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社会保険制度に関する質問主意書
衆議院 第174回 第564号お答えすることは困難 ×1
質問本文
現下の社会経済情勢に鑑み、社会保険(健康保険、厚生年金保険)制度を適切に運用する必要性はますます高まっている。また、雇用を巡る環境が急速に変化しつつある中で、労働・社会保険・年金などの専門家である社会保険労務士制度の充実が望まれている。そこで、以下の点につき、質問する。
一 司法制度改革の過程で、裁判外紛争解決手続における隣接法律専門職の活用の一環として、社会保険労務士にも、当事者の代理人として和解交渉及び和解契約の締結を行う権利が認められた。
1 現在の制度では、当該代理権を行使できる「特定社会保険労務士」となるには、六十三.五時間の特別研修を修了した後、厚生労働省が行う紛争解決手続代理業務試験に合格しなくてはならない。現下の労働環境を鑑み、個別労働関係紛争の解決と国民に身近な司法を実現するためにも、「特定社会保険労務士」の人員数を増加させることは一考に値する。そもそも、通常の試験制度を見直すことによって、新たに社会保険労務士になる者すべてに対し、裁判外紛争解決手続における代理権を付与することはできないか。見解と展望をうかがいたい。
2 業務の範囲としても、個別労働関係紛争を適切に解決するには、和解交渉及び和解契約の締結の代理権だけでは不十分である。個別労働関係紛争における簡易裁判所での訴訟代理権、地方裁判所以上の審級における出廷陳述権、労働審判における代理権にまで、業務の範囲を拡大することは検討されているか。裁判外紛争解決手続における特定社会保険労務士の活動状況を踏まえた上で検討する、とうかがっているが、特定社会保険労務士制度が導入されてから現在までの活動の状況をどのように評価しているのかを明示した上で、業務範囲の拡大についての具体的な見解をお示し頂きたい。
3 個別労働関係紛争を扱う厚生労働大臣指定の裁判外紛争解決機関での紛争目的総額は六十万円までに制限されており、六十万円を超える事件は、弁護士の共同受任が必要とされている。六十万円で制限をしている根拠と、この限度額撤廃の見込みをうかがいたい。
二 現在、弁護士を除く士業での法人の設立形態としては、二人以上の社員による「共同法人」しか認められていない。共同法人化することで、業務の継続性が図られる、依頼人の利益が保護される、という利点がある。一方で、無限連帯責任制度など負担も重く、平成二十一年十二月末における社会保険労務士法人は三百九十五法人と、法人化が進んでいない様子が見受けられる。法人化することによって事務所資産と個人資産の分離が明確になる、社会的な信用力が向上して資金調達しやすくなる、紛争当事者にとってもアクセスしやすくなる、といった点から法人化を進める必要があると考えるが、阻害要因ともなっている設立要件あるいは無限責任制度を緩和する用意はないか。共同法人と一人法人、あるいは無限責任制度と有限責任制度の比較考量が必要だと考えるが、各々について政府の見解を示した上で、今後の法人制度の在り方に対する認識や、制度改変の見込みをうかがいたい。
三 社会保険の適用において、法人の場合は従業員が常時一人でもいれば、いわば強制適用事業所となり、法律上は加入義務が生じる。しかしながら、加入手続きを行っていない法人が少なからず存在するのが現状である。
1 本来、加入義務があるにもかかわらず、加入手続きを行っていない法人の数および割合をお示し頂きたい。
2 加入手続きを行っていない未適用法人に対し、行政はどのような対応をしているのか。
3 社会保険への加入率を向上させるため、政府はいかなる方法を検討しているか。例えば、社会保険制度を行政機関等の入札条件にする、というような対応は可能か。
四 景気の低迷により業績が悪化したため、社会保険料の事業主負担分を支払うことができず、滞納している企業が増加している。
1 保険料を滞納している企業に対して、約束手形を振り出させる、銀行口座を差し押さえる、というような大変厳しい保険料の徴収がなされていると認識しているが、こういった企業に対して実際どのような対応をしているのか、お示し頂きたい。
2 三で指摘した通り、社会保険の加入については義務を免れている企業が多数存在している。その反面、一旦加入すると保険料の徴収が非常に厳しいという実態が浮き彫りになった。このような厳しい対応では、社会保険料を支払うことができず倒産する企業が増加することも懸念されるが、柔軟な対応は検討できないか。
右質問する。
政府答弁書
一の1について
御指摘のような見直しについては、紛争解決手続代理業務試験の受験者数及び社会保険労務士全体に占める特定社会保険労務士の割合の推移等を含む制度の運用状況を見守りつつ、紛争解決手続代理業務に対するニーズ及び他の国家資格に係る試験制度との均衡も踏まえて検討する必要があると考えている。
一の2について
お尋ねについては、現在全国社会保険労務士会連合会が行っている実績調査の結果も踏まえ、業務の範囲の拡大を認める必要性及び依頼者の利便性の向上への寄与の度合い並びに当該業務を的確に行うための専門能力の確保及びその認定の在り方について検討する必要があると考えている。
一の3について
御指摘の制限については、「今後の司法制度改革の推進について」(平成十六年十一月二十六日司法制度改革推進本部決定)において、複雑困難ではない事件のうちでも特に簡易で迅速な手続を適用して紛争解決を図る観点から設けられた民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第三百六十八条の少額訴訟と同様の水準とされたものであり、現時点で撤廃することは考えていない。
二について
御指摘の「一人法人」については、現行の制度と比べて、社会保険労務士の死亡時や廃業時における顧客への継続的な対応に問題が生じること等のデメリットがあるとの指摘がある一方で、事務所の資産と社会保険労務士個人の資産との分離が図られ、社会保険労務士が業務を廃業等する場合に他の社会保険労務士への業務の引継ぎが容易になるとも考えられること等のメリットがあるとの見解もあると承知している。
また、御指摘の「有限責任制度」については、現行の制度と比べて、顧客保護の観点から問題であるとの指摘がある一方で、職業賠償責任保険への加入等の顧客保護に資する措置を講ずることにより弊害を取り除くことが可能であるとの見解もあると承知している。
お尋ねの提案については、国民の利便性の向上を図る観点から、国民のニーズや社会保険労務士の業務の実態等を踏まえつつ、メリットとデメリットの双方を十分に勘案しつつ検討を進める必要があると考えている。
三の1について
適用事業所(健康保険法(大正十一年法律第七十号)第三条第三項各号に掲げる事業所及び厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第六条第一項各号に掲げる事業所若しくは事務所又は船舶をいう。)となったにもかかわらず健康保険法第四十八条又は厚生年金保険法第二十七条に規定する被保険者の資格の取得の届出がされていない事業所(以下「未適用事業所」という。)の数は、厚生労働省として把握している限りでは、平成二十一年三月末現在で十万三千二百四十七である。全事業所に占める未適用事業所の割合については、全事業所の数が日々変動していることから、お答えすることは困難である。
三の2について
未適用事業所については、まず、民間事業者に委託して加入勧奨を行った後、自主的に届出をしないものに対して、旧社会保険庁及び日本年金機構の職員による重点的加入指導を実施しているところである。それでもなお届出をしないものに対しては、健康保険法第三十九条第二項及び厚生年金保険法第十八条第二項の規定により職権で被保険者の資格の取得を確認してきているところである。このような対策により、平成二十年度には三千三百八十一事業所について被保険者の資格を確認したところである。
三の3について
お尋ねについては、厚生労働省年金局及び日本年金機構が行う一般競争入札において、既に直近二年間に厚生年金保険料の未納がないことをその参加資格としているところである。
四の1について
保険料を滞納している事業主に対しては、制度の公平性と信頼性を確保する観点から、電話、文書又は臨場による納付督励を実施した後、国税通則法(昭和三十七年法律第六十六号)第五十五条の規定に基づく納付委託も活用するとともに、納付について誠実な意思を有するとは認められない者、納付督励に応じない者等に対しては、国税滞納処分の例による差押えも行っているところである。
四の2について
換価又は差押えによりその事業の継続が困難となるおそれがある滞納者については、健康保険法第百八十三条及び厚生年金保険法第八十九条の規定によりその例によるとされる国税徴収法(昭和三十四年法律第百四十七号)に基づき、換価の猶予と併せて保険料の分割納付も認めているところである。
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