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国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約に関する質問主意書

参議院 第193回 第104号

提出者
参議院
提出日
2017年5月9日
内閣転送 2017年5月15日
答弁書受領日
2017年5月19日
提出から10日
答弁の項目数
3
質問 1,757字/答弁 1,947字

質問本文

一 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(以下「本条約」という。)第五条は、重大な犯罪を行うことを目的とする組織的な犯罪集団への参加か、すべての重大な犯罪の共謀の少なくとも一方を犯罪化することを加盟国に義務づけている。日本は、本条約の交渉過程では、共謀罪の制定に反対し、すべての重大な犯罪の共謀を犯罪とすることは国内法の原則と相容れない旨の意見を述べていたのではないか。

二 本条約第五条(草案段階では第三条。以下同じ。)に関して、第二回アドホック委員会(国際組織犯罪防止条約起草のための政府間特別委員会)において、英国が草案第二案を説明したところ、日本は理由を付した正式文書の体裁で、この英国案に対する修正案を次のように提案した。

「第3条 犯罪的組織への参加

締約国は、次の行為を犯罪としなければならない。

(a) 組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪の実行を組織し、指示し、幇助し、教唆し、もしくは援助しまたはこれについて相談すること。そして、国内法の基本原則に従うこと。

(b) 次の犯罪行為の未遂または既遂に含まれるものとは別個に成立する少なくとも一つの犯罪。

(ⅰ) 金銭的利益その他の物質的利益を得ることに直接又は間接に関連する目的のため組織犯罪集団の関与する重大な犯罪を行うことを一又は二以上の者と合意すること。ただし、国内法上求められるときは、その合意の参加者の一人による当該合意の内容を推進するための行為を伴うもの。

(ⅱ) 組織的な犯罪集団の目的及び一般的な犯罪活動又は特定の犯罪を行う意図を認識しながら、故意に次の活動に積極的に参加する個人の行為

a 本条約第2条bisにおいて言及された組織的な犯罪集団の活動

b 組織的な犯罪集団のその他の活動であって、当該個人が、自己の参加が犯罪の目的の達成に寄与することを知っているもの

(ⅲ) 重大犯罪を実行することを目的とする組織犯罪集団の行為に参加することであって、当該行為に自ら参加することがその犯罪の成就に貢献することを認識しているもの」

また、この修正案には、以下のような理由も付されている。

「日本の国内法の原則では、犯罪は既遂か未遂段階に至って初めて処罰されるのであり、共謀や参加については、特に重大な犯罪に限定して処罰される。したがって、すべての重大な犯罪について、共謀罪や参加罪を導入することは日本の法原則になじまない」「それゆえ、参加行為の犯罪化を実現するためには、国内法制度の基本原則の範囲内で実現するほかない」。

この修正案及び修正案に付された理由(以下「修正案等」という。)を踏まえると、日本は本条約の交渉過程において、参加する行為がその犯罪行為の成就に貢献することを認識しつつなされたものであることを要件とする、新しい類型の参加罪の規定を設けるよう提案したということでよろしいか。

三 本条約第五条に関して、二〇〇〇年一月十七日から二十八日まで第七回アドホック委員会が行われた。

この期間中、日本、米国、カナダの間で非公式協議が行われ、詳しい報告書が作成されている。その報告書を開示し、非公式協議の内容を明らかにされたい。

四 前記二のように、本条約の交渉過程で日本が提出した第五条に係る修正案等からは、日本が、共謀罪は日本の法制度の基本原則にはなじまず、国内法に共謀罪を創設することは不可能と考えていたことが明確である。このように、共謀罪の創設に対して慎重な姿勢をとっていた日本が、なぜ、国内での立法事実もないのに、対象犯罪が広範な共謀罪(テロ等準備罪)を創設する法案を提出するに至ったのか。

五 最終的には本条約に規定されなかったが、本条約に重大な犯罪のリストを記載すべきであるとの意見が、本条約とりまとめの最終局面を迎えた第十回アドホック委員会でも繰り返されていた。しかし、このリストにはテロ行為が含まれていたため、カナダ、フランスは、本条約はテロ対策のための条約ではないとしてこのリストの記載に反対した。さらに英、米、独、中、南アなど十五か国がこのリストの記載に反対した。日本も、「リスト化には反対する。テロリズムは本条約の対象とすべきではない。」旨の意見を同委員会で述べていたのではないか。

右質問する。

参議院の原文・経過

政府答弁書

一、二及び四について

お尋ねの「本条約の交渉過程」における「提案」については、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(以下「本条約」という。)第五条1(a)の規定の成案が得られるに至るまでの交渉過程において我が国がしたものであるところ、当該提案をした時点における本条約の案文においては、同条1(a)(i)に規定する行為については、対象となる「重大な犯罪」の範囲がいまだ定まっていなかったほか、「組織的な犯罪集団が関与するもの」という要件を付することも認められておらず、また、同条1(a)(ⅱ)に規定する行為については、特定の犯罪との結び付きのない犯罪集団の活動への参加が一般的に処罰の対象とされていた。他方、我が国の刑事法においては、一定の犯罪については実行の着手前の共謀や予備行為等を処罰することとされているものの、全ての犯罪の共謀を一般的に処罰することとはされておらず、また、必ずしも特定の犯罪との結び付きのない活動に参加する行為自体を直接処罰する規定は存在しない。そこで、我が国は、その時点における本条約の案文において犯罪とすることが義務付けられている行為を犯罪とすることは我が国の法的原則と相容れないことを説明した上で、同条1(a)(i)に相当する規定について「組織的な犯罪集団が関与するもの」との要件を加えるべきこと及び同条1(a)に相当する規定に新たな選択肢として「重大な犯罪を行う目的を有する組織的な犯罪集団の活動に、自己の参加が当該犯罪の達成に寄与することを知りつつ、参加すること。」を加えるべきことを提案したものである。

これらの提案のうち、後者については、犯罪となる範囲が不当に狭くなるなどの指摘があり、各国の賛同が得られなかったが、前者については、各国の賛同が得られ、同条1(a)(i)に規定する行為の犯罪化について本条約上認められたオプションとして「国内法上求められるときは・・・組織的な犯罪集団が関与するもの」との要件が規定されるに至った。

本条約を締結し、国際社会と協調して一層効果的にテロを含む組織犯罪を防止し及びこれと戦うことは重要な課題であり、そのためには、同条1(a)(i)に規定する行為を犯罪とする法整備として、現在国会で審議中の組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案による改正後の組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成十一年法律第百三十六号)第六条の二第一項及び第二項の罪を設けることが必要であると考えているところ、同条第一項及び第二項の規定においては、右に述べたとおり我が国の提案に基づいてオプションとして取り入れられた「国内法上求められるときは・・・組織的な犯罪集団が関与するもの」との要件の下で、「団体のうち、その結合関係の基礎としての共同の目的が別表第三に掲げる罪を実行することにあるもの」を「組織的犯罪集団」と定義した上で、「組織的犯罪集団・・・の団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるもの」及び「組織的犯罪集団に不正権益を得させ、又は・・・組織的犯罪集団の不正権益を維持し、若しくは拡大する目的で行われるもの」との要件を定めること等により、その処罰の範囲を厳格に限定しており、同条第一項及び第二項の罪を設けることは、我が国の国内法の基本原則との関係で問題を生ずることはないと考えている。

三について

御指摘の「第七回アドホック委員会」の際に開催された非公式協議の内容については、公にすることにより、関係国との信頼関係が損なわれるおそれがあることから、その開示を差し控えたい。

五について

本条約の交渉の過程においては、本条約の対象となる「重大な犯罪」について、各国の国内法において定められている刑期を基準とするべきであるとの意見が多数を占めていたが、テロを含む具体的な犯罪類型のリストを定めるべきであるとの意見もあったところ、我が国は、後者の意見に従った場合には、当該リストの内容をどのようなものにするかについての議論が収れんせず、本条約の採択が困難になると考え、後者の意見には反対する旨の意見を述べたものである。

なお、本条約を採択した平成十二年の国際連合総会決議第二十五号には、「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約が、とりわけ、マネー・ローンダリング、腐敗、絶滅危惧種の野生動植物の不正な取引、文化財に対する犯罪等の犯罪活動及び拡大している国際的な組織犯罪とテロリストによる犯罪とのつながりとの戦いのための有効な手段であるとともに国際協力のために必要な法的枠組みとなることを強く確信し」との趣旨の記載があり、我が国もコンセンサスによる採択に加わった。

参議院の原文

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