捕虜になった米国人元兵士のケースに米国政府や議会は強い関心を寄せているようだが、日本政府は米国の裁判所でどのような答弁をしているのか。冒頭述べた「個人の請求権」については、サンフランシスコ講和条約でも消滅していない旨昨年三月二十二日の参議院外交防衛委員会で海老原条約局長が答弁しているが、これと同様の趣旨のことを述べているのか。

3 米国連邦議会の上下両院にこうした問題について提出された決議案や法案は幾つあるのか。また、政府は、そうした動きをどう受け止めているのか。

4 これら戦後補償問題が日米間の信頼を揺るがす外交問題になっているとの指摘もあるが、日米政府間でこのことを話し合ってきたのか。

5 九月二十五日、米下院司法委員会補償小委員会で、キャノン下院議員の質問に答えて、国務省のタフト法律顧問が、国務省がこの問題で日本政府・企業にアプローチしたことを確認した上で、「日本側からよい反応が得られていない」と証言している。この発言内容は事実か。事実であれば、日本側は、いつ、だれが、どのような対応をしたのか。

右質問する。

参議院の原文・経過

政府答弁書

一の1について

御指摘の平成十四年十一月十九日に言い渡された大阪高等裁判所平成十三年(ネ)第一八五九号損害賠償等請求控訴事件の判決(以下「御指摘の大阪高裁判決」という。)は、原告である控訴人らの請求に係る債権は、財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(昭和四十年条約第二十七号。以下「日韓請求権協定」という。)第二条3に定める財産、権利又は利益に該当し、財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定第二条の実施に伴う大韓民国等の財産権に対する措置に関する法律(昭和四十年法律第百四十四号。以下「措置法」という。)の適用によって昭和四十年六月二十二日をもって消滅したものと解するのが相当である旨判示したものである。日韓請求権協定第二条3に定める財産、権利及び利益に該当する債権が措置法によって消滅したことについては、政府が従来から明らかにしているところであり、平成四年二月二十六日の衆議院外務委員会においても、柳井俊二外務省条約局長(当時)は、我が国が措置法において大韓民国(以下「韓国」という。)の国民の財産権を消滅させる措置をとったことにより、「韓国の国民は我が国に対して、私権としても国内法上の権利としても請求はできない」旨述べている。

これに対し、お尋ねの平成三年八月二十七日の参議院予算委員会における同条約局長の答弁は、措置法について説明したものではなく、日韓請求権協定による我が国及び韓国並びにその国民の間の財産、権利及び利益並びに請求権の問題の解決について、国際法上の概念である外交的保護権の観点から説明したものであり、日韓請求権協定に関するこのような政府の解釈は一貫したものである。

一の2について

お尋ねの未払賃金の供託については、御指摘の訴訟において、当該訴訟の原告である御指摘の方々を被供託者としてされたものであるかどうかについては、その時点において確認することができる諸資料のみによっては判断することができない旨主張していたところ、御指摘の大阪高裁判決の理由中において、御指摘の方々を被供託者として大阪法務局に供託されたとの事実認定がされたものと承知している。

一の3について

供託所においては、お尋ねの「朝鮮半島出身の元日本軍人・軍属及び民間の被徴用者」の「未払賃金」の弁済供託事件も通常の民事紛争に関する弁済供託事件の一つとして取り扱われており、このうち政府がした朝鮮半島出身の元日本軍人及び軍属に係る未支給給与等の未払金についての供託は、延べ十一万千二百六十人分で総額九千百三十六万四千一円であるが、お尋ねの「民間の被徴用者」の分を含めた「未払賃金」についての被供託者の総人数及び総供託額は把握していない。

韓国との間では、日韓請求権協定第二条1において、御指摘の「未払賃金」の問題を含め「両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、(中略)完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認」している。また、政府として、お尋ねのような調査や関係資料の公表を行う法的義務があるわけではない。

また、北朝鮮との間では、日朝平壌宣言において「双方は、国交正常化を実現するにあたっては、千九百四十五年八月十五日以前に生じた事由に基づく両国及びその国民のすべての財産及び請求権を相互に放棄するとの基本原則に従い、国交正常化交渉においてこれを具体的に協議する」ことが明記されており、御指摘の「未払賃金」の問題も、右のとおり日朝平壌宣言に明記されているところに従い、日朝国交正常化交渉において協議されるべきものである。

二の1について

お尋ねの要請書については、内閣官房において内閣総理大臣あての請願としてこれを受理した後、その記載に係る事項についての主管省である外務省に回付し、現在、同省においてその処理の在り方について検討しているところである。

二の2及び5について

政府としては、いわゆるシベリア抑留者に対し、当該抑留中の労働に係る賃金の支払を行う法的義務を負うことはないと考えている。

また、いわゆるシベリア抑留問題等に関し、日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との共同宣言(昭和三十一年条約第二十号。以下「日ソ共同宣言」という。)第六項は、「日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、千九百四十五年八月九日以来の戦争の結果として生じたそれぞれの国、その団体及び国民のそれぞれ他方の国、その団体及び国民に対するすべての請求権を、相互に、放棄する。」と規定しているところ、これについて、国に法的な補償の責任はないというのが従来からの政府の見解であり、また、平成九年三月十三日に言い渡された最高裁判所第一小法廷平成五年(オ)第一七五一号各損害賠償請求事件の判決等も同様の判断を示していると承知している。

二の3について

御指摘の「労働証明書」につき政府として「公式文書と認めていない」とのお尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、当該文書については、ロシア連邦政府がいわゆるシベリア抑留者個人の要請に基づいて発給したことは承知している。当該文書に関する政府の基本的立場は、このような文書を発給するか否かは第一義的には抑留国側の問題であり、当該文書に基づき抑留者の所属国たる我が国が当該抑留者に対し労働賃金の支払を行う国際法上の義務を負うことはないというものである。

二の4について

いわゆるシベリア抑留は、人道上問題であるのみならず、当時の国際法に照らしても問題のある行為であったと認識しており、「日本国軍隊ハ完全ニ武装ヲ解除セラレタル後各自ノ家庭ニ復帰シ平和的且生産的ノ生活ヲ営ムノ機会ヲ得シメラルベシ」とするポツダム宣言第九項に違反したものであったと考える。

しかしながら、日ソ共同宣言第六項は、日ソ両国は「千九百四十五年八月九日以来の戦争の結果として生じたそれぞれの国、その団体及び国民のそれぞれ他方の国、その団体及び国民に対するすべての請求権を、相互に、放棄する」旨を規定しており、また、我が国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間のすべての条約その他の国際約束はロシア連邦との間で引き続き適用されることから、いわゆるシベリア抑留に係る請求権の問題は、同国との間においては既に解決済みである。

二の6について

戦後処理問題については、昭和五十七年から二年半にわたって戦後処理問題懇談会が検討を重ね、昭和五十九年に報告を出したところであり、政府としては、この報告の趣旨に沿って、「平和祈念事業特別基金等に関する法律」案を提出し、昭和六十三年に同法の成立をみたところである(昭和六十三年法律第六十六号)。いわゆるシベリア抑留者に対しても、同法に基づき、慰労金の支給、慰労品の贈呈等を行ってきたところであり、政府としては、今後とも、同法に基づいて慰藉事業を適切に推進することにより、関係者の心情にこたえてまいりたい。

三の1について

平成十一年以降、先の大戦に係る損害賠償請求権の問題等に関し、アメリカ合衆国(以下「米国」という。)において、日本国を被告として提起された訴訟は二件である。日本企業を被告として提起された訴訟については、政府は、当事者ではないので、これらの訴訟の件数及び被告の数について正確に知り得る立場にはないが、訴訟の件数は三十以上であり、被告の数は二十以上であると承知している。

三の2について

旧日本軍の捕虜となった米国人二名が先の大戦中の日本の戦争行為により死傷したすべての米国人を代表して各人が被った被害に対する損害賠償の支払を求めて日本国を被告として提起している訴訟において、政府は、原告の請求権は日本国との平和条約(昭和二十七年条約第五号。以下「サン・フランシスコ平和条約」という。)により完全かつ最終的に解決済みである旨の主張を行っている。お尋ねの海老原紳外務省条約局長(当時)の答弁は、我が国の国内の訴訟において、政府は、サン・フランシスコ平和条約により個人の請求権又は債権に基づく請求に応ずべき法律上の義務が消滅し、その結果救済が拒否されると主張している旨説明し、サン・フランシスコ平和条約により先の大戦にかかわる日本国と連合国の請求権の問題は個人の請求権に係る問題を含めてすべて解決済みである旨を述べたものであって、右の米国での訴訟における政府の主張とその趣旨において同一のものである。

三の3について

平成十四年十一月に閉会した第百七回米国連邦議会においては、旧日本軍の捕虜となった元米国軍人等に関連して、上院及び下院の合計で十二の法案及び二の決議案が提出されたと承知している。平成十五年一月に開会した第百八回米国連邦議会において同様の法案又は決議案が提出されたとは承知していない。これらの法案及び決議案に関し、政府としては、先の大戦に係る日米両国及びその国民の間の財産及び請求権の問題についてはサン・フランシスコ平和条約により完全かつ最終的に解決済みであると考えている。

三の4について

日本政府及び米国政府は、先の大戦に係る両国及びその国民の間の財産及び請求権の問題についてはサン・フランシスコ平和条約により完全かつ最終的に解決済みであるということで完全に見解が一致しており、旧日本軍の捕虜となった米国人が戦時中の労働等に係る損害賠償等を求めて日本企業を被告として提起した訴訟及び当該訴訟に関連して米国連邦議会に提出された法案等の問題についても、緊密に情報を交換するなどしてきている。

三の5について

平成十四年九月二十五日に開催された米国連邦議会下院司法委員会入国管理、国境警備及び請求権小委員会の公聴会において、クリス・カノン同委員会委員が、旧日本軍の捕虜となった米国人が戦時中の労働等に係る損害賠償等を求めて日本企業を被告として提起した訴訟を日本政府の支援も得て和解によって解決することにより当該米国人が当該日本企業から謝罪及び金銭を得られるようにするため国務省が支援することにつきただしたのに対し、ウイリアム・タフト国務省法律顧問は、国務省は日本政府及び一部の日本企業と接触を図ったが、これらの者が当該訴訟を和解によって解決する用意がある旨の反応は得ていない旨の発言を行ったと承知している。政府としては、米国政府から同顧問の発言に係る接触を受けたことはあるが、その詳細については、米国との外交関係にかかわる事項であることから、答弁を差し控えたい。また、日本企業の国務省に対する具体的な対応については、承知していない。

参議院の原文

この答弁書に出てくる定型句

趣旨が明らかではない ×1承知していない ×3検討してまいりたい ×1

語の一致で数えたものです。答弁の評価ではありません。同じ型の答弁が過去にどれだけあるかは、型を押すと出ます。

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