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死者の人権の保護に関する質問主意書

衆議院 第154回 第155号

提出者
民主党・無所属クラブ
提出日
2002年7月25日
内閣転送 2002年7月29日
答弁書受領日
2002年8月27日
提出から33日
答弁の項目数
4
質問 1,214字/答弁 1,714字

質問本文

著作者および実演家は、著作権法により、その死後も一定の人格的利益を保護される。しかし、わが国の法体系において、一般に死者の権利は保護されないとされる。

従って、次の事項について質問する。

一 著作権法において、著作者・実演家がその死後も一定の保護を受ける理由について

1 わが国の法体系上、一般に死者の人格権は認められるか。

2 著作権法では、著作者人格権、実演家人格権そのものではないが、その人格的利益を保護するとして、死後もその利益を保護しているが、これはいかなる根拠によるものか。ベルヌ条約上の義務はさておき、国内的な必要性、及びその法的な許容性をお示しいただきたい。

3 著作者や実演家の死後も一定の保護を加えることが妥当であるとしても、その手段として、第一二〇条に定める刑罰(罰金刑)のみならず、遺族に差し止め請求権及び名誉回復請求権を認める必要性、ならびに法的許容性をご説明いただきたい。

二 政府提出「個人情報の保護に関する法律案」等について

1 「個人情報の保護に関する法律案」、「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案」などは、「『個人情報』とは、生存する個人に関する情報であって」と定義し、この法案により保護される対象を、生存する個人に限定している。その理由としては、総務省より「死者には請求権がないため、遺族自身の個人情報を構成するような場合を除いては、法体系上保護することができない」との説明を受けている。

しかし、著作権法における人格的利益の保護の考え方に見られるとおり、死者に人格権や請求権がなくとも、その必要がある限り、死後も法的保護を与えることは可能である。従って、個人情報の保護を死者に及ぼすか否かは、法体系上一概に否定されるものではなく、あくまでも立法裁量の問題であると考える。この点について、改めて政府の見解をお示しいただきたい。

2 国民の自然な感情として、死後であればプライバシーないし個人情報を自由に利用・開示されてもかまわないと考えるのは一般的でない。むしろ多くの国民が、死後も自己に関する情報はきちんと保護されることを望んでいると考えるが、この点政府の見解は。

3 現行刑法上、「名誉」については、名誉毀損罪により「生存する人」が保護されるだけでなく、死者の名誉毀損罪が設けられ、死後についても法的保護の対象となっている。

名誉の問題と、個人情報・プライバシーとは密接に関わる問題である。すなわち、死者の名誉毀損罪との関係において、個人情報やプライバシーの保護につき死後も法的な保護を及ぼす方が、法的に均衡が取れるのではないか。

4 以上のことから、「個人情報の保護に関する法律案」ほか個人情報保護に係る関係法律案においては、個人情報の定義を生存する個人の情報に限定することなく、死後についても法的な保護を与え、個人情報の適切な取扱いを確保すべきではないか。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

一の1について

お尋ねは、一身に専属する権利の主体が死亡した後に、その権利がどのように保護されるか、という趣旨であると考えるが、一身に専属する権利は相続の対象とはならない。また、死者の名誉を毀損する行為は、刑法(明治四十年法律第四十五号)第二百三十条第一項の名誉毀損罪に当たるが、同条第二項により、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しないものとされている。

一の2について

著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)第六十条は、「著作物を公衆に提供し、又は提示する者は、その著作物の著作者が存しなくなった後においても、著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為をしてはならない。」と規定している。この規定は、著作者の著作物を創作する意欲を確保し、また、貴重な文化的所産である著作物の利用の公正さを確保するためには、著作者の死後においてもその人格的利益を保護する必要があることから設けられたものであると考える。また、この規定は、著作者人格権が相続されないことを前提に著作者の死後における人格的利益を保護するものであるので、著作者人格権が一身に専属する権利であることに抵触するものではない。

なお、実演家の死後における人格的利益の保護について、著作権法の一部を改正する法律(平成十四年法律第七十二号)により、著作者におけるものと同様の規定が設けられ、本年十月九日から施行されることとなっている。

一の3について

著作権法第百十六条は、著作者の遺族等に、著作者の死後における人格的利益の保護のための措置として、差止め請求や名誉回復等の措置の請求を認めている。これは、著作者の死後における人格的利益の保護の実効性を確保するためには、著作者の生前の意志を最も適切に代弁することができる遺族等が、著作者の死後における人格的利益の侵害を防止し、又は名誉回復等の原状回復のための措置を講ずることができるものとする必要があるためと考える。また、この規定は、著作者の死後における人格的利益を保護するための措置として、著作者の遺族等に特に請求権を認めるものであり、著作者人格権が一身に専属する権利であることに抵触するものではない。

なお、実演家の死後における人格的利益の保護のための措置について、著作権法の一部を改正する法律により、著作者におけるものと同様の規定が設けられ、本年十月九日から施行されることとなっている。

二について

死者に関する情報の取扱いについて、どのような法律上の制度を整備するかは、それぞれの制度の趣旨・目的に照らして個別に判断されるべきものと考える。

「個人情報の保護に関する法律案」、「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案」及び「独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律案」(以下「個人情報保護関係法案」という。)は、高度情報通信社会の進展に伴い個人情報の利用が著しく拡大している中で、個人情報の取扱いに関連する個人の権利利益を保護することを目的とするものであるが、ここで課題になっている個人情報の保護は、すぐれて生存する個人についてのものと考えられる。また、個人情報取扱事業者、行政機関及び独立行政法人等における個人情報の取扱いに対するチェックは、個人情報の本人であって初めてこれを正確に行い得るものであるため、個人情報の本人が個人情報の開示、訂正及び利用停止を請求する仕組みとしたものであるが、これらの権利を行使することは、生存していなければ不可能である。これらを考慮すると、「個人情報」の範囲を「生存する個人に関する情報」に限ったのは、立法政策として必要かつ十分なものと考える。

なお、個人情報保護関係法案においては、死者に関する情報であっても、当該情報が遺族等生存する個人に関する情報でもある場合には、生存する個人を本人とする個人情報として保護の対象となるものである。

また、個人情報保護関係法案の個人情報の保護の内容が以上のようなものであるからといって、制度の趣旨・目的を異にする著作権法や刑法の名誉毀損罪との関係で法的な均衡を欠くものではないと考える。

衆議院の原文

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