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富士山頂払下げに関する質問主意書

衆議院 第19回 第3号

提出者
衆議院
提出日
1954年1月19日
内閣転送 1954年1月20日
答弁書受領日
1954年1月26日
提出から7日
答弁の項目数
0
質問 1,067字/答弁 772字

質問本文

衆議院議長 堤 康次※(注) 殿

富士山頂払下げに関する質問主意書

第一点

イ 政府が、宗教法人である富士本宮浅間神社に対し富士山頂八合目以上の国有地を無償にて譲与するがごときは憲法第八十九条に該当し、憲法違反行為であることは説明を必要としないほどあきらかな事実であると確信するが、政府の所見如何。

ロ 富士本宮浅間神社の政府に対する該土地譲与申請の根拠は、昭和二十二年法律第五十三号に基くものであるが、該法律は、わが国占領中連合国の命令により制定せられた沿革をもつ、いわゆるポツダム法律であり、占領政策終了後の現在なお、そのまま形式的には存続しているが、その規定する内容それ自体が前記のごとくその後に効力を生じた憲法第八十九条に違反するがゆえに憲法第九十八条に該当する法律であつて、同条により効力を有しないと確信するが、政府の所見如何。

第二点

イ 富士山が、日本唯一の高山として又その秀麗な雄姿は、古来わが国の象徴として国民はもちろん世界の人々より渇仰せられており、ことに明治以来交通の発達により、まのあたりその威容に接する者がその数を増し、さらに登山の普及により富士山は最もポピユラーな登山の対象となり、世界の名山として全世界に宣伝せられるに至つた。かくして富士山はいにしえより国民のものであるという強い国民感情によつて支配されており、このことは何人も否定し得ない顕著な事実である。すなわち国民の富士山に対する感情は、富士山をもつて典型的なというよりはむしろ唯一無比の、しかも日本国土とともに永遠に変ることのないその象徴とかたく考えている。その意味においてこの国民感情は、絶対性を有するものということが出来る。かかる富士山に対する国民感情は、法律上の利益(民法第七百十一条と同趣旨)として、しかも公益性を有するものと信ずる。この事実は、昭和二十二年勅令第百九十号第二条中「その他公益上(中略)国において特に必要があると認めるものは国有として存置し、前条の規定にかかわらず譲与又は売払をしない」に該当するものと信ずる。従つて富士山本宮浅間神社の富士山八合目以上の土地譲与の申請は却下すべきものと考えるが、政府の法解釈と所見如何。

ロ さらに富士山頂八合目以上は、富士箱根国立公園の核心部であつて特別保護地区(国立公園法第八条の二)として国において直接管理して完全な公共性を維持し(公共福祉用財産)、もつて将来永遠にわたつて広く内外人の一般利用に供することが公益の維持増進上絶対必要であると確信するが、政府の方針如何。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

第一点

(イ) 富士山頂八合目以上の国有境内地の譲与申請及びこれに対する処分は、社寺等に無償で貸し付けてある国有財産の処分に関する法律(昭和二十二年法律第五十三号)の規定に基くものであつて、同法に基く成規の手続によつて行われているものであるから、この問題のみを捕えて違憲行為であるとすることは妥当でない。

(ロ) 同法は、日本国憲法の政教の分離並びに宗教団体に対する公の財産利用の制限の趣旨に則り、社寺等に対する国有境内地の無償貸付関係及び社寺保管林制度の断絶とその善後措置としての国有境内地譲与又は時価の半額売払その他社寺保管林の譲与等を規定したものであつて、むしろ新憲法の精神を活かし、その予定する政教の分離を完全ならしめる措置として制定されたものであるから、日本国憲法の条規に反するものでないと信ずる。

第二点

(イ) 富士山頂八合目以上の国有地が、文化、観光、学術研究、国民感情などの角度から見て、多分の公益性を有するものであることは、否定し得ないところであるが、社寺境内地処分に関する前記法令の適用に当り、同法施行令(昭和二十二年勅令第百九十号)第二条の規定に基き、国有存置の理由となし得る「公益上とくに必要なもの」に該当するかどうかについては、なお検討の余地があると認められるので、目下のところ最終的な処分を留保している次第である。

(ロ) 国立公園法は、同地域内の土地について必ずしも国有主義をとるものではないが、公園行政の立場からすれば、その管理上、国有地であることが望ましいことは当然である。

しかしながら、前記の社寺境内地処分に関する法律の精神と富士山頂の特殊性とにかんがみ、公益留保に当然該当するかどうかについては、なお疑問の余地があるので、前記第二点(イ)に述べたように目下慎重に研究しているところである。

右答弁する。

衆議院の原文

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