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南海トラフ地震臨時情報制度の運用による社会不安の扇動及び米価変動等の経済的影響に関する質問主意書
参議院 第217回 第157号お答えすることは困難 ×1趣旨が明らかではない ×1
質問本文
政府は平成二十三年に発生した東日本大震災を契機に、長年続けてきた「東海地震は直前予知が可能である」との前提に基づく防災体制(いわゆる「大震法(大規模地震対策特別措置法)体制」)を抜本的に見直し、平成二十九年には「地震の直前予知は不可能である」との方針を正式に打ち出したと承知している。この方針転換に基づき、従来の「東海地震に関連する情報」(調査情報、注意情報、予知情報)等は廃止され、新たに「南海トラフ地震臨時情報」(以下「臨時情報」という。)制度が創設された。
内閣府「南海トラフ沿いの地震観測・評価に基づく防災対応検討ワーキンググループ」が取りまとめた「南海トラフ沿いの地震観測・評価に基づく防災対応のあり方について(報告)」(平成二十九年九月)には、「現時点においては、地震の発生時期や場所・規模を確度高く予測する科学的に確立した手法はなく、大規模地震対策特別措置法に基づく警戒宣言後に実施される現行の地震防災応急対策が前提としている確度の高い地震の予測はできないのが実情である。」、「大震法に基づく現行の地震防災応急対策は改める必要がある。」と記載されている。また、NHKの報道(平成二十九年九月二十三日)では、「予知を前提とした警戒宣言制度は現実的でなく、予知体制は廃止される」と明言されている。
しかし、実際の制度運用を見ると、臨時情報には、「調査中」、「巨大地震注意」、「巨大地震警戒」といった段階的分類が残存しており、地震の予知を前提とした「東海地震に関連する情報」に酷似していると専門家(石橋克彦神戸大学名誉教授、ロバート・ゲラー東京大学名誉教授など)から指摘されている。さらに、令和六年八月八日に発表された「臨時情報(巨大地震注意)」を契機として、米などの備蓄需要が急増し、米価が一時的に高騰したことも報告されている。
このような「予知のフリ」による制度運用と情報発信が社会不安を煽り、経済活動や物価に影響を与える可能性について、以下質問する。
一 政府は平成二十九年に「地震の直前予知は不可能である」旨の方針を内閣府の公的資料において明言しており、気象庁も当該方針にのっとって防災体制を再構築しているが、現行の「臨時情報」における情報分類(調査中、巨大地震注意、巨大地震警戒)が、かつての「東海地震に関連する情報」等に酷似しているとの指摘について、政府の見解を示されたい。
二 臨時情報は、どのような観測データや前震等をトリガーとして発表されるのか示されたい。また、それに基づく政府発表が「予知体制が続いている」との誤解を生む懸念について、政府の評価を示されたい。
三 令和六年八月八日に「臨時情報(巨大地震注意)」が発表された際に、報道やSNS等を通じた情報拡散により、備蓄行動が活発化し米価の高騰を招いたとの指摘がある。政府は臨時情報の発表が市場に与えた影響を把握・検証しているか示されたい。把握・検証していない場合、今後の対応方針を示されたい。
四 気象庁や内閣府が「臨時情報」の発表を行うことで、制度上は「予知を否定している」一方、実態としては「予知的対応」が維持されているとの批判が専門家からある(石橋名誉教授による「大震法の亡霊」との批判など)。この点について政府の見解を示されたい。
五 臨時情報制度や関連観測体制は、気象庁等の予算の根拠ともなっている。過去五年間における南海トラフ関連の観測・情報発信体制に係る予算額及び使途内訳について明示されたい。
質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。
右質問する。
政府答弁書
一、二の後段及び四について
御指摘の「東海地震に関連する情報」は、東海地震の発生のおそれがあると判断された場合に発表する「予知情報」など、地震の前兆現象を捉えることで、東海地震の発生の直前に予知ができる可能性があることを前提とした情報の体系であった一方、「南海トラフ地震臨時情報」の「巨大地震警戒」や「巨大地震注意」は、南海トラフ沿いにおける想定震源域でマグニチュード六・八程度以上の地震の発生等が捉えられ、南海トラフ沿いにおいて大規模な地震が発生する可能性が平常時と比べて相対的に高まっていると評価された場合に発表するものであって、地震を予知する情報ではなく、「東海地震に関連する情報」と内容が異なるものである。政府においては、「南海トラフ地震臨時情報」について、「南海トラフ地震防災対策推進基本計画」(平成二十六年三月二十八日中央防災会議決定、令和三年五月二十五日一部変更)や「南海トラフ地震の多様な発生形態に備えた防災対応検討ガイドライン」(平成三十一年三月二十九日内閣府(防災担当)策定、令和三年五月十日一部改定)に制度趣旨等を記載するとともに、広報資料の配布等により周知を図っているところであり、今後とも、これらの方法により周知徹底を図ってまいりたい。
二の前段について
御指摘の「南海トラフ地震臨時情報」については、「南海トラフ地震防災対策推進基本計画」において、「南海トラフの想定震源域及びその周辺で速報的に解析されたマグニチュード六・八程度以上の地震が発生、またはプレート境界面で通常とは異なるゆっくりすべり等を観測した場合」に「南海トラフ地震臨時情報(調査中)」を発表するほか、「南海トラフ地震臨時情報(調査中)発表後」、「南海トラフ沿いの想定震源域内のプレート境界でマグニチュード八・〇以上の地震が発生したと評価が出された場合」に「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)」を、「南海トラフ沿いの想定震源域内のプレート境界でマグニチュード七・〇以上マグニチュード八・〇未満又はプレート境界以外や想定震源域の海溝軸外側五十キロメートル程度までの範囲でマグニチュード七・〇以上の地震(ただし、太平洋プレートの沈み込みに伴う震源が深い地震は除く)が発生若しくは、南海トラフ沿いの想定震源域内のプレート境界面で通常と異なるゆっくりすべりが観測されたと評価した場合」に「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を、「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)及び南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)のいずれの発表条件も満たさなかった場合」に「南海トラフ地震臨時情報(調査終了)」を、それぞれ発表することとしている。
三について
お尋ねの「市場に与えた影響」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、令和六年八月八日に御指摘の「南海トラフ地震臨時情報」の「巨大地震注意」を発表した際の影響について、同年十月三十日に開催した第六十三回食料・農業・農村政策審議会食糧部会参考資料四「令和六年端境期の需給状況に関する分析」において、米の「各流通段階における供給状況は、昨年と同程度から昨年以上に供給が行われていたが、八月の南海トラフ地震臨時情報等を受けた買い込み需要に各流通段階からの供給が追い付かない状況が発生した」と分析しているほか、「中央防災会議防災対策実行会議」に設置された「南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ」において、交通事業者や観光事業者等に及ぼす影響について調査し、その検証を行ったところである。
五について
政府においては、南海トラフを含む日本全国の地震活動、地殻変動等を一体的に観測・監視し、適時的確に情報を発表しているところであり、お尋ねの「南海トラフ関連」の「予算額及び使途内訳」を区分してお答えすることは困難である。