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日米地位協定の改定に関する質問主意書
参議院 第151回 第40号
質問本文
私は在日米軍基地をめぐる諸問題に対処する際、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定」(以下「日米地位協定」という。)の改定が必要と考える。このことについて、日本政府は一九九五年の沖縄での米兵による少女暴行事件などの際にも、またその後も一貫して消極的だった。例えば、昨年十一月十日の参議院本会議で地位協定改定の必要性を問う私の質問に対して、河野前外務大臣は「日米地位協定の運用の改善により機敏に対応していく」として、「日米地位協定の改定」ではなく「運用の改善」という言葉を選んで答弁していた。
しかし、河野前外務大臣は本年二月十四日の沖縄県知事との会談で日米地位協定改定の必要を示唆し、また橋本前沖縄担当大臣も沖縄知事との会談で「改定してもおかしくない」と語った。これは一月に沖縄で起きた放火事件で米軍が容疑者の海兵隊員の身柄引き渡しを拒否し、国内での反発が強まっていた中で対応した内容である。ところが、その後実際には、新聞に「日本政府、腰砕け」と揶揄されたように、政府は日米地位協定の改定を求めるのではなく、本年三月八日の日米合同委員会で、米兵が犯罪を起こした場合の身柄引き渡しをめぐり日米地位協定の運用を改善するための協議を開始することで一致したと報道されている。
民主党は、既に昨年五月に日米地位協定の改定案をまとめ、政府に要望している。
その後も続く米兵によるトラブル、犯罪は、もはや日米地位協定の運用の改善だけでは有効に対処しきれないという段階に達している。さらに韓国においても、最近在韓米軍が韓国の環境法令を尊重する「環境条項」を新設した協定が新たに合意された。こうした情勢の変化を踏まえ、日米地位協定の改定の必要性が増していると認識し、以下のとおり質問する。
一 現在日米合同委員会で行われているという日米地位協定の「運用の改善」のための交渉は、どのような経過と内容で行われているか。
二 私は日米地位協定を、以下の内容で改定する必要があると考えている。それぞれの事項についての政府の見解を示されたい。
1 基地の提供に係る取決めを定期的に見直し、その際、基地所在地の自治体などの意見を聴取すること、また日本政府が施設・区域の返還を要求したときは、米国政府は好意的な配慮を払うことを明らかにする必要があると考えるがどうか。
2 米軍の施設・区域使用には原則として日本法令が適用されること、また地方自治体の関係者が施設・区域への立入りを要請した場合に、米軍が協力するものとすることを明らかにする必要があると考えるがどうか。
3 日米地位協定に環境保全条項を新設すること、また環境被害については米軍の原状回復・補償義務免除の例外とする必要があると考えるがどうか。
4 緊急時以外の民間空港等の使用を禁止するとともに、「移動」の名目で飛行訓練が行われないようにする必要があると考えるがどうか。
5 日本国政府の承認の下で施設・区域以外の領域において演習・訓練が実施されるに当たっては、航空、航行及び道路交通に関する日本国の法令が適用されることを規定する必要があると考えるがどうか。
6 凶悪犯罪の場合に、起訴前であっても日本が被疑者の拘禁を行えるようにする必要があると考えるがどうか。
7 合衆国軍隊の構成員、軍属・家族、被用者の不法行為により被害を受けた場合は、公務中か否かを問わず、速やかに日本国政府から見舞金を受けられるようにする必要があると考えるがどうか。
8 日米合同委員会の場で関係自治体の意見を聴取すること、また、合同委員会で合意された事項は、速やかに公表すべきものとすることが必要と考えるがどうか。
三 日米地位協定は、千九百六十年の締結後四十一年が経過し、この間米軍基地や駐留軍の存在をめぐり様々な問題が生起した。同協定は千九百五十一年のNATO軍地位一般協定の諸原則に準拠し、冷戦が最も厳しい時代背景の下で作成されたが、東西対立構造の終焉により、内外情勢は大きく変わっている。このため、民主党及び私は折に触れ、日米地位協定の抜本的見直しの必要性を指摘してきたが、政府は極めて消極的な姿勢をとり続け運用面での改善措置に終始してきている。
本来、条約、協定は国会の承認を得た後も「外交の民主的統制」の下で、その運用等について厳格にチェックされるべきものであるが、実際には行政府の判断に白紙委任されているのが現状である。日米地位協定の見直しは、米軍基地の過重な負担を強いられている沖縄県だけの問題でなく、全国民にとって喫緊の課題であるとの観点から、同問題に主体性を持って取り組み、これを制度的に解決し、日米安保体制下で派生している懸案事項を是正しつつ、その安定的な運用を図るため、日米地位協定の改定について日米間で協議すべきであると考える。このことについて政府の見解を示されたい。
右質問する。
政府答弁書
一及び二の6について
日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(昭和三十五年条約第七号。以下「日米地位協定」という。)第二十五条第一項に基づき設置される合同委員会(以下「合同委員会」という。)における平成七年十月二十五日の刑事裁判手続に関する合意では、起訴前における合衆国軍隊(以下「米軍」という。)の構成員又は軍属たる被疑者の身柄の引渡しについて、「合衆国は、殺人又は強姦という凶悪な犯罪の特定の場合に日本国が行うことがある被疑者の起訴前の拘禁の移転についてのいかなる要請に対しても好意的考慮を払う。合衆国は、日本国が考慮されるべきと信ずるその他の特定の場合について同国が合同委員会において提示することがある特別の見解を十分に考慮する。」とされている。この合意に基づいて起訴前の身柄の引渡しが行われた例が既に二件ある。
さらに、合同委員会においては、右合意にいう「その他の特定の場合」の内容を明確化することを目的とした協議を開催することについて意見が一致し、本年五月十五日以降、合同委員会の下にある刑事裁判手続に関する特別専門家委員会において協議が開始されたところであるが、その経過と内容については、これらを公にすればアメリカ合衆国(以下「米国」という。)政府との信頼関係が損なわれるおそれがあることから答弁を差し控えたい。
二の1について
お尋ねの「基地の提供に係る取決め」が何を指すかは必ずしも定かではないが、日米地位協定第二条第三項の規定により、米国は、米軍が使用を認められている同条第一項にいう施設及び区域(以下「施設及び区域」という。)がこの協定の目的のため必要でなくなったときは、いつでも、我が国に返還しなければならず、また、施設及び区域の必要性をこの返還を目的として絶えず検討することとされている。また、政府は、施設及び区域の提供、返還及び共同使用について米国と協議するに際して、地方公共団体等からの要望を勘案してきているところである。
二の2について
一般国際法上、駐留を認められた外国の軍隊には特別の取決めがない限り接受国の法令は適用されず、このことは、我が国に駐留する米軍についても、同様である。しかしながら、同時に、外国軍隊が接受国の法令を尊重しなくてはならないことは当該軍隊を派遣している国の一般国際法上の義務であると考えられ、米国もこの尊重義務を負っていることから、我が国としては、米軍による施設及び区域の使用について我が国の法令を適用させる特別の取決めを設けることとはしていない。
また、地方公共団体による施設及び区域への立入りについては、平成八年十二月二日の施設及び区域への立入許可手続についての合同委員会合意に定められている所要の手続に従って実施されている。この手続においては、米軍は、地域社会と友好関係を維持する必要性を認識し、地方公共団体の職員によるものも含め、立入りが、軍の運用を妨げることなく、部隊防護を危うくすることなく、かつ施設及び区域の運営を妨げることなく行われる限りにおいて、立入申請に対してすべての妥当な考慮を払うこととされている。
二の3について
米軍は、米国国防省の策定した基準に沿って、我が国の国内法上の基準と米国の国内法上の基準のうち、より厳格なものを選択するとの基本的な考え方の下に環境管理基準を作成し、これに基づき、厳格な環境管理行動をとっているものと承知している。政府は、これまでも合同委員会の枠組み等を活用して、当該環境管理基準の見直しの際に、我が国の国内法上の基準との関係で問題が生じないよう、必要に応じ米国政府と協議することとしてきた。さらに、平成十二年九月の日米安全保障協議委員会において策定された「環境原則に関する共同発表(以下「共同発表」という。)」において、政府及び米国政府(以下「日米両政府」という。)は、環境管理基準を見直し、二年ごとに更新するための協力を強化することとされている。
また、環境汚染への対応については、共同発表において、日米両政府は、施設及び区域に隣接する地域社会における環境汚染によるあらゆる危険について協議することとされ、米国政府は、我が国に駐留する米軍を原因とし、人の健康への明らかになっている、差し迫った、実質的脅威となる汚染について直ちに浄化に取り組むとの政策を再確認しているところである。
二の4について
日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(昭和三十五年条約第六号。以下「日米安保条約」という。)は、我が国の安全並びに極東の平和及び安全の維持に寄与するため、米軍の我が国への駐留を認めている。
米軍が、日米地位協定第五条に基づき我が国の飛行場又は港に出入りすることは、平素から米軍の円滑かつ効果的な活動を確保し、もって日米安保条約の目的を達成するために極めて重要であると考えている。したがって、緊急時以外の民間空港等の使用を禁止することは適切でないと考える。
また、一般的に、米軍が飛行訓練を通じてパイロットの技能の維持及び向上を図ることは、即応態勢という軍隊の機能を維持する上で不可欠の要素であり、日米安保条約の目的達成のために極めて重要である。さらに、米軍が飛行訓練を含め軍隊としての機能に属する諸活動を一般的に行うことは、我が国が米軍の我が国への駐留を認めていることの当然の前提であると解され、政府は従来からこのように答弁してきているところである。
一方、米軍は全く自由に飛行訓練等を行ってよいわけではなく、我が国の公共の安全に妥当な考慮を払って活動すべきものであることはいうまでもない。政府としても、従来から、日米合同委員会等の場を通じ、米国側に対し、安全確保に万全を期するよう申入れを行ってきている。米軍も、この点には十分に留意しており、我が国法令を尊重し、安全面に最大限の配慮を払うとともに、地域住民に与える影響を最小限にとどめるよう努めている旨を明らかにしている。
二の5について
お尋ねの「航空、航行及び道路交通に関する日本国の法令」の範囲は必ずしも定かではないが、日米地位協定第五条に関する合意議事録4に基づき、船舶、航空機等の通行主体の通行行為自体を通行秩序の維持の観点に立って規制する法令の規定は米軍にも適用されることとされている。
二の7について
公務執行中の米軍の構成員又は被用者が我が国において政府以外の第三者に損害を与えたものから生ずる請求権は、日米地位協定第十八条第五項に基づき、関係国内法令に従って適切に処理されている。
我が国内における不法の作為又は不作為で公務執行中に行われたものでないものから生ずる米軍の構成員又は被用者に対する請求権については、同条第六項に基づき、適切に処理されており、特に、平成八年十二月二日に発表された沖縄に関する特別行動委員会の最終報告において、日米地位協定の運用改善として、米国政府による前払制度の積極的活用並びに政府による無利子融資制度の創設及び確定判決額と米国支払額の差額を埋めるための見舞金の支給が盛り込まれ、これらの措置が日米両政府により採られているところである。
二の8について
政府としては、個々の施設及び区域の返還や使用の在り方等について、地方公共団体からの要望も勘案しつつ、合同委員会の枠組みを通じ米国と協議してきているところである。また、合同委員会における合意事項は、米国の同意が得られる場合には、その全文又は概要を公表してきている。
三について
政府としては、日米地位協定については、その時々の問題について運用の改善により機敏に対応していくことが合理的であるとの考えの下、運用の改善に努力しているところであり、これが十分効果的でない場合には、我が国のみで決定し得ることではないが、日米地位協定の改正も視野に入れていくことになると考えている。
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