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山一証券等に対する日本銀行の特別融資等に関する質問主意書
衆議院 第49回 第1号
質問本文
衆議院議長 ※(注)田 中 殿
山一証券等に対する日本銀行の特別融資等に関する質問主意書
日本銀行は、去る五月二十八日夜、日本銀行法第二十五条を発動し、大蔵大臣の認可を受け、運用預りの解約増で資金繰りに苦しむ証券界に対し、関係主要銀行を通じて事実上無担保の特別融資を行なうという画期的措置を決定し、それ以来これに基づき山一証券等に対し巨額の救済融資を行なつている。
ついては、右に関し、次の諸点につき政府の見解等を承りたい。
一 日本銀行の山一証券等に対する特別融資は、山一証券等が振り出した単名手形の八掛相当額については無担保であるため、これに伴うリスクが問題であるが、もし将来回収不能となつた場合に損失帰属の最終責任は何人がこれを負担することとなるものであるか。大正十二年の震災手形特融並びに昭和二年の金融恐慌特融の例に徴するときは、当然政府が損失補償の責任を負うべきものとなるように考えられるがどうか。
二 山一証券等の再建の成否いかんによつては、日本銀行の特別融資には巨額の損失を生ずることとなるおそれがあるが、このような最終的には政府の責任となるリスクを伴うおそれがある日本銀行の特別融資について、大蔵大臣が日本銀行法第二十五条に基づいて認可を与えたことは、財政法上国庫債務負担行為に関する第十五条の規定に抵触するおそれがあると考えられるがどうか。少なくも財政法の精神に違反するおそれなしとしないと認められるがどうか。
三 七月二十一日の大蔵委員会における宇佐美日銀総裁の参考人としての陳述によれば特別融資に伴う損失処理については、政府と日本銀行との間に話し合いがあるとのことであるが、その話し合いの内容を明確に示されたい。また、右特別融資に関する日本銀行の認可申請書並びにこれに対する大蔵大臣の認可書の内容をそれぞれ提示せられたい。
四 山一証券等に対する特別融資は、信用不安の防止と信用制度の保持という大義名分に基づくものであるとはいうものの、同時に特定の証券会社に関する救済措置であることも否定できない。この意味において、これは自由主義経済の自己責任原則を無視し、かつ、憲法第十四条の国民平等の原則をじゆうりんする異例の措置であり、このことが他の企業並びに社会人心に及ぼす悪影響にははなはだしいものがあると考えられるがどうか。
五 現下の深刻な不況は、企業の優勝劣敗と弱肉強食を誘発し、そのため経済的弱者である中小企業の倒産を続出させている。
政府は、中小企業の経営難を救済する一助として、日本銀行と協議し、この際昭和二十三、四年当時実施された日銀中小企業別わく融資制度を復活し、これを現状に即するよう改善して中小企業金融を強化すべきものと考えられるがどうか。
右質問する。
政府答弁書
一 山一証券等に対する日本銀行の特別融資は、山一証券等の再建を前提として実施されているものであるが、万一貸倒損失が生じたような場合の損失は、今回の据置が、証券市場の混乱を未然に防止することによつて信用制度全体の秩序を保持するという日本銀行の任務の一つとして同行が行なつているものである点にかんがみ、直接的には日本銀行の負担とすることが適当である。
また、日本銀行条例時代に実施された日本銀行の特別融資については、特別の法律が制定され、かつ、その融資について生じた損失は、政府が補償すべき旨の規定が設けられていた事例が見受けられるのであるが、これは、当時の日本銀行が全額民間出資の株式会社組織であつたことや、現行日本銀行法第二十五条のような規定が設けられていなかつたこと等の理由によるものであつて、より一層公共性を帯びている現行法のもとでは、事情が異なるものである。
二 今回の特別融資にかかる損失は、一のとおり、直接的には日本銀行が負担するものであつて、政府の財政負担となるものではないから、この特別融資に対する大蔵大臣の認可は、財政法第十五条の規定に抵触するものではなく、また同法の精神に違反するものでもない。
三 政府と日本銀行との間の話合いの内容は、この特別融資について万一損失が生ずるような場合に備えて、日本銀行において、特別に貸倒準備金を積み立てる措置をとるというものである。
また、山一証券への特別融資が実施されるにあたつては、日本銀行から大蔵大臣に対して、「山一証券が運用預り有価証券の払戻しに応ずるなどのために必要となる資金を、富士銀行ほか二行を通じ、長期にわたり、かつ、担保適格性を欠く山一証券振出手形を担保として融資することにつき、日本銀行法第二十五条に基づいて認可申請する。」旨の申出があり、これに対して大蔵大臣は、「申請のとおり認可する。」旨の回答を行なつている。
四 今回の措置は、証券市場の不安動揺の拡大を防止することによつて、信用制度全体の維持安定を図ることを目的としたものであつて、あくまでも、特定の企業に対する救済措置としてとられたものではない。
五 政府としては、中小企業に対する金融の円滑化については、常に特段の努力を重ねてきており、今後も一層貸出金利の引下げ等の施策を推進していく所存である。しかし、主意書の中で指摘されている日本銀行の中小企業別枠融資制度は、当時、中小企業金融機関が十分に育成されていないという状況を背景として実施され、また、高率適用を免除するという点に意味があつたのであるが、今日では、中小企業に対する金融機関は、政府関係金融機関を含めて相当程度整備されてきており、また、高率適用制度も廃止され、公定歩合も相当引き下げられてきている。従つて、この制度を復活実施しても、積極的な意味をもつものとは考えられず、かつ、実際的にもあまり効果を期待し得るものとは思われない。
右答弁する。
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