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「原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とロシア連邦政府との間の協定」に関する質問主意書

参議院 第172回 第4号お答えすることは困難 ×2趣旨が明らかではない ×1承知していない ×1

提出者
参議院
提出日
2009年9月18日
内閣転送 2009年9月18日
答弁書受領日
2009年10月1日
提出から13日
答弁の項目数
37
質問 7,199字/答弁 8,943字

質問本文

この五月に日露政府間で「原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とロシア連邦政府との間の協定」(以下、「本協定」という。)が署名された。これまでに成立している二国間(及び共同体との)原子力協定が、日中間のそれを除き、相手国からの受領を前提としていたのに対し、本協定は日本からの供給が多くなると見込んでいる。つまり本協定は、日本が原子力受領国(者)から本格的な原子力供給国(者)になるために締結される実質的に最初の協定と位置づけられ、その内容は日露間だけでなく、今後の他の国々との原子力協力のあり方にも影響してくるだろう。

原子力協定を締結する目的は、移転された核物質等の軍事的利用を相互に禁止することにあり、それを担保し確証するために保障措置が用いられる。この六月に外務省から衆議院外務委員会理事会に提出された本協定を見ると、日本から移転された核物質、設備、資材、技術、並びにそれらが係る施設のすべてに保障措置が適用される取極めとはなっていない。日本の原子力基本法は「原子力の研究、開発及び利用は、平和の目的に限り」認めている。日本が海外と原子力協力を行うにあたっては、その相手国が「核兵器国」であると「非核兵器国」であるとを問わず、協力の対象がすべて保障措置下に置かれるよう、原子力協定において規定されるべきで、さもなければ協定は批准されるべきではない。

これは新たに締結されうる他の原子力協定や既存の協定の改正ともかかわることから、きわめて重要である。とくに相手国が「核兵器国」である場合、核拡散防止条約(NPT)では「核兵器国」による保障措置の受け入れは「自発的」とされているからこそ、二国間協定において同措置の適用を確保すべきである。

日本国政府は日本の原子力産業の国際展開を後押ししている。今後、原子力協力が増大すると見込むのであれば、輸出入や協力を許可するうえでの普遍的な条件を規定した法令を制定すべきだろう。

本協定は両国間の原子力協力だけでなく、日本の原子力行政や原子力産業、さらには世界の核軍縮や核拡散防止の今後のあり方とも関係し、多方面からの慎重な審議が求められる。検討を深めるために、本協定に対する疑問点並びに関連事項について、以下、質問する。

一 日本の原子力基本法は、その総則において、「原子力の研究、開発及び利用は、平和の目的に限り」行うものと定めている。日本国政府は同法にのっとり、他国との原子力協力にあたり、日本から移転されたすべての核物質、資材、設備、技術、ならびにそれらに係るすべての施設が平和的目的のために使用されることを担保し確証するための措置を講じる責務を負うとの理解でよいか。

二 本協定の批准・発効について

1 第三条は協力の要件として、『ロシア連邦に関する保障措置協定に規定する保障措置の適用上国際原子力機関が選択している一又は二以上の施設が存在すること』と定めている。しかし現状ではロシア連邦内にIAEAの保障措置が適用されている施設はないと聞いている。したがって、そうした施設が附属書BのA部に掲げられるまでは、本協定は批准・発効されないとの理解でよいか。そうした施設が存在しなくとも、本協定の批准・発効は可能なのか。

2 本協定が批准・発効するまでは、「原子力の平和的利用の分野における協力に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定」(一九九一年締結)の枠組みを超える協力は、日本国政府の所轄官庁によって許可されないし、実施されないとの理解でよいか。

3 現在の本協定が、外交防衛委員会など国会で審議されることになるのか。それとも本協定に修正が加えられた案や、この五月以降に交わされた交換公文(案)が上程されることもありうるのか。

三 本協定第二条と第四条について

1 第二条が定める日露間の協力は、ウラン探査・採掘から廃棄物処分まで多肢にわたる。第四条は『この協定に基づいて移転された核物質、資材、設備及び技術、技術に基づく設備並びに回収され又は副産物として生産された核物質は、いかなる核爆発装置のためにも、いかなる核爆発装置の研究又は開発のためにも、またいかなる軍事的目的のためにも使用されない』と定めている。

(一) 第四条を確証するには、協力の対象となったすべての核物質、資材、設備及び技術、技術に基づく設備並びに回収され又は副産物として生産された核物質、それらが係わる施設が保障措置下になければならないと考えるがいかがか。

(二) 保障措置が適用されていることが確認できている核物質と資機材等と、それらが係わる施設だけが、協力の対象となるのか。

2 第二条2(6)は、同(1)から(5)に規定する分野以外での協力は、『別個の書面による取極において合意する』と定めている。

(一) 他の条項にも共通するが、『書面による取極』でいう『書面』とは交換公文によってか、あるいは別の何かか。

(二) こうした『書面による取極』は、外交防衛委員会など国会での審議を経ることなく、閣議決定により承認されるのか。

(三) 現状では、当面の協力のひとつは、ロシアによるウラン濃縮役務の提供と考えられる。ウラン濃縮役務の提供について取極めた『書面』(案)はあるのか。ある場合、その件名と概要を示されたい。

四 本協定第三条と第五条、並びに交換公文(案)について

1 第三条(2)は、ロシア連邦が受領者となる場合、『ロシア連邦に関する保障措置協定に規定する保障措置の適用上国際原子力機関が選択している一又は二以上の施設が存在すること』とし、第五条(2)は、この協定に基づいて移転された核物質及び回収され又は副産物として生産された核物質は、ロシア連邦においては『原則として、ロシア連邦に関する保障措置協定に規定する保障措置の適用上国際原子力機関が選択している施設に置くものとする』とし、そうした施設を附属書BのA部に掲げるとしている。そして補助的措置として、両国政府が『書面により合意するものが適用されることを条件として、当該保障措置の適用上適格性を有するが国際原子力機関が選択していない施設に置くことができる』とし、そうした施設を付属書BのB部に掲げるとしている。しかし付属書BのA部に記載された施設はなく、同B部には「アンガルスク国際ウラン濃縮センター」しか掲げられていない。ここでいう、「適格性を有する施設」とはロシアが保障措置を受け入れる用意がある施設としてIAEAに自発的にオファーした「適格施設」、「国際機関が選択している施設」とは「選択施設」であると理解している。

(一) 「適格施設」は本協定のなかで重要な意味をもつことから、日本国政府はこれまでのロシア連邦政府との交渉のなかで、ロシア側が既にIAEAにオファーしている施設を把握していて当然である。それらの施設名を、すべてあげられたい。

(二) 保障措置が適用されることになった施設で、本協定の対象となる施設は、今後、付属書BのA部に記載されていくとの理解でよいか。それは交換公文によってか、あるいは毎年、ロシア側から提供される報告書によってか、あるいはどのような手続きによってなされるのか。

(三) 日本から移転された技術と核物質、あるいは第三国を経由して移転された核物質を扱えるのは、付属書Bの施設一覧表に記載された「選択施設」と「適格施設」だけとの理解でよいか。

(四) 本協定に基づき移転が実施されるのは、附属書BのA部に当該施設が記載されて以降であり、その前は実施されないとの理解でよいか。

(五) 「適格施設」とは、要するに保障措置が適用されていない施設である。第三条と第五条によれば、「選択施設」が一施設でもあれば、あとは補助的措置を適用できることになる。これでは半ば「ザル」のようなものであり、平和的な利用を確証できないと考えるがいかがか。

2 交換公文(案)3(2)は、補助的措置について『核物質が協定の適用を受けることとなり、かつ国際原子力機関による保障措置の適用上適格性を有するが国際原子力機関が選択していない施設に置かれることとなる場合』には、『双方が満足する措置(保障措置の適用上国際原子力機関が選択している施設にある同量の核物質であって核分裂性同位元素の含有量が同等以上のものによる代替を含む。)につき書面により合意する』と定めている。

(一) 「選択施設」にある『核分裂性同位元素の含有量が同等以上のものによる代替』とは、「適格施設」に置かれている核物質の代替として、「選択施設」に置かれている核物質に保障措置を適用するとの理解でよいか。その場合、日本に製品として輸入される核物質は、「選択施設」で作業されたものか、それとも「適格施設」で作業されたものか。

(二) 補助的措置によって当該核物質を「適格施設」に置くことについて、日本国政府が合意する場合の基準を明らかにされたい。

3 現行の米国との原子力協定は、第二条2(b)において、米国の領域内で米国の『管理の下で行われるすべての非軍事的原子力活動に係るすべての核物質について機関(IAEA)による保障措置が適用されること』と定め、そうでない場合についての補助的措置を、同協定第九条1(b)(ⅱ)ならびに2、実施取極9ならびに10において定めている。

(一) ロシア連邦政府はIAEAと追加議定書を含む保証措置協定を締結しているが、現在、同連邦の『管理の下で行われるすべての非軍事的原子力活動に係るすべての核物質について機関(IAEA)による保障措置が適用』されているのか。

(二) 日米原子力協定をはじめ、日中原子力協定、日仏原子力協定、日英原子力協定も、それぞれ等価の核物質による代替を含む補助的措置を定めている。日本国政府は、米国、中国、フランス、英国に日本から移転された核物質に対し、過去、こうした補助的措置の実施に合意したことはあるのか。ある場合、そのすべてについて、合意文書の件名と概要を示されたい。

4 現行の米国との原子力協定(一九八七年締結)は、第九条2ならびに実施取極10において、IAEAによる保障措置が適用されないとき又は適用しないであろうことを知った場合には、措置が適用されない施設の審査、操作記録などの報告書の提出、IAEA又は他方の当事国政府による査察等を含む保障措置と同等の効果と適用範囲による是正措置をとると定めている。また日本とユーラトムとの間の原子力協定の第八条3においても是正措置をとることが定められている。本協定においても、保障措置が適用されない場合の暫定措置が定められて然るべきであると考えるがいかがか。また本協定に、是正措置が盛り込まれなかったのは、いかなる事由によるものか。

五 本協定第八条について

1 日本から移転された核物質、資材、設備及び技術、技術に基づく設備並びに回収され又は副産物として生産された核物質が、IAEAの保障措置が適用されない「適格施設」に置かれた場合、第三国(たとえばロシアが原子力協力を行っているインドやイランなど)に移転されないことを、どのように担保し、それを確証するのか、具体的に述べられたい。

2 日本から移転された核物質、資材、設備及び技術、技術に基づく設備並びに回収され又は副産物として生産された核物質が再移転される場合、当該受領国が保障措置を適用していること、あるいは日本との間で原子力協定が発効していることなど、少なくとも日本とユーラトムの間の原子力協定第九条と同付属書Bに掲げられている諸条件が、本協定のなかでも定められる必要があると考えるがいかがか。

六 本協定第九条並びに第十条について

1 英仏に保管されている日本の電力会社所有の回収ウランを、ロシア連邦領域内の施設に再移転するにあたっては、日米原子力協定、日加原子力協定、日豪原子力協定、日本とユーラトムの間の原子力協定に基づき、当該締約国(者)の事前同意が必要となるとの理解でよいか。回収ウランの再移転に対し、事前同意が必要ではない場合、それを規定した協定の条項、文書等の件名と概要を、当該締約国(者)すべてについて示されたい。

2 日米両国政府で合意された協定の実施取極めは、日本から移転された使用済み核燃料が再処理された当該第三国においては回収ウランが再濃縮できることを確認している。回収ウランをロシア連邦内の施設で再濃縮する場合、新たな合意が米国と日本の間で必要となるとの理解でよいか。

3 回収ウランの再移転に対し、すでに事前同意(包括的同意を含む)が得られている場合、すべての締約国(者)との間で交わされた同意のための文書の件名と概要を示されたい。

4 日本とユーラトムの間の原子力協定はその附属書B(ⅲ)において、『核物質が再移転される場合には、受領国である第三国において当該核物質について国際原子力機関による保障措置の適用があること』と定めている。したがって本協定ならびに交換公文(案)に定められている条件のもとで、英仏からロシア連邦へ回収ウランを再移転できるのは、ロシア連邦内の「選択施設」だけとの理解でよいか。『書面』での合意があれば、「適格施設」へも再移転できるのか。

七 本協定第十一条2は『転換、燃料加工、濃縮又は再処理の工程において他の核物質と混合されることにより、この協定の適用を受ける核物質の特定性が失われた場合又は失われたと認める場合』の取極を定めている。

1 日本からロシア連邦領域内の「選択施設」以外に移転された核物質が、他の核物質と混合された場合、それが軍事的目的に使用されないこと、ならびに第三国に移転されないことを、日本国政府はどのように確証するのか明らかにされたい。

2 混合は核物質の特定性が失われることから、本来、発生してはならないものである。日本から移転された核物質が他の核物質と混合され、それが軍事的目的に使用された場合、日本の原子力基本法が定めるところに抵触すると考えるがいかがか。本条項で定める『代替可能性の原則及び構成比率の原則』による特定は、日本から移転された核物質が混合した核物質が「平和的目的のために」使用される場合においてのみ適用が認められるものとし、それを確証する方法(保障措置)がない場合は、混合の発生を禁止する条項が必要であると考えるがいかがか。

八 原子力基本法や原子炉等規制法においては、原子力資材、設備、技術、核物質の輸出(移転)や他国との原子力協力について、具体的な規定がない。

1 規定がないのは、これらの法が成立した当時、日本からの原子力輸出が想定されていなかったことによるものか。そうでない場合、いかなる事由によるものか明らかにされたい。

2 日本国政府は原子力輸出の推進を国の方針として掲げている。他国との原子力協力、とくに日本からの原子力輸出にあたっては、相手国が「核兵器国」であると「非核兵器国」であるとを問わず、「3S」――保障措置、原子力安全および核セキュリティ――が確証されること、少なくとも核拡散防止条約(NPT)、包括的核実験禁止条約(CTBT)、国際原子力機関(IAEA)との追加議定書を発効させていること、そして日本から移転されるすべての核物質、資材、設備、技術、並びにそれらが係るすべての施設が保障措置下にあることを条件とすべきで、それを規定する法令を制定する必要があると考えるがいかがか。

3 原子力関連品目の輸出入に必要な届出、申請、許認可等の手続きは何か。その際、「3S」については、どのように審査されるのか。

4 日本の電力会社や商社等は、少なくとも過去十年にわたり、ロシア連邦内の保障措置下にない軍事施設(または軍民両用の施設)で濃縮されたウランを購入している。日本国政府が、保障措置による担保のない、特殊核分裂性物質の商取引を許可している根拠は何か。

5 4に関連し、現行のロシア(ソヴィエト)連邦政府との原子力協定(一九九一年締結)では、濃縮ウランの商取引は、その第一条で規定される『両国政府が合意するその他の分野』にあたる。両国政府の合意を示す文書の件名と概要を示されたい。

6 4に関連し、日本が調達したウランをロシア連邦内の施設で濃縮した結果、劣化ウランが貯まっているはずである。現状では、この劣化ウランは保障措置下にないとの理解でよいか。また、この劣化ウランは、日本の電力会社からロシアに譲渡されたのか。劣化ウランの譲渡にあたっては、日本の所轄官庁による許認可のための届出や申請が必要なのか。同じく譲渡にあたっては、日本国政府とロシア連邦政府との間で合意が必要となるのか。

7 日本の電力会社などが原料ウランを購入している産出国のうち、日本と原子力協定が発効していない国があるが、それが必要とされない理由を述べられたい。

8 濃縮ウランの供給は、長期契約の場合、供給先の事業者を管轄する相手国と原子力協定が締結されていることが必要で、スポット契約では必要ではないとされるのは、いかなる理由によるものか。

9 日本の事業者が海外の事業者と濃縮ウランの長期供給を契約するとき、日本と当該事業者を管轄する相手国との間で原子力協定が発効している必要はないのか。必要がない場合、それはいかなる理由によるものか。

10 日本の事業者が海外の事業者と濃縮ウランの供給を契約するにあたっては、日本国政府に許認可のための申請と届出が義務づけられているのか。義務付けられている場合、所轄官庁はどこか。

右質問する。

参議院の原文・経過

政府答弁書

一について

原子力基本法(昭和三十年法律第百八十六号)第二条の規定は、我が国における原子力の研究、開発及び利用は平和の目的に限り行うとの基本方針を明らかにしており、我が国は、外国との間で原子力の平和的利用に関する協力を行う場合にも、当該基本方針を踏まえて行うこととしている。このため、我が国から原子炉等の原子力資機材等及びその関連技術の移転を行う場合には、これらの平和的利用について、二国間原子力協定等により相手国から保証を取り付けることとしている。また、平和的利用を確保するため、国際原子力機関(以下「IAEA」という。)による保障措置等の措置をとることを求めている。

二の1について

本年五月十二日に署名された原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とロシア連邦政府との間の協定(以下「日露原子力協定」という。)第三条の規定は、核物質、資材、設備及び技術の供給による協力に関し、ロシア政府又はその認められた者が受領者となる場合には、二千年三月二十二日に作成された追加議定書により補足された千九百八十五年二月二十一日に作成されたソヴィエト社会主義共和国連邦における保障措置の適用に関するソヴィエト社会主義共和国連邦と国際原子力機関との間の協定(以下「ロシアとIAEAとの間の保障措置協定」という。)に規定する保障措置の適用上IAEAが選択している一又は二以上の施設(以下「選択施設」という。)が存在することを協力の要件として定めている。政府としては、この要件が満たされない段階で、日露原子力協定を国会に提出し、その締結について承認を求める予定はない。

二の2について

原子力の平和的利用の分野における協力に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定(千九百九十一年四月十八日締結。以下「日ソ協定」という。)は、原子力発電所の活動における安全性等の分野における情報の交換等の方法で行う協力について定めたものである。我が国からロシアに対して原子炉等の原子力資機材等及びその関連技術の移転を行うためには、平和的利用についてロシア政府から法的な保証を取り付ける必要があり、日露原子力協定は、その法的な枠組みとして作成されたものである。したがって、原子炉等の原子力資機材等及びその関連技術の移転に係る協力は、日露原子力協定が発効するまで実施されない。

二の3について

政府としては、日露原子力協定の締結について国会の承認を求めるために、日露原子力協定を国会に提出する際には、二の1についてでお答えした方針によることとしており、日露原子力協定附属書BのA部に選択施設を掲げた上で提出する予定である。なお、日露原子力協定の署名に際し、日露原子力協定第五条の実施に関する交換公文が作成されている。日露原子力協定を国会に提出する際には、参考として、同交換公文を併せて国会に提出する予定である。

三の1の(一)について

日露原子力協定第五条の規定は、日露原子力協定に基づいて移転された核物質等を平和的非爆発目的のみに利用する義務の履行を確保するため、IAEAの保障措置の適用等について定めている。核兵器の不拡散に関する条約(昭和五十一年条約第六号)の適用上、締約国である核兵器国については、IAEAの保障措置の受諾を義務付けられていない。また、ロシアにおいては、他の核兵器国と同様に、IAEAの保障措置の適用上適格性を有する施設(以下「適格施設」という。)のすべてにおいて保障措置が適用されているわけではない。これらの事情を勘案し、日露原子力協定第五条(2)の規定は、日露原子力協定に基づいて移転された核物質等を、ロシアにおいては、原則として選択施設に置くものとしつつ、これらの核物質等にIAEAの保障措置が適用されない場合にも平和的利用を適切に担保するため、補助的措置の適用を条件として、選択施設ではない適格施設に置くことができることとしている。政府としては、補助的措置の適用を条件とすることは、国際的な慣行と比較しても厳格な対応であると認識している。

三の1の(二)について

日露原子力協定に基づいて移転された核物質等は、日露原子力協定第五条及び同条の実施に関する交換公文3に規定する補助的措置が適用されることを条件として、選択施設ではない適格施設に置くことが可能である。

三の2の(一)について

御指摘の「書面」については、交換公文や口上書の交換といった形式を想定している。

三の2の(二)について

御指摘の「書面」は多岐にわたるため一概にお答えすることは困難であるが、日露原子力協定第二条2(6)に規定する「書面による取極」については、国会の承認を得る必要はなく、閣議決定によることになる。

三の2の(三)について

ウラン濃縮役務に係る協力は、日露原子力協定第二条2(2)に規定する軽水炉の設計、建設及び運転の分野における協力であり、かかる役務の提供については同条1(4)に規定していることから、書面による取極によらず実施し得るものである。

四の1の(一)について

ロシアにおける適格施設については、ロシア政府が公表していないため、お答えすることは差し控えたい。

四の1の(二)について

御指摘の施設は、今後、日露原子力協定附属書BのA部に記載されることとなる。ロシア政府は、日露原子力協定第五条の実施に関する交換公文3(1)の規定に従って我が国政府に選択施設等の一覧表を毎年提供することとなるため、これに基づき必要に応じ、日露原子力協定第十七条の規定に従って同附属書BのA部を改正する予定である。

四の1の(三)について

御指摘のとおり、我が国から移転される核物質(第三国を経由して移転された核物質を含む。)及び技術を置くことができる施設は、日露原子力協定附属書Bに記載された選択施設と適格施設のみである。

四の1の(四)について

御指摘のとおり、日露原子力協定に基づき核物質等の移転が行われるのは、日露原子力協定附属書BのA部に施設が記載され、日露原子力協定が発効した後である。

四の1の(五)について

日露原子力協定第五条の規定は、日露原子力協定に基づいて移転された核物質等を平和的非爆発目的のみに利用する義務の履行を確保するため、IAEAの保障措置の適用等について定めている。核兵器の不拡散に関する条約の適用上、締約国である核兵器国については、IAEAの保障措置の受諾を義務付けられていない。また、ロシアにおいては、他の核兵器国と同様に、適格施設のすべてにおいて保障措置が適用されているわけではない。これらの事情を勘案し、日露原子力協定第五条(2)の規定は、日露原子力協定に基づいて移転された核物質等を、ロシアにおいては、原則として選択施設に置くものとしつつ、これらの核物質等にIAEAの保障措置が適用されない場合にも平和的利用を適切に担保するため、補助的措置の適用を条件として、選択施設ではない適格施設に置くことができることとしている。

日露原子力協定第五条及び同条の実施に関する交換公文3に規定する補助的措置の適用を条件とすることは、国際的な慣行と比較しても厳格な対応であると認識しており、また、第五条を始め日露原子力協定の関連規定の遵守が確保されない場合には、我が国は、日露原子力協定第十五条1の規定に基づき、日露原子力協定を終了させる等の権利を有することとなる。

したがって、日露原子力協定は、平和的利用が確保される仕組みとなっているものと考える。

四の2の(一)について

適格施設に置かれている核物質の代替とは、同量の核物質であって核分裂性同位元素の含有量が同等以上のものを選択施設に置くことにより、適格施設に置かれている核物質と同量同等以上の核物質にIAEAの保障措置が適用されることを意味する。

御指摘の事例において、我が国に製品として輸入される核物質が日露原子力協定に基づいて移転された核物質等に由来するものである場合には、これらの核物質は、ロシアにおいて、選択施設又は適格施設のいずれかにおいて作業が行われたものということとなる。

四の2の(二)について

日露原子力協定第五条の実施に関する交換公文3(2)に規定する代替を含め、同交換公文3に規定する補助的措置に係る両締約国政府による了解が適切に実施されることが必要であると考えている。

四の3の(一)について

現在、ロシア政府の管理の下で行われるすべての非軍事的原子力活動に係るすべての核物質についてIAEAの保障措置が適用されているわけではないと承知している。

四の3の(二)について

御指摘の各国との原子力協定については、協定の締結後長期間にわたる運用が行われていることから、その間に実施された代替を含む補助的措置の実施について網羅的にお答えすることは困難であるが、主な例としては次のものが挙げられる。

米国との間では、我が国の大学の研究用原子炉で使用された使用済燃料を米国の施設に返送した際に、フランスとの間では、我が国の原子力発電所で使用された使用済燃料をフランスで再処理して抽出した核物質を我が国の原子力発電所で使用する燃料用に加工する目的でフランスの燃料加工工場に移転した際に、英国との間では、我が国の原子力発電所で使用する目的で英国から我が国に移転された燃料を英国の施設に返送した際に、また、中国との間では、我が国の原子力資機材を中国の施設に移転した際に、それぞれ、補助的措置を実施することとした。

これらに係る補助的措置の内容は、いずれも、我が国と米国、フランス、英国及び中国との間の協定及びこれらの協定に係る合意された議事録又は交換公文において定められており、口上書の交換や在庫目録の提出により確認することになっている。

四の4について

我が国としては、ロシアとの間で原子炉等の原子力資機材等及びその関連技術の移転を伴う協力を実施する場合には、ロシア政府がIAEAの保障措置の適用を受諾していることが必要であると考えており、ロシア政府がIAEAの保障措置の適用を拒否する場合を想定するような是正措置に係る規定を設けることは不適切と考えている。ロシア政府がロシアとIAEAとの間の保障措置協定を終了させ、又はこれに対する重大な違反を行う等により、IAEAの保障措置が適用されなくなる場合には、我が国としては、日露原子力協定第十五条1の規定に基づき、その後の協力を停止し、又は、日露原子力協定を終了させ、及び日露原子力協定に基づいて移転された核物質等の返還を要求する権利を有することとなる。

五の1について

日露原子力協定第八条の規定は、日露原子力協定に基づいて移転された核物質等は、供給締約国政府の書面による事前の同意が得られる場合を除くほか、受領締約国政府の国の管轄の外に移転され、又は再移転されないとしており、御指摘のような移転をロシアが我が国の同意を得ずして行うことは日露原子力協定上想定されてない。また、三の1の(一)についてで述べたとおり、核物質等が適格施設に置かれる場合にも、日露原子力協定第五条の実施に関する交換公文1に規定する在庫目録に記載されることから、我が国としては、これらの核物質等がロシアの管轄の下で管理されていることを確認することが可能である。在庫目録の内容については、同交換公文3(4)の規定に基づき、我が国の要請によって協議を行うことが可能であり、第五条や第八条を始め日露原子力協定の関連規定の遵守が確保されない場合には、我が国は、日露原子力協定第十五条1の規定に基づき、日露原子力協定を終了させる等の権利を有することとなる。

五の2について

五の1についてで述べたとおり、日露原子力協定第八条の規定により、日露原子力協定に基づいて移転された核物質等は、供給締約国政府の書面による事前の同意が得られる場合を除くほか、受領締約国政府の国の管轄の外に移転され、又は再移転されないとしている。我が国としては、他の主要な原子力先進国と同様に、直接であると第三国を経由してであるとを問わず、核物質等の移転を行うためには、移転先国との間で二国間原子力協定を締結して平和的非爆発的利用等について保証を取り付けることが必要との考えであるところ、我が国から移転された核物質等がロシアから第三国に再移転されることが検討される場合には、我が国と当該第三国との間の二国間原子力協定の有無も考慮した上で、供給締約国政府として事前に同意するか否かを決定することとなる。いずれにせよ、日露原子力協定の運用に際しては、原子力の平和的利用に関する協力のための日本国政府と欧州原子力共同体との間の協定(平成十八年条約第十四号。以下「日ユーラトム原子力協定」という。)第九条及び附属書Bに規定するような諸条件が満たされることなく核物質等の再移転が行われることに同意することは考えていない。

六の1について

現在、英国及びフランスに保管されている回収ウランは、原子力の平和的利用に関する協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定(昭和六十三年条約第五号。以下「日米原子力協定」という。)及び原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とオーストラリア政府との間の協定(昭和五十七年条約第十三号。以下「日豪原子力協定」という。)の下においては、受領国政府の領域的管轄の外に移転されていることから、日米原子力協定第二条4(a)及び日豪原子力協定第二条4の規定に従い、これらの協定の適用対象ではなくなっている。したがって、ロシア管轄内の施設に再移転される際、日米原子力協定及び日豪原子力協定に基づき米国政府及びオーストラリア政府の事前の同意が必要とされることはない。

原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とカナダ政府との間の協定を改正する議定書(昭和五十五年条約第二十六号)によって改正された原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とカナダ政府との間の協定(昭和三十五年条約第八号)(以下「日加原子力協定」という。)についても、日加原子力協定の適用対象である核物質等が日加原子力協定の下において受領国政府の領域的管轄の外に移転された場合においては、当該核物質等は、日米原子力協定及び日豪原子力協定の場合と同様に、日加原子力協定の適用対象ではなくなるものと解釈され、日加両政府間でそのように運用されている。したがって、当該回収ウランがロシア管轄内の施設に再移転される際、日加原子力協定に基づきカナダ政府の事前の同意が必要とされることはない。

日ユーラトム原子力協定第九条1の規定は、日ユーラトム原子力協定に基づいて移転された核物質等は、日ユーラトム原子力協定附属書Bに定める条件が満たされることについての保証を受領締約者が適切な方法によって得る場合には再移転することができる、ただし、このような保証が得られない場合には、供給締約者の書面による事前の同意が必要となる旨を定めているため、当該回収ウランをロシア管轄内の施設に再移転するに当たり、ロシア政府から当該条件を満たす保証を受領締約者たるユーラトムが取り付けることができる場合には、供給締約者たる我が国政府の事前の同意は必要とされない。

六の2について

現在、英国及びフランスに保管されている回収ウランは、我が国の領域的管轄の外に移転された時点で、日米原子力協定第二条4(a)の規定に従い、日米原子力協定の適用対象ではなくなっていることから、当該回収ウランをロシア管轄内の施設で再濃縮することについて、我が国と米国との間で新たな合意が必要とされることはない。

六の3について

御質問の趣旨が必ずしも明らかではないが、回収ウランの再移転に対し、我が国がユーラトム、英国又はフランスに対し事前に同意したとの事実はない。

六の4について

日ユーラトム原子力協定第九条1の規定は、日ユーラトム原子力協定に基づいて移転された核物質等は、日ユーラトム原子力協定附属書Bに定める条件が満たされることについての保証を受領締約者が適切な方法によって得る場合には再移転することができる、ただし、このような保証が得られない場合には、供給締約者の書面による事前の同意が必要となる旨を定めている。したがって、供給締約者たる我が国の書面による事前の同意があれば、御指摘の回収ウランをロシア内の適格施設に移転することは可能である。

七の1について

転換、燃料加工、濃縮又は再処理の工程において、特定の核物質と他の核物質とを混合することは、国際的に広く行われている慣行である。混合された核物質については、どの部分が我が国から移転された核物質で、どの部分が我が国以外の国から移転された核物質であるかを特定することは不可能である。日露原子力協定第十一条2に規定する「代替可能性の原則及び構成比率による比例の原則」は、混合される前の比率と同じ比率で混合後の核物質を我が国と他国との間で配分し、管理することによって我が国から移転された核物質を特定するためのものであり、このようにして特定された核物質は、日露原子力協定第五条の実施に関する交換公文1に規定する在庫目録に記載され、管理されることになる。この結果、当該特定された核物質については、日露原子力協定第四条の規定により、いかなる軍事的目的にも使用されず、また、日露原子力協定第八条の規定により、我が国政府の書面による事前の同意が得られる場合を除くほか、ロシアの管轄外に移転されないことが確保されることとなる。

七の2について

混合された核物質について「代替可能性の原則及び構成比率による比例の原則」によって対応することは、我が国が当事国でない二国間原子力協定においても広く認められている規定である。政府としては、「代替可能性の原則及び構成比率による比例の原則」に基づき特定された核物質について、七の1についてで述べたような管理が行われる場合には、そのような管理は、外国との間で原子力の平和的利用に関する協力を行う場合に原子力基本法の基本方針を踏まえるとの一についてで述べた考えに合致したものであると考えている。したがって、御指摘のような条項が必要であるとは考えていない。

八の1について

お尋ねの事項のうち、核原料物質及び核燃料物質の輸出並びに原子力技術の国外流出に係る契約の締結等については、原子力基本法制定時において、それぞれ別の法律で定める旨が規定されている。また、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)の制定時においては、核燃料物質の輸出入について、外国為替及び外国貿易法(昭和二十四年法律第二百二十八号)等によって規制することが想定されていた。

八の2について

我が国は、原子炉等の原子力資機材等を輸出するに当たっては、二国間原子力協定を締結することにより、平和的利用等に関し、輸出先国より保証を取り付け、また、二国間原子力協定の作成に際しては、輸出先国において、御指摘のいわゆる「3S」が確保されることも考慮して行うことを通じて必要な対応をしてきていると考えている。

八の3について

原子炉等の原子力資機材等の輸出入に必要な届出、申請、許認可等については、外国為替及び外国貿易法及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律に基づき必要な手続がとられている。御指摘のいわゆる「3S」については、輸出先国との二国間原子力協定を考慮し、国内法令上の必要な手続がとられている。

八の4について

我が国事業者が海外の事業者から濃縮ウランを購入することについては、我が国政府の許認可の取得は必要とされていない。

八の5について

日ソ協定第一条(e)に規定する「両政府が合意するその他の分野」として、御指摘の濃縮ウランの供給について合意した事実はない。我が国は、ある供給国が核物質、資機材又は技術を移転する際の、移転先国における平和的利用等の確保のための措置については、一義的には当該供給国が判断すべきものであると考えており、我が国も参加している原子力供給国グループのガイドラインでもこのような考え方が示されているところ、我が国事業者による濃縮ウランの購入については、これまで、濃縮ウランの供給国たるロシア政府から、我が国との間でこのような措置が必要との考えが示されたことはない。

八の6について

我が国からロシアに核物質を移転した実績はなく、我が国からロシアに移転された核物質の濃縮により劣化ウランが生じることはない。我が国以外からロシアに移転された核物質の濃縮により生じ得る劣化ウランについては、我が国政府による国際約束上の措置の対象ではなく、また、国内法令上も許認可の対象ではないので、我が国政府として承知する立場にない。したがって、お尋ねの保障措置との関係及び譲渡の有無についても承知していない。

八の7について

お尋ねの我が国事業者による原料ウランの購入について、二国間原子力協定の締結を必要とするかどうかについては、八の5についてで述べた考え方に照らし、一義的には供給国による判断にゆだねられるべきものである。

八の8について

長期契約とスポット契約の間で御指摘のように相違があるということはない。

八の9について

お尋ねの濃縮ウランの長期供給契約の場合を含め、我が国から核物質、資機材又は技術の移転がない場合には、二国間原子力協定の締結を必要とするかどうかについては、八の5についてで述べた考え方に照らし、一義的には供給国による判断にゆだねられるべきものである。

八の10について

我が国事業者が海外の事業者と濃縮ウランの供給を契約することについては、我が国政府に対し許認可のために申請と届出を行うことは必要とされていない。

参議院の原文

この答弁書に出てくる定型句

お答えすることは困難 ×2趣旨が明らかではない ×1承知していない ×1

語の一致で数えたものです。答弁の評価ではありません。同じ型の答弁が過去にどれだけあるかは、型を押すと出ます。

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