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人身売買に関する質問主意書

参議院 第159回 第37号

提出者
参議院
提出日
2004年6月16日
内閣転送 2004年6月16日
答弁書受領日
2004年7月6日
提出から20日
答弁の項目数
8
質問 1,869字/答弁 2,523字

質問本文

今国会において議員立法で、女性・児童の権利に関し、「配偶者暴力防止法」、「児童買春・ポルノ禁止法」が改正された。この法律を実効あるものにするためにも外国人女性・子どもの保護は欠かせない。

六月一五日、米国政府は二〇〇四年の人身売買報告書を発表した。その中でわが国は人身売買を防ぐための法整備や被害者保護が裁定の基準を満たしていないとして、三段階評価の中間に当たる分類二に指定され、その上で、今後制裁対象となる分類三に転落する危険があるとして、監視対象国として指定された。

昨年の女性差別撤廃委員会の所見をはじめとして、わが国において人身売買とそれによる性的搾取が深刻であることが国際的に批判の対象となってきた。また、人身売買が暴力団など非合法組織の資金源になっていることも指摘されている。

今国会における、児童買春・ポルノ禁止法の改正は、児童の性的搾取の対策強化が図られたが、人身売買に対する対策についてほとんど図られていない。

このような現状は抜本的に改めなければならない。

そこで、以下質問する。

一 捜査当局、入管当局などで把握している人身売買の実態と最近の動向、人身売買の犯罪によって逮捕され又起訴された件数を国別に明らかにされたい。女子差別撤廃委員会の所見や米国政府の人身売買報告書でも指摘されている、わが国の人身売買の実態について、政府はどのように認識し、対策を行ってきているか。

二 日本において人身売買が深刻となっている理由のひとつは、本来保護されるべき人身売買の被害者を、不法滞在・不法就労によって処罰する一方、人身売買の加害者である犯罪者を刑事罰の対象としていないことである。このような法律状況では人身売買被害が減少するはずはない。人身売買を犯罪として処罰対象とする法整備を速やかに行う必要があるが、その検討状況と、法案化のめどについて明らかにされたい。

三 日本では、人身売買被害者が「被害者」として扱われるどころか不法入国・不法就労等によって処罰され、強制送還の対象とされていることが被害者救済・犯罪摘発を難しくしている要因の一つである。

1 結果として不法入国・不法就労等の実態があったとしても、そもそも人身売買被害者は犯罪被害者であり、捜査や強制送還の対象として対応すべきではないと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

2 人身売買の実行者を告訴し、証人として犯罪摘発に協力する意思を示す被害者や訴訟などによって民事上の犯罪被害救済を図る被害者については刑事・民事の法的手続の継続中は日本への在留資格を与えるべきではないか。

四 人身売買の被害者は犯罪被害者として適切に援助及び保護されるべきである。

1 人身売買被害者は犯罪被害者として適当な居所に保護され、被害者が理解できる言語によるカウンセリング及び被害者の権利に関する情報、医学的・心理的・物的援助、雇用・教育及び訓練の提供を受けられるよう対策をとるべきではないか。また、犯罪被害の民事的救済手段についての情報提供や民事法律扶助制度の適用などの支援措置を整備すべきではないか。

2 政府は婦人相談所で人身売買被害者の相談・保護などを行っているとしているが、婦人相談所における最近三年間の人身売買被害者の保護の実態について明らかにされたい。現在、婦人相談所はDVへの対応で手一杯というのが実態であり、深刻な人身売買の状況を考えれば人的・物的体制拡充が必要と考えるが政府の見解を明らかにされたい。

3 人身売買被害者を保護するための民間のシェルターは東京、横浜の二カ所だけであり、これに対して政府の支援は行われていない。政府は、このような民間の取り組みをどう評価しているか、また今後政府自身による公的シェルターの設置、民間施設への積極的な支援を行うべきではないか。

五 人身売買に関する包括的な国際約束として、国際組織犯罪防止条約の人身売買補足議定書があるが、日本政府は、未だこの議定書を批准していない。同議定書の、できるだけ早期の批准が必要と考えるが、いつ頃までに批准を行う考えか明らかにされたい。また、人身売買は国内組織と海外組織による国際的組織犯罪であり、その摘発には国際協力が欠かせない。にもかかわらず、人身売買の相手先国である東南アジア、南アメリカなどとの日本の国際刑事捜査共助に対してきわめて消極的とNGOはじめ国際的に強い批判を受けている。政府は、国際捜査共助に対する、このような姿勢を改め積極的に行っていくべきではないか。

右質問する。

参議院の原文・経過

政府答弁書

一について

都道府県警察から警察庁に対し、「トラフィッキング事案に関する報告について」(平成十二年一月三十一日付け警察庁事務連絡)等に基づき、女性又は児童に対する人身取引等の事案であるとして報告がされた事案につき、平成十二年から平成十五年までの検挙人員及び起訴人員を調査し、被疑者・被告人の国籍又はその属する地域別に整理した結果は、別表のとおりである。

全国の地方入国管理官署において本年二月一日から同月二十九日までの間(東京入国管理局においては、同年一月二十九日から同年二月二十九日までの間)に行った入国警備官による違反調査に当たり、容疑者から人身取引被害の有無等を聴取し、その結果を法務省入国管理局において集計・分析したところ、調査対象者三千五百十七名のうち人身取引の被害者に該当する可能性が高いと認められた者の数は、五十三名(タイ人三十四名、フィリピン人十六名、韓国人一名、インドネシア人一名及びコロンビア人一名)であった。

政府としては、人身取引の撲滅に向けた早急な取組が必要であると考えており、昨年十二月に犯罪対策閣僚会議が取りまとめた「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」においても、「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人、特に女性及び児童の取引を防止し、抑止し及び処罰するための議定書」(以下「人身取引議定書」という。)の締結に向け、人身取引の適正な処罰を確保できるよう、必要な検討を現在進めているところである。さらに、本年四月からは、内閣官房副長官補を議長とする「人身取引対策に関する関係省庁連絡会議」を通じるなどして関係する省庁の連携を一層緊密なものとし、人身取引の撲滅に努めている。

二について

人身取引の適正な処罰に関する所要の法律案については、可能な限り早期に国会に提出することを目指し、関係省庁が協議するなどして、必要な検討を進めているところである。

三の1について

出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)は、本邦に入国し、又は本邦から出国するすべての人の出入国の公正な管理を図ること等を目的とするものであり、同法第三条の規定に違反して本邦に入った者や、同法第十九条第一項の規定に違反して収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を専ら行っていると明らかに認められる者については、出入国の公正な管理を妨げたものとして、同法違反の罪が成立し、また、本邦からの退去を強制することができるとされているところ、捜査機関及び地方入国管理官署においては、同法に違反するに至った経緯、背景事情等を十分検討し、人身取引の被害者である者についてはその事情を考慮しながら、それぞれの手続を適切に行っているところである。

三の2について

出入国管理及び難民認定法第二十四条各号のいずれかに該当する退去強制の対象者が本邦における在留を希望した場合、法務大臣は、当該対象者が同法第五十条第一項各号のいずれかに該当するときは、在留を特別に許可することができる。

人身取引の被害者が本邦における在留を希望する場合にも、人身取引の被害者であることや御指摘の刑事・民事の法的手続の継続中といった事情を含め、諸般の事情を総合的に検討して在留を特別に許可するかどうかを判断し、特別な事情がある場合には、これを許可することとしている。

四の1について

各都道府県に設置されている婦人相談所においては、国籍を問わず、各般の問題を抱えた女性に対し、相談に応ずるとともに、必要がある場合には同所に付設する一時保護所において一時保護を行っており、人身取引の被害に関する相談を受けた場合においても、一時保護、衣食の提供、医療機関の紹介、カウンセリング、通訳の確保等を行っている。また、公共職業安定所においては、我が国において就労可能な在留資格を有しており、支援が必要であると認められる者について、職業紹介等の支援を行っているところであり、これは、人身取引の被害者の就労にも資するものと考えている。

資力が乏しい犯罪被害者については、現行の民事法律扶助事業を利用して援助を受けることが可能であり、引き続き、同事業の周知に努めてまいりたい。

四の2について

婦人相談所の一時保護所で保護した者のうち人身取引の被害が主訴であったものは、平成十三年度が一名、平成十四年度が二名、平成十五年度が六名である。

婦人相談所の体制については、相談や一時保護に適切に対応できるよう、その強化に努めているところである。具体的には、平成十四年度から、一時保護した者に対し心理的なケアを行うため一時保護所に心理療法担当職員を配置するとともに、侵入者等を防ぐため一時保護所の夜間の警備体制を強化しており、また、いつでも相談に応じられるよう、休日及び夜間における電話相談も実施しているところである。さらに、本年度からは、一時保護した者が乳幼児を連れている場合にも適切に対応できるよう、乳幼児の世話をする指導員を配置することとしたところである。

四の3について

御指摘の民間のシェルターについては、人身取引被害者を保護するため設けられているものであって、人道的見地から運営されているものと承知しており、婦人相談所等関係機関において、必要に応じ、これらとの連携を図ってまいりたい。

また、御指摘の公的なシェルターについては、これまでも婦人相談所が一時保護等を行ってきたところであり、引き続き、その活用を図ってまいりたい。

五について

人身取引議定書の締結については、可能な限り早期に国会の承認を求めることを目指して、人身取引議定書を実施するための国内法整備の要否及びその内容について、関係省庁間での検討を鋭意進めているところである。

また、国際捜査共助に関しては、我が国は、国際捜査共助法(昭和五十五年法律第六十九号)に基づき、御指摘の東南アジア、南アメリカ等の地域を含む諸外国との間で捜査共助を実施してきた実績があり、今後も、二国間の刑事共助に関する条約の締結を含め、より迅速かつ円滑な共助の実施を可能とするための検討も行ってまいりたいと考えている。

別表

参議院の原文

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