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「明日香村における歴史的風土の保存及び生活環境の整備等に関する特別措置法」に関する質問主意書

衆議院 第92回 第1号

提出者
衆議院
提出日
1980年7月23日
内閣転送 1980年7月26日
答弁書受領日
1980年8月5日
提出から13日
答弁の項目数
4
質問 1,449字/答弁 1,891字

質問本文

衆議院議長 福田 一 殿

「明日香村における歴史的風土の保存及び生活環境の整備等に関する特別措置法」に関する質問主意書

この法律は一つの地方公共団体の地域を限つて、その歴史的風土を保存するため、憲法第十三条及び憲法第二十九条により保障された国民のもつ基本的な諸権利に制限を加えようとするものであり、特に第一種歴史的風土保存地区については、きびしい規制の措置を含む前例のない新しいタイプの法律である。この法律の施行に当たり、第九十一回国会における審議の中でも明らかにされていない部分について解明してゆく必要があると考えるので次の事項について質問する。

一1 明日香村は律令国家発祥の地としての歴史的風土が今日まで良好に保存されて来た地域とされているが、保存の対象とされる「歴史的風土」とはいかなるものを指すか、具体的に列挙されたい。

2 風俗、習慣等有形無形のものもこの地域ではよく伝承されていると考えるが、これらの保存なくして本法律制定の趣旨が達成できないのではないかと考えるが、政府は基本的にどのように対処しようとしているのか具体的に説明されたい。

二 明日香村における住民の生活基盤は主として農業であるが、その今後の対策について次の諸点をどう考えるか。

1 農業者(農家)とは、この法律ではいかなる範囲の者と考えるか。

2 農業経営の安定、向上と農業の経営改善等を図る施策の計画及び実施の責任はだれにあるのか。

3 第一種歴史的風土保存地区の農業については、すべて現行の国の施策から除外される農業振興地域外の区域となり、新農業構造改善事業等の農業投資もこの地区では全く該当しないと思料されるが、明日香村のような零細な経営規模で基盤整備事業を伴わない農業経営については、特別の措置が必要と考えるがどうか、具体的に説明されたい。

4 第一種地区の農家の農業経営を現状で凍結するとすれば、その農業所得は近隣の同規模の農家と比較して大きな所得差を生じるおそれがある。農家の生活安定を図るための方法はあるか。現在検討されている価格安定事業や後継者育成事業では十分でないと考えるので、その他の施策方法について説明されたい。

三 本法第三条により第一種保存地区内の土地買上げ価格は、不当に低いものであり、歴史的風土審議会の答申でも「昭和四十五年十二月十八日飛鳥地方に於ける歴史的風土及び文化財の保存等に関する方策について閣議決定が行われ、これにより所要の措置が講ぜられて来たため、大阪市域までわずか三十分余りという地理的条件により潜在的な開発のポテンシャルが高いにも拘らず周辺の市町村と比較して地価の著しい格差を生じている」と指摘しているところであるが、この土地買上げ価格の基準を、近傍市町村の市街化区域の地価に見合うよう改定し、引上げることが本法制定に係る歴風審の投げた課題の一つだと思料するが、政府はどう考えているか。

四1 本法第八条に係る明日香村の設置する「整備基金」の運用益の各大字管理組合等への配分の基準は規制基準に従い、第一種地区と第二種地区により傾斜配分、優先順位等どのように指導するのか、その行政指導の基本姿勢を説明されたい。

2 この基金の運用による事業として村が行う「発掘調査事業」等も含まれているが、「埋蔵文化財の発掘調査」事業費はすべて国と県で負担することが本法立法の趣旨と考えるがどうか。また国及び県の事業として採択される「発掘調査事業」の基準はどうなつているのか。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

一について

1 明日香村における歴史的風土の保存及び生活環境の整備等に関する特別措置法(以下「明日香村特別措置法」という。)に基づき、明日香村において保存の対象とされる「歴史的風土」とは、伝承飛鳥板蓋宮跡、伝承飛鳥浄御原宮跡、大官大寺跡、飛鳥寺跡、高松塚古墳、石舞台古墳、於美阿志神社、天武・持統天皇陵、大原の里、飛鳥川等の数多くの歴史的文化的遺産がその周囲の環境と一体をなして、明日香村における伝統と文化を具現し、及び形成している土地の状況である。

2 明日香村特別措置法が保存の対象とするのは、明日香村における歴史的風土であり、風俗、習慣等は直接の保存の対象とはされていないが、明日香村における歴史的風土の保存を図ることが、ひいては、風俗、習慣等の保存に資するものであると考える。

二について

1 明日香村特別措置法上、農業者(農家)の範囲について定めた規定はないが、農政上は、一般的に専業農家のみならず、第一種兼業農家及び第二種兼業農家をも対象として施策を進めており、明日香村特別措置法上も同様な範囲の農業者が施策の対象となると考えている。

なお、農業センサスにおいては、経営耕地面積が五アール以上の農業を営む世帯又は一年間の農産物販売額が十万円以上の世帯を農家としてとらえている。

2 明日香村における歴史的風土の保存と民生の安定、向上を図るためには、農業振興が重要な役割を果たすことが期待されている。この場合、歴史的風土の保存と調和のとれた農業振興の在り方については、奈良県の指導、助言の下に、明日香村及び明日香村の住民が長期的視野からこれに取り組むことが基本的に重要であると考えている。その際、国としても、明日香村特別措置法の趣旨に従つて同法の特別助成の制度等を活用しつつ、明日香村における農業振興のための施策の推進に努める所存である。

3及び4 第一種歴史的風土保存地区においては、現に稲作を主とする農業が営まれており、明日香村において、地区の特性に応じた農業振興を進めるためには、同地区において稲作を含めた土地利用型農業の振興が重要な課題であると考えている。

このため、奈良県及び明日香村と協議しつつ、稲作を含めた農業の生産性の向上、新しい作物の導入を中心として所要の農業施策を講じていく必要があると考えており、農業の担い手や後継者の育成、農産物価格の安定のための対策を含め、明日香村整備基金をも活用しつつ、営農条件の改善と農業所得の維持向上に努めてまいりたい。

三について

古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法に基づく土地の買入れは、同法第十一条及び同法施行令第九条の規定により、不動産鑑定士等の公正な鑑定評価を経た近傍類地の正常な取引価額等を考慮して算定した相当な価額により行われるものであるが、第一種歴史的風土保存地区内の土地の買入れ価額の算定に当たつては、近傍類地の選定は、第一種歴史的風土保存地区内にあることを要件とせず、近接市町村をも含めた最も当該土地に類似した近傍の土地としている。

四について

1 明日香村整備基金の運用益の各大字管理組合等への配分については、明日香村整備基金条例の定めるところにより、明日香村長が、明日香村の実情に十分配慮しつつ行うものである。国としては、基金の運用益の使途については、明日香村特別措置法第八条各号に規定する事業に当該運用益が適切に充てられるよう監督指導してまいりたい。

2 埋蔵文化財の発掘調査は、文化財保護法に基づいて行うこととなるが、同法第九十八条の二の規定により、地方公共団体は必要な埋蔵文化財の発掘を行うこととされており、一般的には県及び市町村が発掘調査事業を行い、同法第五十八条の規定により、国は特別な場合について発掘調査を行うこととされている。なお、国は、この外に、学術調査として行う場合がある。

明日香村整備基金の運用益は、明日香村特別措置法第八条各号に規定する事業に必要な経費に充当することとされており、埋蔵文化財の発掘調査は、同条第一号に規定する歴史的風土の保存を図るために行われる事業であるから、明日香村がこれに当該運用益の一部を充てるものとしていることは、同法の規定に従つたものである。

明日香村域における国、奈良県及び明日香村が行う遺跡の発掘調査については、明日香村特別措置法の成立に際しての衆議院及び参議院の建設委員会における附帯決議の趣旨に沿い、国、奈良県及び明日香村が話し合い、分担協力して進めることとしているが、その円滑な実施がされるよう配慮してまいりたい。

右答弁する。

衆議院の原文

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