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犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案に関する質問主意書
衆議院 第165回 第173号
質問本文
近年における犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化の状況にかんがみ、国際的な組織犯罪の防止対策は緊急を要するものとなっている。しかしながら、第百六十三回国会に政府から提出された、犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案は、提案理由となっている国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(TOC条約)及びサイバー犯罪に関する条約の国内法制化の為のものであると説明されているが、我が国の国内法の基本原則を逸脱し、国民の自由、権利を著しく狭め、侵害する懸念があるものである。よって当該条約の締結を名目とした国内立法化については慎重を期する必要があるものと考えられる。
従って、次の事項について質問する。
1 アメリカの留保について
アメリカ合衆国は,州法では極めて限定された共謀罪しか定めていない場合があることを国務省の大統領宛批准提案書の中で指摘し、国連越境組織犯罪防止条約によって州レベルでの立法の必要がないようにするため,留保を行った上で条約を批准している。また、アラスカ、オハイオ、バーモントなどの州レベルでは広範な共謀罪処罰は実現していないと承知している。
(1) 共謀罪について、例えば、小職の質問主意書(平成十七年十月三十一日提出及び平成十八年六月二日提出)の政府答弁書(平成十七年十一月十一日付及び平成十八年六月十三日付)では、「共謀罪の対象犯罪について更に限定することは、条約上できない」と答弁しているが、米国の例をみると、その答弁は虚偽ではないか。
(2) アメリカが前記の留保を行っていることに対し、我が国は異議申し立てをしているか。また、
�@申し立てているとすれば、いつ、どのような異議を申し立て、その異議について国連(多国間)との関係及びアメリカ(二国間)との関係でどう決着が図られたのか。
�A申し立てていないとすると、なぜ申し立てていないのか。
(3) アメリカ合衆国五〇州のそれぞれについて、どのような共謀罪があるのか。
2 その他の共謀罪制定国について
日本弁護士連合会の調査によれば、「組織犯罪の関与する重大犯罪の全てについて共謀罪の対象としていないことを認め、国連事務総長に通知している国」が五ヶ国(ブラジル,モロッコ,エルサルバドル,アンゴラ,メキシコ)存在する。これらの国々について、共謀罪の制定状況はどのようになっているのか。
3 国連における条約審議の経緯等について
国連における条約審議の際、日本政府の見解として「行為参加罪の第三オプション」を提案していたにもかかわらず、その後「共謀罪オプション」に転換された経緯を明らかにするための記録(公電等)を示すことを政府は拒否し続けている。
(1) 第二回アドホック委員会で日本政府の提案していた「参加して行為するオプション」では、どのような内容の国内法が必要となると考えていたのか、日本政府内で検討されていたはずである。この提案当時に検討された「参加罪の規定」を示されたい。
(2) 国連越境組織犯罪防止条約第三十四条第一項に規定する「自国の国内法の基本原則」に関し、政府が第二回アドホック委員会に提出した提案では「日本の国内法の原則では、犯罪は既遂か未遂段階に至って初めて処罰されるのであり、共謀や参加については、特に重大な犯罪に限定して処罰される。」と説明しているのに、政府の国会答弁(平成十七年十月二十一日南野法務大臣)では「『自国の国内法の基本原則』とは、各国の憲法上の原則など国内法制において容易に変更できない根本的な法的原則を指す」としている。この政府答弁が政府提案時と変わってきた理由及び経緯を示されたい。
右質問する。
政府答弁書
1の(1)及び(2)について
米国は、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(以下「条約」という。)の締結に際し、連邦制度という自国の基本原則に合致するような方法で条約上の義務を負う権利を留保していると承知している。この点に関して我が国政府が照会したところ、米国政府から、条約で犯罪化が求められている行為について、連邦法によっても州法によっても犯罪とされていない部分はほとんどないという回答を得ている。このようなことから、我が国政府としては、当該留保が条約の趣旨及び目的と両立しないものであるとは考えていない。なお、我が国は条約の締約国ではないことから、そもそも条約の締約国が付する留保に対して異議の申立てを行い得る立場にはない。
他方、我が国において、犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案による改正後の組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成十一年法律第百三十六号)第六条の二の罪(以下「組織的な犯罪の共謀罪」という。)の対象犯罪について更に限定することは、条約第二条、第五条等の諸規定に照らし、条約の趣旨及び目的と両立しないものであると考えている。したがって、先の答弁書(平成十七年十一月十一日内閣衆質一六三第六七号)1の(5)の�Dについて及び先の答弁書(平成十八年六月十三日内閣衆質一六四第三〇〇号)2についてで述べたことは、米国の例を踏まえた上でも適切なものであると考えている。
1の(3)について
米国政府によれば、圧倒的多数の州では、州刑法上のすべての犯罪又は少なくともすべての重罪を対象とする一般的な共謀罪の規定が設けられているとのことである。
2について
我が国政府より照会したところ、ブラジル、モロッコ、エルサルバドル及びメキシコの各国政府によれば、各国内において条約第五条1(a)に規定されている行為は犯罪とされているとのことである。また、アンゴラは、条約の署名国であり、まだ締約国とはなっていないと承知している。
なお、日本弁護士連合会が作成した本年九月十四日付けの共謀罪新設に関する意見書には、国際連合薬物犯罪事務所が作成した文書によるとブラジル、モロッコ、エルサルバドル、アンゴラ及びメキシコの五箇国は、組織的な犯罪集団の関与するすべての重大犯罪を共謀罪の適用対象とはしていないことを自認している旨の記載があるが、当該文書を作成した国際連合薬物犯罪事務所によれば、同文書は古い情報に基づくものであり、その後同事務所が作成した文書では、これら五箇国のいずれについても条約第五条の実施に当たって何らかの問題があるとは記載されていないとのことである。
3の(1)について
御指摘の「参加して行為するオプション」は、我が国が新たな選択肢として提案した「重大な犯罪を行う目的を有する組織的な犯罪集団の活動に、自己の参加が当該犯罪の達成に寄与することを知りつつ、参加すること。」を指すものと考えられるところ、政府としては、当時、条約の交渉の過程であったことから、これに対応する国内法整備の具体的な内容についての検討までは行わなかったものである。
3の(2)について
御指摘の提案をした時点における条約の案文においては、いわゆる共謀罪について、対象となる「重大な犯罪」の範囲がいまだ定まっておらず、「組織的な犯罪集団が関与するもの」という要件を付することも認められていなかった。他方、我が国の刑事法においては、一定の犯罪については実行の着手前の共謀や予備行為等を処罰することとされているものの、すべての犯罪の共謀を一般的に処罰することとはされていない。そこで、我が国は、その時点における条約の案文において犯罪とすることが義務付けられている行為を犯罪とすることは我が国の法的原則と相容れないことを説明した上で、当該共謀罪について、「組織的な犯罪集団が関与するもの」との要件を加えるべきこと等を提案したものである。
また、御指摘の法務大臣の答弁は、条約第三十四条1にいう「自国の国内法の基本原則」とは、各国の憲法上の原則等、国内法制において容易に変更することのできない根本的な法的原則を指すものと解されていることを述べた上で、組織的な犯罪の共謀罪は、すべての犯罪の共謀を一般的に処罰するものではなく、重大な犯罪に当たる行為で、団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるもの等の遂行を共謀した場合に限って処罰の対象としており、我が国の国内法の基本原則に反するものではないとの趣旨をお答えしたものである。
したがって、前記答弁が条約の交渉の過程における我が国の提案から変わったとの御指摘は当たらないものと考えている。
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