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被収容者の処遇改善に関する質問主意書
参議院 第211回 第143号趣旨が明らかではない ×1
質問本文
一 ウィシュマ・サンダマリさん死亡事案に関する調査報告書では、二〇二一年二月二十二日に内部で医師の診療を受けたが、あくまで栄養剤処方のための診療とのことだった。その後もウィシュマさんは、病院に連れて行って欲しい、点滴をして欲しいと担当職員らに何度も訴え続けたが、結局、亡くなる二日前に外部の精神科を受診しただけだった。あれだけ具合の悪そうなウィシュマさんが病院に連れて行って欲しいと訴え続けていたにもかかわらず、なぜ病院に連れて行かなかったのか、政府の見解を明らかにされたい。
二 第二百十一回国会において成立した改正出入国管理及び難民認定法では、新たに被収容者の処遇に関する章が新設された。第五十五条の三十七では、保健衛生及び医療の原則として、「入国者収容所等においては、被収容者の心身の状況を把握することに努め、被収容者の健康及び入国者収容所等内の衛生を保持するため、社会一般の保健衛生及び医療の水準に照らし適切な保健衛生上及び医療上の措置を講ずるものとする。」との規定がある。これをウィシュマさんに関して当てはめれば、被収容者の心身の状況を把握したとはいえず、また社会一般の医療の水準に照らし適切な医療上の措置を講じたともいえない。ウィシュマさんへの対応は、この原則を満たしていなかったと考える。そもそも、改正法の被収容者の処遇に関する規定は、今まで被収容者処遇規則等で定められていたものを法律上に規定しただけで、廃案となった前回の法律案から内容は変わっていない。これではウィシュマさんを死に至らしめた入管収容施設における被収容者の処遇が改善するとは考えられないが、この点についての政府の見解を示されたい。
三 今回の改正法では、診療については新たに第五十五条の四十二と第五十五条の四十三の二条を設けることになった。第五十五条の四十二では、入国者収容所長等は、被収容者が負傷・疾病又はそれらの疑いがあるときなどの場合、速やかに医師による診療等の医療上の措置を採ることとされた。また、第五十五条の四十三は、自己の費用で医師等を指名して診療を受けることができるとする規定だが、入国者収容所長等が医療上適当であると認めるときに限られるとされた。つまり、入管収容施設の被収容者が医師の診療を迅速に受けられるかどうかは、入国者収容所長等の判断にかかっており、被収容者が希望するとおりに診療を受けることができる仕組みにはなっていない。これでは、ウィシュマさんのように明らかに体調が悪く医師の診療を求めていても、迅速に医師の診療が認められる保証がないため、ウィシュマさんのような事案の再発を防止できるとはとても思えない。ウィシュマさんの死を受けてなお、なぜ廃案となった法律案と同様の規定にしたのか、また、これでウィシュマさんのような事案が二度と起こらないようになるといえるのか、政府の見解を示されたい。
四 ウィシュマさん死亡事案の調査報告書には、二〇二一年一月二十九日、ウィシュマさんが病院に連れて行ってもらえない旨を訴える手紙を入国者収容所等視察委員会宛ての提案箱に投函したことが記載されている。しかし、ウィシュマさんの手紙が開封されたのは、投函から一か月以上後の三月八日であった。これはウィシュマさんが亡くなった二日後である。このような入国者収容所等視察委員会の在り方が問われてしかるべき事実関係であるにもかかわらず、今回の改正内容では、入国者収容所等視察委員会の規定も前回の法案と変わっていない。政府は、今回の事実関係において、視察委員会は十分その機能を果たしていたという認識か。
右質問する。
政府答弁書
一について
お尋ねについては、出入国在留管理庁が令和三年八月十日に取りまとめた「令和三年三月六日の名古屋出入国在留管理局被収容者死亡事案に関する調査報告書」において、「名古屋局では、被収容者から診療の申出があった場合でも、事前に看守勤務者や看護師等が診療の必要性を判断して言わば事前のスクリーニングが行われており、そこで診療の必要があると判断されなければ、診療申出書が作成されず、局幹部への報告や決裁が行われない運用となっていた。このように、名古屋局では、局幹部による診療申出事実の把握や医師の診療の必要性等の判断が行われていなかった」、「A氏が消化器内科や整形外科を受診したものの器質的な疾患が認められなかったことや、A氏が繰り返しバイタルチェックを求めるようになったものの、その結果として、特に異常な数値が検出されないことが少なくなかったことなどから、看守勤務者の多くは、A氏による体調不良の訴えについて、仮放免許可に向けたアピールとして実際よりも誇張して主張しているのではないかと疑っていた。また、二月十九日には、三月四日にA氏を外部病院の精神科で受診させることが決まっており、A氏本人には受診実施直前に伝達する予定となっていた。そのため、看守勤務者は、既にA氏からの申出を受けた結果として、外部病院の精神科での受診が決定され、対応済みであると認識していた」などと記載しているとおりである。
二について
出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律(令和五年法律第五十六号)による改正後の出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号。以下「改正後入管法」という。)第五章の二においては、改正後入管法第二条第十六号に規定する入国者収容所等に収容されている者(以下「被収容者」という。)の処遇を一層適正化するため、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(平成十七年法律第五十号)も参考にしつつ、被収容者の権利、義務に関わるものなど法律で定めることが適切と考えられる事項を新たに規定したところであり、「入管収容施設における被収容者の処遇が改善するとは考えられない」との御指摘は当たらない。
三について
改正後入管法は、改正後入管法第五十五条の三十七において、入国者収容所等においては、被収容者の心身の状況を把握することに努め、被収容者の健康等を保持するため、社会一般の医療等の水準に照らし適切な医療上の措置等を講ずるものと規定した上で、改正後入管法第五十五条の四十二において、負傷し又は疾病にかかっているとき等、法律の定める場合には、速やかに、医師等による診療を行い、その他必要な医療上の措置をとるものとしており、そのような場合に入国者収容所長等に医療上の措置をとるか否かに裁量はなく、改正後入管法を適切に運用することは、御指摘の「ウィシュマさんのような事案」の再発防止に資することから、出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案を第二百十一回国会に提出したものである。
四について
お尋ねの「今回の事実関係」の意味するところが必ずしも明らかではないが、入国者収容所等視察委員会は、入国者収容所等の運営に関し、入国者収容所長等に対して意見を述べるものであるところ、出入国管理及び難民認定法第六十一条の七の二から第六十一条の七の六までの規定に基づき、現行制度においても、独立した立場で運営されており、その役割を適切に果たしていると認識している。
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