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沖縄戦についての記述の復活と教科書検定意見の撤回等に関する質問主意書
衆議院 第189回 第262号趣旨が明らかではない ×1
質問本文
二〇〇六年度の高校日本史歴史教科書の検定において、沖縄戦での「日本軍による集団強制自決」の記述を政府が一方的に削除したため、二〇〇七年九月二十九日、沖縄県民は十一万六千人余を超える県民大会を開催し、「日本軍による強制の記述の復活と検定意見の撤回」を求めた。しかしながら、政府は県民の要求に真摯に応えようとせず、その後も教科書の記述を恣意的に捻じ曲げてきた。このような行為は沖縄戦の実相を歪曲するものであり、将来を担う子供達に誤った歴史観を植え付けることに他ならない。県民は強い憤りを覚えるとともに、危機感を感じている。
そこで、お尋ねする。
一 文部科学省は、これまで、各教科書に修正を義務付ける「検定意見書」は、文部科学省の教科書調査官が作成する「調査意見書」を踏まえて、教科書検定審議会が独立して検討するとしていた。実際には調査官の作成した「調査意見書」の約九割がそのまま教科書検定審議会の検定意見となっているとの調査結果が公表されている。これは事実か。事実であるならば、政府はこれまでの説明を改めるとともに、制度の趣旨のとおりに教科書検定審議会が独立して「検定意見書」を検討できるように措置すべきではないか。
二 文部科学省は、これまで調査官が作成する「調査意見書」の公表を拒んできた。二〇〇六年度の教科書検定問題に関して生じた復活・撤回要求の民意に押される形ではあるが、公開に踏み切ったことは、教科書検定制度の透明性を高める点で評価されるものである。以後、現在に至るまで「調査意見書」は公開されてきている。よって、政府はこの際、今後も公開を続けるという姿勢を堅持することを明言するべきではないか。
三 政府は、日本軍の軍命があったとする体験者の証言を一顧だにしない。むしろ諸説や学説が多数あるとして、実体験を蔽い隠そうとしている。負の歴史を直視し、その反省に立って今後のあり方を考えることが今我々に求められているのでないか。沖縄戦の体験者が高齢化し、語り部として正確に伝承できる今こそ、その証言を政府が取りまとめ、それを歴史の真実として後世にきちんと伝えていくべきではないか。
四 政府は、教科書検定審議会が二〇〇六年度の高校日本史教科書の検定で「日本軍による強制」の記述を削除・修正するよう求めた際、大江・岩波裁判が訴訟中であることを教科書検定意見の根拠の一つとして挙げていた。同裁判が原告の訴えを退けるや否や、一転して今度は民間の裁判なので何も答えられないとの態度に転換している。これは訴訟にはいろんな意見があるということで根拠に挙げておきながら、自分に都合の悪い司法判断は尊重しないということになる。まさに都合の良いものは根拠にするが、都合の悪いものは一切認めないというご都合主義ではないか。
五 政府は、検定は終わったことだから「日本軍による強制」の記述の回復と検定意見の撤回はあり得ないとしている。はたしてそうだろうか。今後も小中高校の歴史教科書の検定制度が存続した場合、これまでと同様に検定が定期的に行われると思われること、教科書の画一化が進んでいること、我が国の歴史や文化に対する美辞麗句の表現が教科書で踊っていることを考え憂えるならば、むしろ今こそ誤りを認めて速やかに訂正し、子供たちに沖縄戦の実相を正しく伝えるべきではないか。そうすれば再び悲惨な戦争を起こすこともないだろうし、家族や肉親が殺しあうという悲劇を繰り返さないことに繋がるのではないか。
六 政府は、小中高校の全ての歴史教科書において、沖縄戦での「日本軍による集団強制自決」の記述の復活を認めるとともに、二〇〇六年度の教科書検定意見を撤回するべきではないか。また、今後、沖縄戦の実相を歴史教科書や副教材等で記述する場合には、沖縄戦の体験者の証言を基に記述すべきではないか。
七 政府は、「日本軍による強制」の記述を削除・修正させた教科書検定意見の撤回要求に対して、当時の文部科学省の担当審議官が「検定関連規則は、検定意見に誤りがある場合を想定して策定していない。だから、仮に検定意見が明らかに誤りであると判明しても、文部科学省の責任で誤りのある検定意見を撤回させるとともに、記述を復活させる手順は規則に定められていない。したがって、官僚としては対応できない」と、極めて率直に回答している。このことは当時の新聞報道でも報道されており、周知の事実となっている。
また、一九九〇年代に、当時の文部省の教科書課長が執筆者に対し、検定意見の誤りを認めて謝罪の文書を送った事例も明らかになっている。
それにもかかわらず、現在に至っても検定関連規則の不備は是正されず、教科書検定制度の公正・公平は一向に保たれていない。その主な原因は、検定基準や検定関連規則が文部科学省内での官僚による密室のやり取りと大臣による独善的な決裁によることにある。いわば身内で制定や運用、改廃を繰り返し、権限を行使しているからだといっても過言ではないと考えるがどうか。
また、この際、政府は、教科書検定制度の透明性や公正、公平を高めるため、検定基準や検定関連規則等の諸規定を国会で審議、検討、制定、改廃できるよう制度を見直す考えはないか。
八 二〇一六年度中学歴史教科書として採択された株式会社自由社作成の「新版新しい歴史教科書」の中の「八三 終戦をめぐる外交と日本の敗戦」の「沖縄戦の記述」では、注記も含めて極めて簡潔で、かつ、沖縄戦の特色である「日本軍による住民被害」に言及していないが、このようなことは、二〇〇七年の教科書検定意見の撤回を求められた際の政府答弁に反していないか。また、「近隣諸国条項」では、他の国の心情に配慮を求めながら、同じ国民である沖縄県民に対しては、そうした配慮を求めていないと思われるが、そうであれば、沖縄軽視とならないか。
以上のことを踏まえて、歴史教科書に沖縄戦の体験者の証言を基にした、「沖縄戦条項」を新たに設ける考えはないか。
右質問する。
政府答弁書
一について
調査意見は、文部科学省の教科書調査官が作成し、教科用図書(以下「教科書」という。)の検定審査のために申請された図書(以下「申請図書」という。)に係る専門的な調査審議のために教科用図書検定調査審議会(以下「審議会」という。)に提出されるものであり、検定意見のうち、その内容が調査意見と同一であったものの割合は、調査意見を記載した調査意見書を初めて公表した平成二十一年度検定分については、八十八・九パーセントであり、その後、平成二十二年度検定分から平成二十六年度検定分までについては、八十四・〇パーセントから九十・一パーセントの範囲で推移している。
審議会においては、調査意見を踏まえて、検定の時点における客観的な学問的成果や適切な資料等に照らして審議を行っているところであり、調査意見のとおりの検定意見とするかどうかを含め、どのような検定意見を付すのかについては、審議会の判断に委ねられている。
二について
国民の教科書に対する関心は高いことから、これに応え、教科書への信頼を確保するとともに教科書検定への一層の理解を得るため、文部科学省としては、平成二年度検定分から申請図書等の検定関係資料の公開を行っているところであり、それに加え、平成二十一年度検定分からは調査意見書を新たに公開することとしたところであり、今後も調査意見書を含む検定関係資料の公開を継続する考えである。
三について
沖縄県及び同県内の市町村において、沖縄戦の体験者から証言を聞き取り、次世代に継承する取組が実施されており、悲惨な沖縄戦の実相及び教訓を継承することの重要性に鑑み、政府としてもそのような取組に対して引き続き協力してまいりたい。
四について
御指摘の検定意見は、沖縄における集団自決について、集団自決された沖縄の住民の全てに対して、自決の軍命令が下されたか否かを断定できない中で、全ての集団自決が軍の命令で行われたと誤解されるおそれがあるとの趣旨で、審議会の審議に基づき付されたものであり、訴訟が提起されていることを直接の根拠とするものではないことから、御指摘は当たらないものと考える。
五及び六について
御指摘の検定意見は、その当時の審議会の専門的な審議の結果によるものであり、当該検定意見を撤回することは考えていない。
また、沖縄の集団自決に関する記述の検定に当たっては「平成十八年度検定決定高等学校日本史教科書の訂正申請に関する意見に係る調査審議について(報告)」(平成十九年十二月二十五日教科用図書検定調査審議会第二部会日本史小委員会)において示された「集団自決は、太平洋戦争末期の沖縄において、住民が戦闘に巻き込まれるという異常な状況の中で起こったものであり、その背景には、当時の教育・訓練や感情の植え付けなど複雑なものがある。また、集団自決が起こった状況を作り出した要因にも様々なものがあると考えられる。十八年度検定で許容された記述に示される、軍による手榴弾の配布や壕からの追い出しなど、軍の関与はその主要なものととらえることができる。一方、それぞれの集団自決が、住民に対する直接的な軍の命令により行われたことを示す根拠は、現時点では確認できていない。他方で、住民の側から見れば、当時の様々な背景・要因によって自決せざるを得ないような状況に追い込まれたとも考えられる。したがって、集団自決が起こった背景・要因について、過度に単純化した表現で教科書に記述することは、集団自決について生徒の理解が十分とならないおそれがある。」という「基本的とらえ方」に基づいて検定を行っているところである。
なお、教科書において、学習指導要領を踏まえどのように記述するかについては、欠陥のない範囲において、申請図書の発行者等の判断に委ねられている。さらに、教科書以外の図書等において、どのように記述するかについては、当該図書等の発行者等が判断するものである。
七について
教科用図書検定規則(平成元年文部省令第二十号)第九条第一項において、検定意見の通知を受けた者は、検定意見に対する意見申立書を文部科学大臣に提出することができることとされており、さらに、同条第二項において、文部科学大臣は、申し立てられた意見を相当と認めるときは、当該検定意見を取り消すものとするとされている。
また、検定済図書については、同規則第十四条第一項において、誤記、誤植、脱字若しくは誤った事実の記載又は客観的事情の変更に伴い明白に誤りとなった事実の記載があることを発見したときは、発行者は、文部科学大臣の承認を受け、必要な訂正を行わなければならないとされており、同条第二項においては、同条第一項に規定する記載を除くほか、学習を進める上に支障となる記載、更新を行うことが適切な事実の記載若しくは統計資料の記載又は変更を行うことが適切な体裁があることを発見したときは、発行者は、文部科学大臣の承認を受け、必要な訂正を行うことができるとされている。これらの規定により、教科書の記述内容の適正化を図るための仕組みが整備されている。
さらに、教科用図書検定基準の見直しや同規則の改正に際しては、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第三十九条の規定に基づき意見公募手続を実施しており、「いわば身内で制定や運用、改廃を繰り返し、権限を行使している」との御指摘は当たらないことから、御指摘のような制度の見直しは考えていない。
八について
御指摘の「政府答弁」が具体的に何を指すのか必ずしも明らかではないが、教科書の検定は、申請図書の具体的な記述について、教科用図書検定基準等に従い、審議会の調査審議に基づいて、検定の時点における客観的な学問的成果、適切な資料等に照らして記述の欠陥を指摘することを基本として実施しているものであり、学習指導要領を踏まえどのように記述するかについては、欠陥のない範囲において、申請図書の発行者等の判断に委ねられている。平成十八年度検定及び平成二十六年度検定もこうした考え方に基づいて実施されているところである。
いわゆる「近隣諸国条項」と言われる規定については、教科書において、近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がされていることを求める観点から、特に教科用図書検定基準に加えられたものであることを踏まえれば、御指摘のような「沖縄戦条項」を教科用図書検定基準に新たに設ける必要があるとは考えておらず、そのことをもって御指摘の「沖縄軽視」に当たるとは考えていない。
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