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教科書検定問題に関する質問主意書

衆議院 第101回 第47号

提出者
衆議院
提出日
1984年8月7日
内閣転送 1984年8月8日
答弁書受領日
1984年8月21日
提出から14日
答弁の項目数
5
質問 2,875字/答弁 899字

質問本文

衆議院議長 ※(注)永健司 殿

教科書検定問題に関する質問主意書

小中学校及び高校等における教科書検定の問題に関し、次のとおり質問する。

1 昭和五十七年六月中国よりの教科書記述についての抗議以来、同年十一月二十四日検定基準の改定に至る期間における作業過程は外交が優先し、教育がこれに追従したと見られるがどうか。

2 この中国の抗議は内政干渉であり、国連憲章の精神に反するが故に前記検定基準の改定は無効と考えるがどうか。

3 この教科書問題の発端となつた日本の新聞記事は、取材上の手違い等による誤報であることが明らかにされたが、にもかかわらず、中国の要求にこたえた理由は何か。

4 この抗議がなくとも検定基準は改定されたか。このことがなかつたら改定されなかつたか明らかにされたい。

二 南京虐殺事件の記述について

1 本年七月二十日の文教委員会における私の質問に対しての高石政府委員の答弁のうち「南京虐殺事件についての学界の通説の根拠として示された外務省の資料」とはいかなるものか。私の閲覧した限りにおいては「外務省外交史辞典(昭和五十四年三月三十日発行)」以外、それらしい資料は見当たらないが、その外に資料があれば具体的に明らかにして頂きたい。

2 「外務省外交史辞典」に記述された南京事件は一学者の一説にすぎず、南京に虐殺がなかつたという学者の一説もあり、これをもつて南京に何十万人の虐殺事件があつたという「根拠」とはなり得ないと思うがどうか。

3 近現代史においては、「学界の通説」というものは未だ定まつていない。これが、学界の共通認識となつていると思うが如何。

4 社会科の教科書のうち「南京虐殺事件」の被害者の数などの基礎となつたと思われる資料はおおむね左の資料と思われるがどうか。

A 南京安全区国際委員会公式書簡

委員会より、日本軍・日本大使館・外国公館に送られた公式文書

右重要部分(安全区の人口については、昭和十二年十二月中の文書三通とも二十万人と記載、昭和十三年一月以降七通とも二十五万人と記載)

B L・S・Cスミス編「南京地区における戦争被害」

一九三七年十二月〜一九三八年三月までの都市及び農村の調査

右重要部分(兵士の暴行による死亡二、四〇〇人、同傷害三、〇五〇人、拉致されたもの四、二〇〇人)

C アメリカ大使館報告

アメリカのエスビー副領事が昭和十三年一月南京に残留していたアメリカ人から調査して国務省へ送つた報告書。(東京裁判検察側証拠)

右重要部分(南京防衛軍(中国軍)の数五万人)

D N・Y・タイムズ、T・ダーディン記者の記事(昭和十二年十二月十八日号・同十三年一月九日号)

右重要部分(南京防衛軍の数五万人)

5 これが基礎資料とすれば、いかに計算しても、二十万人、三十万人の殺害という数字は出てこないと思うが、何によつてこの数字が出たか明らかにされたい。

なお、これ以上の大量殺害を示す一次的資料として、権威ある資料があれば明らかにされたい。

三 北方領土等の記述について

教科書の北方領土等に関する記述には、多くの誤りや問題点があるが、以下に指摘する点について是正されるべきと思うが如何。

(1) 終戦後におけるソ連の対日侵略によつて北方領土が奪われた事実が明記されていない点

(例) ほとんど全部の教科書

(2) 我が国の関与しない、従つて責任を有しないヤルタ協定によるソ連の参戦と北方領土の占有が、あたかも合法的であるかのごとき記述をされている点

(例) 学校図書株式会社「中学校社会歴史」二七二頁

「この会談では、ドイツ降伏の三ヵ月以内にソ連が対日参戦すること。そのかわり樺太・千島をソ連に引きわたすことなどが、秘密にとりきめられた。」

(3) ソ連はサンフランシスコ平和条約をボイコットしたのであるから、同条約によつて北方領土に関し、何らの権利権限を有しないことが明記されていない点

(例) 教育出版株式会社「改訂中学社会」二九二頁

「千島の帰属については、平和条約できめられず、北方領土問題として日本とソ連の外交関係の重要問題として残された。」

(4) サンフランシスコ平和条約は、アメリカが日本に押しつけたものであるかのごとき記述をされている点

(例) 中共出版株式会社「中学生の社会科」二八八頁

「アメリカは長期にわたる日本占領で反米感情の高まることを心配した。朝鮮戦争が起きると、日本を独立させ、西側につなぎとめておくことが有利と考え、日本との講和を急いだ。」

(5) 沖縄米軍基地と北方領土の地図を並べて掲げその縮尺をことさら違つたものとし、北方領土は余りにも小さく、沖縄米軍基地は余りにも大きく図示し親ソ反米的編集となつている点

(6) 沖縄における、あるいは原爆におけるアメリカの暴挙を大々的に記述する反面、北方領土におけるソ連の暴挙については記述していない点

(7) ソ連が対日戦に参加し、我が本土に侵略したことをあえて避けて記述している点(当時、本土であつた南樺太・朝鮮・千島に侵略して来たことは、いずれも欠落なく記述すべきである。)

(例) 東京書籍株式会社「新しい社会」二八九頁

「ソ連も8日ヤルタ協定にもとづき日ソ中立条約を無視して日本に宣戦し、満洲に攻めこんできた。」

(8) 終戦当時、明らかに日本の領土(行政上の本土)であつた南樺太を植民地であつたと記述している点

(例) 学校図書株式会社「中学校社会地理」一三五頁

「第二次大戦に敗れるまで、台湾・南樺太・朝鮮などを植民地としていたが……」

四 検定制度の見直しと記述の誤りの是正について

1 昨今の学校教科書を総合的に判断すると、我が国の近現代史を近隣諸国への侵略史と断定しているがそれであつてよいか。

2 教育は国家百年の大計といわれるが、今後の国家運用上の高度なる見解において、また次代を担う青少年の正しい愛国心を涵養する上において、検定制度等を見直し、是正されるべきではないか。その所見を明らかにされたい。

3 学校教科書の検定について、既に検定済み使用中の教科書の中に明らかなる記述内容の誤りが発見された場合においては、いかなる手続きによつて修正されるか。

4 その場合に次回の検定までの措置はいかになされるか。

5 既に誤つた教科書によつて教育を受け終つた児童生徒への政府の責任はいかにして果たされるか。

五 歴史教育のあり方と教科書の検定について

1 およそ一国の歴史は、その国その民族の文化であり、名誉ある過去と希望ある将来への理想であると私は信じるが、純粋学問としての歴史と、教育としての歴史は、その記述の基本理念に相違があつて当然であり、教育としての歴史は少なくとも、自国の栄光と名誉を汚さず子弟をして、自らの国に愛敬と尊仰の思いを抱かせるべく配慮されるべきと思うが見解はどうか。

2 今日検定を了して使用されている学校教科書における歴史の記述は、国の教育方針に沿つているか否か。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

一について

昭和五十七年十一月二十四日の教科用図書検定基準の改正は、同年八月二十六日に発表された「『歴史教科書』についての官房長官談話」の趣旨を受け、教科用図書検定調査審議会の答申に基づき行つたものであり、我が国と近隣のアジア諸国との友好、親善を一層進める上で教科書の記述がより適切なものとなる道を開こうとしたものである。

二について

歴史教科書の検定においては、広く学界に受け入れられている学説に基づき記述されているかどうかについて審査を行つているところであり、南京事件についても同様である。

なお、昭和五十九年七月二十日の衆議院文教委員会における御指摘の答弁において、南京事件の有無についての学説の状況を示す一例として挙げたのは、「日本外交史辞典」(外務省外交史料館日本外交史辞典編纂委員会編集、昭和五十四年三月三十日発行)である。

三について

教科書検定制度は、教科書の著作を民間にゆだねることにより、著作者の創意工夫を期待するとともに、検定を行うことにより、適切な教科書を確保することを趣旨とするものである。したがつて、北方領土等について、教科書にどの程度、どのような表現で記述するかは、教科用図書検定基準に違反しない限り、教科書の著作者の判断にゆだねられているところである。

四について

1 現在使用されている教科書は、教科用図書検定基準に照らし、適切なものであると考えている。

2 教科書制度の整備については、昭和五十八年六月三十日の中央教育審議会の答申の趣旨を尊重して適切に対処してまいりたいと考えている。

3から5まで 教科書の記述に誤記、誤植等がないよう、教科書の検定において努力しているところであるが、検定を経た教科書に誤記、誤植等があることを発見したときには、教科用図書検定規則第十六条の規定により、教科書の発行者は、文部大臣の承認を受け、必要な訂正を行わなければならないこととされている。

五について

初等中等教育における歴史教育は、学習指導要領の定めるところに従つて行うこととしており、歴史教科書の検定は、教科用図書検定基準に基づいて行つているところである。

右答弁する。

衆議院の原文

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