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「靖国神社問題」に関する質問主意書

衆議院 第93回 第3号

提出者
衆議院
提出日
1980年9月30日
内閣転送 1980年10月1日
答弁書受領日
1980年10月28日
提出から28日
答弁の項目数
3
質問 1,850字/答弁 1,699字

質問本文

衆議院議長 福田 一 殿

「靖国神社問題」に関する質問主意書

「靖国神社問題」に関して次の事項について質問する。

一 「信教の自由」と「政教分離の原則」を規定した現行憲法第二十条及び第八十九条は、その制定に多大の影響を与えたと思われるアメリカ合衆国憲法修正第一条『連邦議会は、法律により、国教の樹立を規定し、もしくは信教上の自由な行為を禁止することはできない。』との規定よりも、さらに詳細、厳格なものがあり、世界各国憲法にもその比をみないといわれている。

1 何故かかる厳格な規定が設けられたか、その趣意について見解を示されたい。

2 現行憲法の右の規定は、戦前における国家と宗教との関係に対する否定的な歴史的事実がとらえられて、このような厳格な規定がなされたと思われる。この否定的な歴史的事実とは、いかなるものなのか指摘されたい。

3 旧憲法下においては国家と宗教との関係、在り方が、

イ 法的にどのように規定されていたか。

ロ 政治制度上、社会制度上の現実はどのようなものであつたのか。

指摘されたい。

4 また「国家神道」とは何か。旧憲法下においてこれの取扱いはいかがであつたか。何故「国家神道」のみが「国教化」されるまでの特権的地位を与えられたのか。他宗教に対する弾圧の事例をその法的根拠を示して明らかにするなかで、詳細に説明されたい。

5 一九四五年、連合国軍最高指令部が発布した、いわゆる「神道指令」はどのような内容で、それの今日にいたる効力の有無を明らかにされたい。

6 この「神道指令」は、どのような歴史的見地に立つて発布されたと考えられるか。また、「神道指令」の趣旨は憲法第二十条、第八十九条の規定において全面的に体現されていると解釈しても差し支えないか。

7 一九四六年の年頭詔書、いわゆる天皇の「人間宣言」は、この「神道指令」といかなる関連があつたのか、その有無を、それぞれの理由を述べて明示されたい。

8 憲法第二十条第三項に規定された「国及びその機関」とは、具体的にどのようなものをさすのか指摘されたい。また、そのなかには天皇も含まれるのか明らかにされたい。

二 「靖国神社」の成立過程及びその果たしてきた役割等に関して

1 「靖国神社」が創建された当初の趣旨について明らかにし、以降第二次大戦の終戦にいたるまで、「靖国神社」が戦争において果たしてきた役割を具体的に示されたい。

2 第二次大戦の終戦を境にして「靖国神社」のもつ政治的・法的性格は、どのようにして改変したと考えられるか、指摘されたい。

3 戦後、「靖国神社」の名称を改変しなかつた理由について述べられたい。

4 「靖国神社」への公式参拝、国家護持とは、具体的にどのような事実関係をもつて示されるのか、定義されたい。

また、公式参拝、国家護持はなぜ禁止されているのか、法的根拠を明示されたい。

5 「靖国神社」は現行憲法上、宗教団体と解されているのかどうかの見解を、宗教団体である・ないの両説のいずれにおいても、いかなる事実、法的根拠に基づいてなされるのか明示されたい。

6 右の質問との関連において、「靖国神社」が宗教団体であると解した場合、その国家護持を図るためにはどのような措置が必要であると考えるか、見解を示されたい。

その際、例えば「靖国神社」の名称を変更することや宗教性を排除させるなどによつて国家護持が可能とした場合、それは、国が特定の宗教団体に介入することになり、「信教の自由」を犯したことにはならないのか、その見解をあわせて示されたい。

7 「靖国神社」の「国家護持法案」を政府提案することの意向の有無と、いかなる内容であれば、それは憲法違反にならないと考えているのか、具体的事例をあげて見解を示されたい。

三 現在、八月十五日武道館において「全国戦没者追悼式」が行われているが、

1 主催者はどこであり、どのような形式・内容のもとに行われているのか、また、いかなる規定に基づいてこの時天皇は出席しているのか明らかにされたい。

2 これを「靖国神社」で行わないことの事由を憲法との関連で明示されたい。

3 一般的に、死者に対する「世俗的行事」、「宗教的行事」の差異について明示されたい。それを踏まえて、八月十五日武道館における「戦没者追悼式」は右のいずれに該当すると考えられるのかを明らかにされたい。

その内容、形式、規模によつて差異が生じてくるとすれば、その限界を示されたい。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

一について

1及び2 大日本帝国憲法においては、安寧秩序を妨げず臣民たるの義務に背かない限りにおいて信教の自由を保障していたが、現行憲法は、信教の自由を実質的なものとするため、第二十条第一項前段及び第二項において信教の自由を保障した上、国その他の公の機関が宗教に介入し、又は関与することを排除する見地からいわゆる政教分離の原則に基づく規定として同条第一項後段及び第三項並びに第八十九条の規定を設けたものである。

3及び4 大日本帝国憲法は、「日本臣民ハ安寧秩序ヲ妨ケス及臣民タルノ義務二背カサル限二於テ信教ノ自由ヲ有ス」(第二十八条)と規定し、宗教団体法(昭和十四年法律第七十七号)が宗教団体の地位及びこれに対する保護監督の関係等を規定していた。他方、「国家神道」は、いわゆる神道指令において神社神道と同義に用いられた語であるが、神社は、建国の大義に基づき皇祖皇宗の神霊を始めとし国家に功績のあつた諸神を祭祀するため国家自ら設営するもので、神社は宗教ではないとして取り扱われていた。なお、神社を保護するため、他の宗教に対する弾圧を行つた事例についてはつまびらかでない。

5 昭和二十年十二月十五日の連合国軍最高司令部によるいわゆる神道指令は、信教の自由の保障と政教分離の原則の徹底を図るため、国家等による神道の保証、支援の禁止等を指令したものであつて、今日においては失効している。

6 いわゆる神道指令においては、国家が公式に指定した宗教に対する信仰の強制から日本国民を解放する等のため指令する旨が述べられている。また、憲法第二十条及び第八十九条の規定の解釈に当たつては、同指令に依拠することを要しない。

7 いわゆる神道指令と新日本建設に関する詔書との関連はつまびらかでない。

8 憲法第二十条第三項に規定する「国及びその機関」とは、国及び公共団体並びにそれらの行政機関その他の機関を意味し、天皇も含まれるものである。

二について

1から3まで 靖国神社は、明治十二年に東京招魂社を改称したものであり、東京招魂社は東京九段坂上に戊辰以来の戦死の士を祭るものとして営まれたものである。以来、今次大戦の終戦に至るまでの同神社は、戦没者等を祭神として祭つてきた。戦後、靖国神社は、所要の手続を経て、昭和二十一年、宗教法人となり、今日に至つている。

なお、靖国神社は、終戦直後、連合国軍最高司令部からその名称を変更するよう求められたようであるが、靖国神社側は、「靖国」は「安国」という意味で最も平和的な言葉であると説明し、名称存続の了解を得たと聞いている。

4 靖国神社への公式参拝とは公務員が公的な資格で参拝することを指し、国家護持とは、国が靖国神社の運営について、参与し、又は国費を支出することを意味することが多いと考えている。また、憲法上、これらの行為が問題となるのは、第二十条及び第八十九条との関係である。

5 靖国神社は、東京都知事所轄の宗教法人となつており、憲法上の宗教団体である。

6 靖国神社の国家護持とは国が靖国神社の運営について、参与し、又は国費を支出することを意味するとすれば、国がそれらの行為を行うためには、靖国神社が宗教性をなくすることが必要であると考える。

なお、国が宗教団体に介入することができないことは当然である。

7 靖国神社法案については、これまでも自由民主党の国会議員によつて国会に提出されてきたという経緯があるので、今後も、この問題については、自由民主党における議論の推移を見守つてまいりたい。

三について

全国戦没者追悼式は政府が主催し、天皇皇后両陛下に御臨席をお願いし、全国の戦没者遺族代表その他各界の代表等が参列し、黙とうを行い、追悼の辞を述べ、献花を行うこと等を内容としている。

また、全国戦没者追悼式は日本武道館で行つているが、これは、同館が、設備、収容能力、周辺の環境等の諸点から判断し、この式典を行うに最適な場所であるからである。

なお、全国戦没者追悼式は、宗教的儀式を伴わない式典であり、憲法第二十条第三項の宗教的活動には該当しない。

右答弁する。

衆議院の原文

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