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国語教育に関する質問主意書

衆議院 第107回 第25号

提出者
衆議院
提出日
1986年12月4日
内閣転送 1986年12月10日
答弁書受領日
1986年12月16日
提出から12日
答弁の項目数
9
質問 2,151字/答弁 1,622字

質問本文

衆議院議長 原 健三郎 殿

國語教育に関する質問主意書

凡そ教育は國の存立の基本を培ふものであり、ことに國語教育こそはその基本である。世界の殆ど総ての國がこれに全力を尽してゐる所以である。

然るに我國においては、戦後の教育制度の改革に當つて、漢字の制限、假名遣ひの改變など、むしろ國語の傳統を中断する傾向があつたことは洵に残念なことと言ふべきである。

即ち、今にしてこの弊を改め、本來の國語を恢復する爲の教育を確立することは、國政の急務である。

よつて、其の方針について質問する。

一 國語の授業時間數の増加について

現在、小學校における國語の授業時間數は、平均して、一年生では年間二七二時間、二年生では二八〇時間、三年生では二八〇時間、四年生では二八〇時間、五年生では二一〇時間、六年生では二一〇時間に過ぎない。これは他の教科と比較しても余りにも少い。また戦前の義務教育に比しても少く、他の文明諸國のそれに比しても少い。

國語教育こそは、教育全体の基礎であることを思ひ、これを増加する考へはないか。

二 假名の取扱ひについて

曾ての國語教育にあつては、先に片假名を、後に平假名を教へたが、戦後はこの順序が逆になつた。これは幼兒の筆記能力から見て實態に即さず、文字の成立から考へても不合理である。

むしろ、先に直線的片假名を、後に曲線的平假名を教へるべきであり、簡易にして基礎的な漢字、ことに假名の成立に關りある漢字を、假名と同時並行して教へることが望ましい。見解如何。

三 漢字の制限を廢して豊かな國語を

先に政府は常用漢字を定めて、これを社會生活の目安とし、學校教育の面でもこれに依つてゐる。しかしその結果は、音も訓も社會生活に普及し深く關つてゐる漢字であるに拘らず、例へば「委」の如く音(い)だけ教へて訓(まかせる)を教へないなど、不便不合理が多い。故にこの制限を廢して文字の成立ちと、仕組みに從つて教へることとし、各學年において學習すべき漢字の數を、大まかに示すに止めるべきである。政府の考へはどうか。

四 五十音圖の復元

政府が先に定めた「改定現代假名遣ひ」にあつては、五十音圖ア行のイとエは生きてゐるが、ヤ行のイとエやワ行のヰ、ウ、ヱは廢止されてゐる。

これでは動詞等の活用が機能せず、ために非學問的便宜主義的假名遣ひたることを免れない。五十音圖を復元し、正しい発音正しい活用の基準とする考へはないか。

五 混書きの廢止

元來一つの熟語について漢字と假名を混書きすることは固く戒められてゐたが、今日では、「ら(拉)致」、「こ(跨)線橋」などと濫用されてゐる。このままでは、やがてその熟語が廢滅すると思はれるので、これを元に還すべきではないか。

六 書替へ、當字について

「死残」の残を没とし、「聯合」の聯を連とし、「編輯」の輯を集とするが如き書替へは、本來の字義を曲げて熟語の意義を曖昧にする。これら書替へが常用されてゐるうちに、「輿論(よろん)」を「世論(せろん)」とし、「溢血」を別概念である「出血」に書替へて「脳出血」とするなど、重大な誤りが生じてゐる。これを正當な表記に復す考へはないか。

七 古文及び現代文の引用について

國語教育において、古文及び現代文を引用する場合はその用例を出來る限り多くし、ことにその漢字、假名遣ひなどを原文のままとし、いやしくも改竄することはやめるべきではないか。

八 縦書が國語の本則

漢字や假名文字の成立ち、或ひは筆写の實際から言つて、國語の書式は本來縦書である。またそれでこそ美しい文字も書き得る。

今日、安易に横書が氾濫するが、國語教育においては「縦書が國語の書式の本則であつて、欧文の混じる文章や數式の混じる文章に限り變則として横書にするものであること」を明確に教へるべきと思ふがどうか。

また、横書の場合の原則は右より左へ書くことが歴史的には正しいことも教へるべきではないか。でなければ価値ある古い書額等も世に傳はらなくなると思ふが見解如何。

九 低學年の兒童の氏名の表記について

兒童生徒をして自分の氏名を正しく書かせ、また書けるように教へることは國語教育の第一歩である。然るに大部分の小學校では低學年の兒童の氏名を平假名で書かせてゐるが、これは文部省の方針によるものであるか。さうならば之を改めて戸籍通りの表記にすべきである。また、その方が知らず識らずのうちに兒童同志で漢字を覺えるといふ意味で教育効果が高まると思ふがどうか。

十 他の教科と國語との關聯

國語が學問、常識の基礎であることを思ふとき、社會科、數學等総ての教科にわたり、その記述、讀み方は、これを國語教育の一部として位置づけるべきではないか。また、道�コ教育との一体的運用により國語教育の眞の成果を得るやう改善される考へはないか。

また、書道は國語教育に不可欠のものであり、日本文化の基礎をなすものの一つであるが、今日これは著しく輕視されてゐる。ために青年學生の書寫能力は非常に低下し、文字を單に記號符號としてのみ理解する風潮が生じてゐる。家庭と社會に氣品と潤を恢復し、美麗優雅にして正確な文字が日常行はれる爲にも、書道を必須科目として充實させる考へはないか。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

一について

国語科の授業時数については、昭和六十一年十月二十日に公表された教育課程審議会の中間まとめにおいて、国語力の一層の充実を図る観点から、小学校低学年の国語科の授業時数を増加する方向が示されている。

二について

平仮名は日常生活で最もよく接する文字であり、生活と結び付いた文字教育を行うのが効果的であることから、小学校においては片仮名より先に平仮名が指導されている。

また、漢字については、児童の言語生活にかかわりの深い語や文章に即して指導がなされており、仮名及び漢字の成り立ちについては、小学校高学年において指導がなされている。

これらの指導の在り方については、適切なものと考えている。

三について

「常用漢字表」に掲げる音訓は、法令、公用文書、新聞、雑誌、放送など、一般の社会生活において、現代の国語を書き表すための音訓使用の目安を示すものであり、学校教育における漢字の指導については、「常用漢字表」の趣旨に沿つて、児童生徒の発達段階や学習負担、指導の一貫性を確保することなどを考慮して行うことが適当である。このような観点から、小学校においては、児童の生活に結び付いた漢字指導を基本として、各学年において指導する漢字の字種及び字数を示すことは必要であると考える。

四について

「現代仮名遣い」の本文第一の一の直音の項に示す表は、五十音図の形式を借りて現代語の音韻に対応する仮名の種類を示したものであり、これによつて五十音図を否定しようとするものではない。

五及び六について

御指摘のような措置は、「当用漢字表」に基づいて言葉の使用を円滑にするために採られたものであつて、一般社会におおむね定着しているが、その後「常用漢字表」で新たな漢字が採用された結果、混ぜ書きが行われなくなつた例も多い。

なお、「常用漢字表」は、法令、公用文書、新聞、雑誌、放送など、一般の社会生活において、現代の国語を書き表す場合の漢字使用の目安を示すものであり、科学、技術、芸術その他の各種専門分野や個々人の表記にまで及ぼそうとするものではなく、また、過去の著作や文書における漢字使用を否定するものではない。

七について

国語の教科書において現代文又は古文を教材として引用する場合には、漢字については「常用漢字表」により、仮名遣いについては、現代文は「現代仮名遣い」により、古文は歴史的仮名遣いによることを原則としているが、学習の目的などからみて必要とする場合には、原文のまま用いることができることとしている。

八について

国語科においては、教科書は縦書きが慣例になつており、それに即して指導が行われている。

また、横書きについては、必要に応じて指導が行われている。

なお、横書きの場合、日本語の文字の筆順や運筆の原則に従い、左から右に書くことで指導が行われている。

これらの指導の在り方については、適切なものと考えている。

九について

児童の氏名の表記の仕方については、文部省において特に方針を示していないが、低学年の児童の発達段階からみて、平仮名で表記することに問題はないと考えている。

十について

1 国語科以外の教科においても、それぞれの指導内容とのかかわりにおいて国語の正確な読み書きの指導がなされている。

また、道徳教育は各教科を通じて行うこととしており、国語科においてもその観点から指導がなされている。

2 小学校及び中学校においては、現在、全学年を通じて書写を必修としており、毛筆については、小学校第三学年以上で必修としている。

また、高等学校においては、書道を芸術科の中の科目として位置付け、選択必修としている。

なお、昭和六十一年十月二十日に公表された教育課程審議会の中間まとめにおいて、小学校及び中学校については、書写指導を充実する観点からその内容や授業時数を見直し、高等学校については、内容の改善を図る方向が示されている。

右答弁する。

衆議院の原文

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