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横浜APECと日中・日露首脳会談に関する質問主意書

参議院 第176回 第136号

提出者
参議院
提出日
2010年11月29日
内閣転送 2010年12月1日
答弁書受領日
2010年12月7日
提出から8日
答弁の項目数
7
質問 2,842字/答弁 1,956字

質問本文

横浜APECでは、今後のアジア太平洋地域の経済統合の方向性について、中国が推進するASEANプラス三(日中韓)、日本が提案しているASEANプラス六(日中韓+インド、豪州、ニュージーランド)に加え、米国が主導する環太平洋経済連携協定(TPP)が大きく存在感を示した結果となった。

このTPPについては、農業県としての群馬県においても大きな関心を呼んでおり、農家にとって極めて大きな悪影響を受けることが想定される協定である。

我が国の食糧自給率は先進国中最も低いこと、また、我が国にとって、気候変動に伴う海外の農耕地の災害等に起因する輸入難が生じかねない時代であることからしても、TPP導入検討は唐突すぎる。我が国の農業を守るとの視点に立つことこそが、国民生活を守ることに繋がるとの認識を持つことが重要である。

そこで、以下質問する。

一 APECとTPPの今後の取組について

菅総理大臣は、APECにおいて日本のTPPの協議開始を正式に表明し、APEC閉幕後のTPP参加交渉九か国の首脳会合にオブザーバーとして出席するなど、TPP参加に向けた積極姿勢を示した。

こうした総理大臣の一連の姿勢を見る限り、今後のアジア太平洋地域の経済統合については、米国主導のTPPに大きく軸足を移したとの印象を強く受けるが、他方でTPPについて、APECでは、タイ、中国からはTPPを牽制する発言も出ている。今後の我が国の方針、そして関係各国との協議をどのように進めていくのか、見解を示されたい。

二 TPP交渉参加と国内対策の見通しについて

TPPについて、米国は、その強い主導により来年のハワイでの交渉妥結を目指していると言われている。日本の交渉参加について、仙谷官房長官は記者会見で来年六月にも判断するとの見解を示しているが、そのためには農業問題など国内調整をわずか半年でまとめ上げなければならない。来年六月には、農業構造改革に関する基本方針の策定を予定しているが、既に農水省の試算によれば、TPP参加によりGDPで年間七・九兆円程度の影響が出るとのことであり、国内調整も予断を許さない。

今回の政府のTPPの協議開始決定は、文字どおり見切り発車の場当たり的印象を否めず、国民間の議論が無視された形となっている。まずは、政府より今後の交渉参加に向けた見通しについて国民に対し明確な説明と見解を示されたい。

また、報道では、農業支援に関し、与党民主党は来年度予算に盛り込む方向で動いているとのことであるが、わずか半年で決断が迫られる状況で、予算措置の裏付けのある国内対策をTPP交渉参加の前にとり得るのか、その見通しについても明確に示されたい。

三 日中首脳会談について

尖閣諸島をめぐる日中間の対立の中、ようやく漕ぎ着けた日中首脳会談ではあったが、その会談時間はわずか約二十三分間であり、加えて中国側の発表では公式な首脳会談ではなく、正式会談に準ずるものとの位置付けに過ぎず、日中の関係修復の困難さを見せつける結果となった。

同会談では、長期的に安定した日中戦略的互恵関係の発展が、両国国民の利益に合致するとともに、地域・世界の平和と発展にとっても重要であるとの認識で一致した。しかし、今後、両国の関係修復に向けては、当面の懸案課題であるレアアース(希土類)の輸出停滞問題、そして条約交渉が一方的に延期となった東シナ海ガス田の共同開発問題が解決されなければならない。

これらの点について、福山官房副長官は、会談で取り上げられたのかを含め内容の紹介について「控えたい」と発言したようである。他方、レアアース問題については、中国側からは、「近いうちに適切に対応する」との発言もあり、最近では改善しつつあるとの報道もあるようである。しかし資源安全保障の観点から、我が国はモンゴルとの連携についても積極的に進めていくとともに、この種の問題についても協議していくべきである。

中国との間のレアアースの輸出停滞問題及びガス田の共同開発問題、モンゴルとの積極的連携について、今後、具体的にいかなる取組を進めていくのか、政府の見解を示されたい。

四 日露首脳会談について

ロシアの最高指導者であるメドベージェフ大統領による国後島訪問は、前例のない暴挙であり、日本国民の心情に極めて深刻な影響を与えるものであり、厳重に抗議すべきものである。

そこで、今般の日露首脳会談において、菅総理大臣はメドベージェフ大統領に対して、厳重な抗議を行ったのかを確認したい。

また、これに対してロシア側からはどのような反応があったのかについても明らかにされたい。

五 情報収集体制について

メドべージェフ大統領による国後島訪問直前の十月末、この件について在モスクワの日本大使館から外務省欧州局に伝えられたが、菅総理大臣らの耳には届かなかった。外務省から官邸に至る情報伝達ルートのどこかで途絶した可能性がある。当時、菅総理大臣とメドべージェフ大統領はともにハノイに滞在していた。情報が伝われば日露首脳の直接交渉も可能だっただけに、日本側は国後島訪問阻止の絶好機を逸したことになる、との報道がある。もし本当ならば、政権内の意思疎通と問題処理能力が問われる問題である。事実であるか確認したい。

また、このような事態が今後も生じないような対応策を示されたい。

六 メドベージェフ大統領の国後島訪問の背景と認識について

メドベージェフ大統領の国後島訪問については、政府は、いかなる理由で実施されたと考えているのか、明らかにされたい。報道等では、ロシア側の国内事情、特に大統領選挙に向けたアピールなどとの指摘もされているが、他方で、昨今の日本政府の対応にも原因があるのではないかとの指摘もある。

特に、鳩山前政権での普天間問題による日米同盟の動揺や尖閣諸島に見られる政府の領土に対する毅然とした態度の欠如、加えて、政権交代後、北方領土問題を含め対露関係において、民主党政権が目立った外交の取組を怠ったことに起因するとの声も多い。

政府は、こうした点を率直に反省するとともに、国後島訪問の背景をどのように分析しているのか、認識如何。

七 北方領土問題解決に向けた今後の取組について

今般の日露首脳会談において、北方領土問題について、菅総理大臣はメドベージェフ大統領との間でいかなる議論を行ったのか、明らかにされたい。

また、この問題について、日本政府は、従来より四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するとの方針を示しているが、領土問題の打開に向けては、この方針を堅持しつつも、今後は一層具体的な道筋を日本側から探っていく必要もある。

同首脳会談では、経済協力を主とする日露協力についても議論されたと承知しているが、今後、経済協力と領土問題との関係の在り方を含め、北方領土問題解決に向けていかなる方針で望むのか、見解を示されたい。

右質問する。

参議院の原文・経過

政府答弁書

一について

本年十一月に横浜で開催されたアジア太平洋経済協力(以下「APEC」という。)首脳会議の首脳宣言においては、APECの地域経済統合の課題を進展させるための主要な手段であるアジア太平洋自由貿易圏(以下「FTAAP」という。)の実現に向けて具体的な取組を行うこと、FTAAPは、東南アジア諸国連合(以下「ASEAN」という。)に日本、中国及び韓国を加えたASEAN+3、これにインド、オーストラリア及びニュージーランドを加えたASEAN+6、環太平洋パートナーシップ(以下「TPP」という。)協定等の現在進行している地域的な取組を基礎として、これらを更に発展させることにより、包括的な自由貿易協定として追求されるべきであること等が確認されたところである。

政府としては、「包括的経済連携に関する基本方針」(平成二十二年十一月九日閣議決定。以下「基本方針」という。)において、TPP協定については、「その情報収集を進めながら対応していく必要があり、国内の環境整備を早急に進めるとともに、関係国との協議を開始する。」としたところであり、今後、基本方針にのっとり、交渉参加国との間で協議を行っていく予定である。

二について

TPP協定については、基本方針において、「その情報収集を進めながら対応していく必要があり、国内の環境整備を早急に進めるとともに、関係国との協議を開始する。」としたところである。また、この協議は、交渉参加の前段階のものとしており、政府としては、こうした協議の状況や国民の理解の深まり具合などを総合的に勘案しながら、交渉参加についての判断を行うこととしている。

高いレベルの経済連携の推進と我が国の食料自給率の向上や国内農業・農村の振興とを両立させ、持続可能な力強い農業を育てるための対策については、本年十一月二十六日に設置した食と農林漁業の再生推進本部において検討を行っているところである。また、平成二十三年度予算の編成過程においては、戸別所得補償制度を含む農業施策について検討するため、国家戦略担当大臣を議長とし、内閣官房長官、財務大臣及び農林水産大臣をメンバーとする四大臣会合を開催しており、競争力強化に向けた施策内容の充実を図る観点から検討を進めているところである。

三について

中国からのレアアースの輸出が停滞している問題については、政府として、あらゆる機会を捉え、中国側に改善を求めてきており、今後とも、中国側に働きかけていく考えである。

東シナ海の資源開発の問題については、政府としては、東シナ海における日中間の協力についての平成二十年六月十八日の合意を速やかに実施に移すため、中国側に対し、引き続き、様々な機会にあらゆるレベルで粘り強く働きかけていく考えである。

モンゴルとの連携については、本年十一月十九日の日モンゴル首脳会談において、レアアースを含むモンゴルの鉱物資源開発における両国の協力を戦略的に推進することで両首脳が一致したところであり、政府としては、経済関係の互恵的発展を含む戦略的パートナーシップの構築に向け協力を強化していく考えである。

四について

本年十一月十三日の日露首脳会談においては、菅直人内閣総理大臣から、メドヴェージェフ・ロシア連邦大統領に対し、今般同大統領が国後島を訪問したことは、我が国の立場及び我が国国民の感情から受け入れられないとして、抗議した。これに対し、同大統領からは、ロシア側の基本的立場を踏まえた発言があった。

五について

メドヴェージェフ・ロシア連邦大統領の北方四島への訪問に関しては、政府として、これまで種々の情報に接していたが、お尋ねについて明らかにすることは、今後の情報収集等に支障を来すおそれがあることから、差し控えたい。

六について

今般のメドヴェージェフ・ロシア連邦大統領の国後島訪問の背景には様々な事情があると考えられているが、政府として、ロシア側の意図について論評することは差し控えたい。

七について

本年十一月十三日の日露首脳会談においては、菅直人内閣総理大臣から、メドヴェージェフ・ロシア連邦大統領に対し、北方四島の帰属の問題を最終的に解決して平和条約を締結すべく、今後も両首脳間で議論していきたい旨述べた。これに対し、同大統領からは、北方領土問題はロシアにとっても極めてセンシティブな問題である旨の発言があった。また、両首脳は、北方領土問題解決のための協議と経済協力のための協議について、首脳同士によるものを含め、これらを進めていくことで改めて一致した。

政府としては、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するとの方針の下、引き続き、強い意思をもってロシア連邦政府との間で交渉を行っていく考えである。

参議院の原文

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