ことばで探す › 衆議院 第142回
台湾向け原子力発電設備の輸出に関する質問主意書
衆議院 第142回 第59号
質問本文
台湾に向けて日本企業の原子力発電設備や発電機の輸出準備が進行しているが、本件は政府の許可事項であり、核拡散防止条約の規定を満たさなければならない事案であるので、台湾向け原子力発電施設の輸出に関してつぎのとおり質問する。
一 日本企業の台湾向け原子力発電施設の輸出に関する事実確認
1 政府は、日立製作所、東芝により原子力発電設備、三菱重工業により発電機の輸出準備が進行している事実を承知しているか。
2 上記企業からの輸出許可申請は既にあったか。
二 輸出相手先の安全確保について
1 原子力発電設備の輸出に関してはロンドンガイドライン・パート1および原子力安全条約で輸出相手国の安全確保が条件とされている。輸出相手先台湾では、建設予定の原子力発電施設の安全審査に当たる台北県政府が一九九一年八月編集した「台北県対核四環境影響評估的審査報告(台北県第四原発環境影響評価審査報告)」のなかで、原子炉の安全確保や運転要員の能力、訓練、管理体制面での危惧と不安が示されている(別添資料)。
管轄する行政機関が安全性評価について右のような疑義を示していることは、輸出相手先=台湾では安全が確保されておらず、輸出許可条件を満たしていないことを物語ると考えるが、政府の認識はいかがか。
三 核拡散防止に関して
核拡散防止条約(以下NPTとする)三条は核物質、原子力発電設備の輸出に当たっては核兵器に転用されないよう保障措置の確保を求めている。また原子力開発利用長期計画は保障措置確保のための政府間の原子力平和利用協定の締結を求めている。台湾は日本との間で国交はなく、またNPTおよびIAEAの加盟国でもない。台湾からいかにして保障措置を確保するのかに関し、以下の点について質問する。
1 外務省の説明によれば「台湾向け原発輸出は、米国、台湾、IAEA間で結ばれた保障措置協定により、平和的利用の保障を米国政府より確保している。したがってこのNPT三条に適合するものである」とのことであるが、政府の見解を示されたい。
2 外務省が本件に関し、NPTの定める保障措置が満たされていると判断した根拠として示した文書に関して質問する。
(1) 外務省が根拠とした文書は一九九八年一月二八日付け米国国務省からの在米日本大使館宛て口上書である。国際法上、口上書が核拡散防止に係わる保障措置を確約するに十分な効力を持つとは考えにくいが、いかがか。
(2) 同口上書には2項で「台湾当局の管理下にある地域の核物質はIAEAの保障措置の確保に従う。もし、IAEAが台湾の核施設につき保障措置を確保しない場合は、米国政府は核施設への逸失した保障措置の確保に合意を求める立場から日本政府と相談する」とされ、また4項では核物質の移転または再移転についても「それに関連して発生する問題について、日本政府の要求があれば双方に受け入れられる解決策を見いだしていく立場から日本政府と相談する」と述べているだけで、それぞれについて米政府は保障措置を確保することを約束しておらず、台湾当局から保障措置の確保を得たとも述べていない。すなわち、NPTの定める保障措置は満たされておらず、むしろ米国政府は台湾の核施設の保障措置確保に関しては責任を負わないことを表現した文言と受け止めるべきであると考えるが、政府の見解はいかがか。
3 一九九五年七月三十日付けの朝日新聞は、台湾の李登輝総統の国民会議大会における「台湾が過去、核兵器開発を検討したことがあり、今後核兵器の開発を検討する」との発言を伝えている。これは、NPT三条およびロンドンガイドライン・パート2第4(e)受領国政府の行動、発言及び政策が核不拡散を支持しているかどうか、(f)受領者が、秘密の又は違法な調達活動に従事したことがあるかどうか、という項目および第5(a)移転の用途、最終需要場所を記した最終需要者の宣言、(b)いかなる核爆発活動又は非保障措置核燃料サイクルにも使用されないことを明示的に述べた保証という項目に照らしたとき、明らかに規定に違反しており、したがって台湾は原発機材を輸出してはならない相手先とみなすべきと考えるが、政府の見解はいかがか。
四 二国間原子力協定締結の必要性について
1 かつて三菱重工が中国に対して圧力容器を輸出しようとした際、間接的に核物質生産につながるとして、政府は一九八五年に日中原子力協定を締結し、同協定により、生産された核物質は核爆発装置の開発・製造に使用しないこと、また、専門家の交換、情報交換、役務の提供について取り決めた。
原子力発電施設の国際的移転に関しては、軍事的目的への転用禁止だけでなく、事故発生後の被害の規模、国際的影響への対処などを考慮して、安全性確保のための専門家の派遣、情報提供、要員の研修、部品器材の迅速な供給など供給国、受入れ国双方が負うべき責任と義務およびその範囲を両国政府間で定めることが必要である。
日本政府は、インド、パキスタン両国が核実験を行ったことに対し、両国の行為がNPTに違反するものであることを理由のひとつに抗議した。しからば日本は、原発輸出に当たっても自らがより厳格にNPTが定める条項を遵守することが求められる。本案件は、台湾の意向次第では今後、日本のNPT履行の意思と中国との関係をはじめとした国際的信頼に係わる問題になりかねない事案である。
しかるに外務省からは「包括的、長期的な取り決めについては二国間原子力協定が必要であるが、一時的でかつ法的義務を負わない本件については必要ではない。合意成立後外務委員会に報告すればよいと考える」との説明があった。政府は台湾への原子力設備の輸出に当たっての政府間協定および国会の承認の必要性をいかに考えるか。
五 原子力発電施設の輸出許可について
以上の事実に立つかぎり台湾に対する原子力設備の輸出は許可できないと思われるが政府の見解を示されたい。
右質問する。
別添資料
台北県対核四環境影響評估的審査報告 39頁
(1991年8月、台北県政府編集)
台北県第四原発環境影響評価審査報告P.39
(1991年8月、台北県政府編集)
<和訳>
(1)原子力発電所の設計は原子炉の安全確保、放射性物質の漏洩防止という従来型発電機にはない点を配慮しなければならず、いっそう複雑化しているし、運転要員が掌握できる能力を超えるほどになっている。
(2)運転要員の訓練および管理体制が欠けている。原子力発電所の運転・補修、廃棄物処理はすべて専門的技術を必要とする。台湾は十数年の運転経験をもっているが、まだ原子力発電所の管理・運転の技術的基礎を確立していない。重大な事故が発生すれば、そのつど外国の専門家の来訪を依頼して修理する以外にない状態にある。他方、重大事故の発生要因は運転要員の操作ミスによる場合が多く、はなはだしい場合は居眠りによる。これは原子力発電所の管理体制がハード部分はあるがソフトの面がないという状況にあることを示すものだ。
(3)以上二点を総合すると、第一、第二、第三原発の運転失敗例を省みたとき、第一、第二原発の運転経験が第三原発のシステム設計に十分反映されているかどうか疑わしい。まして第一、第二、第三原発の運転経験を第四原発の運転に反映させることが果たしてできるだろうか。したがって、以下のような結論に至った。原子力発電所は安全性確保のために、放射能汚染の多重防御のうえで、ハイテク技術を駆使した能力の活用という目的を実現するためにきわめて複雑なシステムをつくった。しかし、その複雑さが事故多発の根元にもなっている。そのような原発を台湾に建設することは、外国への技術依存と官僚管理体制の無能さを露呈することになるばかりか、果たして原子力発電所が台湾にとって適切な発電システムなのか、また地球全体に適合する技術であるのかという新たな問題をも提起する。
政府答弁書
一の1について
政府は、株式会社日立製作所及び株式会社東芝が原子力設備を、三菱重工業株式会社が発電機を輸出する予定であると承知している。
一の2について
現在のところ、台湾向けの原子力設備に関する外国為替及び外国貿易法(昭和二十四年法律第二百二十八号)第四十八条に基づく輸出許可申請はない。
二について
一般論としては、輸出相手先がその責任において原子力発電の導入を決定した場合、我が国としては、その要請に応じて、より安全な原子力発電が行われるよう、高品質の原子力設備の輸出を行うとともに、我が国の優れた運転管理技術等を併せて提供していくことが、輸出相手先の原子力に関する安全性の向上に資すると考えている。
なお、我が国からの原子力設備の輸出に当たっては、核不拡散のために採るべき措置についての指針であるロンドン・ガイドライン・パート1も踏まえ、外国為替及び外国貿易法に基づき輸出管理を厳格に行っている。具体的には、当該原子力設備の非爆発目的利用の確保及び第三国への再移転等の規制並びに輸出相手先における適切な防護措置の適用及び国際原子力機関による保障措置の適用を確認した上で、個別に審査を行っている。
三の1について
核兵器の不拡散に関する条約(昭和五十一年条約第六号。以下「核兵器不拡散条約」という。)第三条2は、核兵器不拡散条約の各締約国が特殊核分裂性物質の使用等のために特に設計され又は作成された設備等を非核兵器国に供給するに当たっては、当該特殊核分裂性物質に保障措置が適用されることを条件としている。三の2の(1)についてで述べるとおり、台湾当局が管理する地域にあるすべての核物質(特殊核分裂性物質を含む。)は、国際原子力機関による保障措置の適用を受けるので、我が国の事業者が予定している台湾電力龍門原子力発電所向けの原子力設備(以下「本件原子力設備」という。)の台湾への輸出は、核兵器不拡散条約に違反するものではない。
三の2の(1)について
千九百九十八年(平成十年)一月二十六日にアメリカ合衆国国務省から在アメリカ合衆国日本国大使館に発出された口上書(以下「米国口上書」という。)は、四についてで述べるとおり、政府とアメリカ合衆国政府(以下「米国政府」という。)との間の協議を踏まえ、米国政府が台湾当局が管理する地域にあるすべての核物質に対する国際原子力機関による保障措置の適用を確保する等の意図を政府に対して公式に表明したものである。右意図表明に際しては、当該保障措置等は米国政府が台湾当局から得ている保証に基づくものであるとの説明を米国政府から受けている。
以上のとおりであり、核兵器不拡散条約第三条2との関係で問題が生ずるとは考えていない。
三の2の(2)について
米国口上書の(2)においては、台湾当局が管理する地域にあるすべての核物質に対して国際原子力機関による保障措置が適用されるということを確認した上で、万が一、何らかの理由により本件原子力設備に対して国際原子力機関による保障措置が適用されない場合に、米国政府が政府と協議を行い、同保障措置に代替する保障措置が本件原子力設備に対して適用されるようにすることとしているものである。
米国口上書の(4)においては、本件原子力設備等が台湾当局が管理する地域以外へ移転又は再移転される場合、ロンドン・ガイドライン・パート1に従って、本件原子力設備等の移転先又は再移転先から所要の保証が得られる場合に限り、米国政府は台湾に対して本件原子力設備等の移転又は再移転を許可することとした上で、本件原子力設備等の移転又は再移転に関し、何らかの問題がある場合に備え、政府の要請に応じて米国政府が政府と協議を行い、相互に受け入れることのできる解決を図ることとしているものである。
したがって、御指摘の米国口上書の文言は、米国政府が台湾の核施設の保障措置確保に関して責任を負わないことを表現したものではない。
三の3について
御指摘の千九百九十五年(平成七年)七月二十八日に行われた台湾の李登輝氏の発言については、同氏自身が同日の発言は誤解を招いたとして、台湾は絶対に核兵器を製造しないことを宣言する旨同年八月三日に述べたと承知している。
なお、本件原子力設備の台湾への移転が核兵器不拡散条約に違反するものではないことは、三の1についてで述べたとおりである。また、御指摘のロンドン・ガイドライン・パート2は、原子力汎用品等の移転に際して採るべき措置の指針を示すものであるが、本件原子力設備の中には、同ガイドラインによって規制されるべき原子力汎用品等は含まれておらず、同ガイドラインの適用の問題は生じない。
四について
本件原子力設備の我が国から台湾への移転に関しては、我が国と台湾との関係が非政府間の実務関係であること、本件原子力設備を輸出する我が国の事業者がアメリカ合衆国の事業者の下請であり、本件原子力設備がアメリカ合衆国と台湾との関係においては、アメリカ合衆国から輸出されたものとして取り扱われること、米国政府が核不拡散に厳格な立場をとっていること等を考慮しつつ、米国政府を通じて台湾当局が管理する地域にあるすべての核物質に対する国際原子力機関による保障措置の適用を確保すること等で問題ないと判断した。政府と米国政府との間で協議を行った結果、台湾当局が管理する地域にあるすべての核物質に対する国際原子力機関による保障措置の適用の確保等を米国政府が行うことについて意見が一致し、政府に対し、米国政府からこの点についての同政府の意図を公式に表明する米国口上書が発出されたものである。右意図表明に際しては、当該保障措置等は米国政府が台湾当局から得ている保証に基づくものであるとの説明を米国政府から受けている。
米国口上書は、前記のとおり米国政府が台湾当局が管理する地域にあるすべての核物質に対する国際原子力機関による保障措置の適用を確保する等の意図を政府に対して公式に表明したものであり、国会の承認を要する国際約束に該当しない。
五について
我が国からの原子力設備の輸出に当たっては、核不拡散のために採るべき措置についての指針であるロンドン・ガイドライン・パート1も踏まえ、外国為替及び外国貿易法に基づき輸出管理を厳格に行っている。具体的には、当該原子力設備の非爆発目的利用の確保及び第三国への再移転等の規制並びに輸出相手先における適切な防護措置の適用及び国際原子力機関による保障措置の適用を確認した上で、個別に審査を行っている。
似た質問主意書
件名と質問本文の冒頭の意味が近いものを、前もって計算しておいた表から近い順に8件並べました(multilingual-e5-large)。同じ言葉を使っていなくても出ます。論点が少しずれていることもあります。