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プルトニウム輸送に関する質問主意書
衆議院 第125回 第7号承知していない ×1
質問本文
一 フランスから日本へのプルトニウム海上輸送について、約三十か国の抗議や通過拒否声明が出されているといわれる。民間の不安や抗議の数はそれをさらに上回る。それは、去る十月四日、ナウル共和国のドウィヨゴ大統領が、東京での「アジア・太平洋プルトニウム輸送フォーラム」席上でおこなった演説に象徴される。とりわけ、大統領は、その中で「我が国は、この危険な物質の輸送について何の相談も情報提供も受けていない。先進国が高い技術から受ける恩恵の代価を小さい国に押しつけるのはやめてもらいたい。プルトニウム輸送の領海通過は拒否する。また、緊急寄港は認めない」と強く表明した。日本の国際的信用を失墜させるような事態になっていることについて、以下質問する。
�@ どれだけの国から問い合わせ、抗議声明、領海内通過の拒否声明が出されていると把握されているか。そのリストを明らかにされたい。
また、それらの国々に対して、どのような説明がなされているのか。
�A 一回に一トン以上、今後三十トンものプルトニウム輸送を、毎年三〜四回、ヨーロッパから日本へおこなうというのは、歴史上かつてない計画である。
このような多数の国々を危険に巻き込む恐れのある計画について、疑問や異議が、多数の国から出され、了解が得られないまま強行することは、国際的な信頼関係を失わせるのではないか。
�B 核物質の利用によって、恩恵を受ける国は限られている。それによって何らの利益を受ける可能性のない国々に不安と脅威を与えている。輸送ルートの国に対して、十分な情報公開をし、その了解を得るのは相手国の主権を尊重するという意味で最低限必要なのではないか。
二 プルトニウムは、純度が高ければ四〜五キログラムで核兵器ができる物質であるとともに、発ガン性が非常に強い。考えられる種々の事態の中で、最も懸念されるのは、火災によって、プルトニウム酸化物が空中に広く飛散することである。プルトニウムの破片(ホット・パーティクル)は、数十キロメートルも飛散することが考えられ、人体に吸い込まれると肺ガンを誘発する原因となる。さまざまな事態に対して、無寄港が前提のプルトニウム輸送にも万一の緊急寄港が必要とされている。また「日米原子力協定」によると、輸送に当たっては、緊急寄港地を予め決定し、アメリカ合衆国に対して、計画内容の中に示すことになっている。これらのことを踏まえ、以下緊急寄港について質問する。
�@ 今回の輸送について緊急寄港地が何か所か、予定されているのか。また、それは、どのような場合が想定されるか。
�A そこには、放射能計測器、防護服その他の放射能に対する装備や、設備があるのか。
�B また、そこには、核汚染に対処できる緊急事態の際の病院はあるのか。
�C 衝突事故、火災、故障その他の不測の事態に備えて、放射能災害に対処できる訓練された要員が、そこには何人ぐらいいるのか。
�D 緊急寄港予定地の政府、あるいは自治体には、そのことが知らされているのか。どの程度の情報公開がなされているのか。
�E 過去二年間において、使用済燃料の輸送船が、バミューダとホノルルに三回の緊急寄港をしていると聞いている。うち一隻は、今回の輸送船「あかつき丸」の前身「パシフィック・クレーン号」である。その三回の緊急寄港の理由について詳細を報告していただきたい。
�F もし、何らかの理由で緊急寄港が必要となっても、相手港から拒否された場合はどうするのか。
三 損害賠償について質問する。
�@ 放射性物質による汚染に関して、過去国家間でどのような例があるか。
�A 放射能汚染の賠償に関しては、どのような国際私法があるか。
�B 長谷百合子議員の第百二十四回国会質問第一号に対する答弁書の中で、賠償責任は、動燃が一元的に負うので、国家間の問題は生じないとされているが、動力炉・核燃料開発事業団の事業であっても、プルトニウム輸送は、日本政府が政策として推進しているのであるから、当然、国家としての責任はあるのではないか。
�C 前記答弁書では、「支払われる保険金の上限は六十億円」とされているが、科学技術庁原子力局核燃料課長坂田東一氏は、最近の論文の中で「この賠償措置額を超えた原子力損害が輸送中に発生した場合は、所要の手続きを経て、政府が必要な財政援助をおこなうことになっており、賠償額は事実上、上限がない」と述べている。これは、政府の正式見解と受けとってよいのか。「所定の手続き」とは何か。また「上限六十億円」はどのようにして算定されたものか。
�D 一例として一九五四年の、ビキニ環礁での第五福竜丸の被災に際して、アメリカ政府はどのような賠償をしたか、あるいはしなかったのか。
�E 公海上で放射能漏れのような事故があり、ある国が汚染されたような場合、その影響評価は、誰がどのようにして責任をもっておこなうのか。
また、いずれかの国の領海または、経済水域内で同様な事態に陥った場合についても同じ質問をする。
四 アメリカ合衆国では、一九六〇年代すでに情報公開法が成立して、一般の市民でも請求すれば、軍事的な記録でさえも知ることができる。世界の流れは情報公開に向かっている。
しかるに、政府は、四月一八日、科学技術庁の通達・通知によって「核物質の輸送に関する情報の非公開」を、関係自治体、事業者に押しつけてきた。「核物質防護の観点から、テロリズム・核ジャックを防止する」というのがその理由である。
情報管理の一切を政府と一部関係者のみが掌握するという事態を憂慮し、以下の点について質問する。
�@ 過去において、核物質の強奪の例が国際的、国内的にあったのか。すべてを明らかにされたい。
�A 政府は、今回の輸送について、容器の形態、積み込まれるプルトニウムの量、出航までは、輸送船の名前まで一切秘密にしている。一方、フランスの核燃料会社であるコジュマ(C0GEMA)はこれらについては公開しており、また「あかつき丸」のシェルブール入港についても、プレスセンターを設け、一定程度の情報公開をおこなった。我が国政府及び動燃の秘密主義は、過剰ではないのか。
�B 輸送のルート、日時も、一切公開されないという状況下で、知らずに近づいてくる一般の船舶と、テロ行為の区別を、どうつけるのか。また、環境保護団体などの正当な、民主主義に保障された範囲内での監視や、抗議行動に対しても、どのように区別するのか。そのような、非暴力の「核ジャック」とは無縁の行動に対しても、武器を使用する可能性があるのか。
�C 環境保護団体の追跡船に対して、海上保安庁の護衛船「しきしま」は「威嚇射撃も辞さない」と警告したと報じられているが、海上保安庁はこの団体を「核物質を奪取する恐れのある団体」とみなしているのか。
�D 原子力三原則の「自主・民主・公開」のうち「公開」は「成果の公開」にのみ限定されるのか。この三原則の成立した経緯からすれば、「公開」の原則は、より広く、また、最優先に扱われるべきではないのか。
「住民の健康と安全を守る」という観点から、住民自身に最大の情報提供をするのが当然ではないか。
また、原子力三原則は国際的にも適用されるべきだと思うがどうか。
�E 本件プルトニウム輸送について、「目的、経緯、安全対策については広く情報開示をしている」(坂田東一氏)と述べられているが、住民、あるいは、諸外国の国民からの疑問や不安に対して、一方的で簡単な説明はなされていても、誠意のある説明はなされていないというのが、現実に各方面から聞かれる声である。それは「民主的」とはいえないのではないか。どのような立場で、どのような手続きのもとに、国民を納得させるような情報提供と説明がなされたのか明らかにされたい。
右質問する。
政府答弁書
一の�@から�Bまでについて
平成四年十一月から平成五年一月にかけて行われたフランスから我が国までのプルトニウムの輸送(以下「本件プルトニウム輸送」という。)に関しては、これまで、マラッカ海峡周辺諸国、南太平洋諸国、アフリカ諸国、中南米諸国等の政府から、我が国政府に対し、輸送の安全性や輸送ルート等を含む輸送に関する照会があった。また、いくつかの国からは外交経路を通じ、安全性に関する懸念が表明されている。
照会又は懸念の表明を行った主な国等は具体的には次のとおりである。
マラッ力海峡周辺諸国 インドネシア共和国、マレイシア、シンガポール共和国、フィリピン共和国
南太平洋諸国 南太平洋フォーラム、ナウル共和国、ニュー・ジーランド等
アフリカ諸国 南アフリ力共和国等
中南米諸国 ブラジル連邦共和国、チリ共和国、アルゼンティン共和国、パナマ共和国等
本件プルトニウム輸送に関して、照会又は懸念の表明を行った国々に対しては、基本的には在外公館を通じて、また、必要に応じて専門家を派遣し、輸送の必要性、安全対策、核物質防護対策等について関係資料を提供し誠実に説明を行ってきている。
このような説明により、本件プルトニウム輸送については政府レベルではおおむね理解が得られていると認識している。
今後の輸送に当たっても、このような努力を継続し国際社会の理解を得つつ輸送を実施していく所存である。
二の�@から�Dまでについて
本件プルトニウム輸送は、原則として無寄港で行うこととしていたため、あらかじめ具体的な緊急時における寄港先は想定していなかった。いかなる国とも、御質問のような緊急時における寄港に係る具体的な事項について協議はしていない。
二の�Eについて
過去において使用済燃料輸送船が、ハワイ及びバミューダの近海に停泊したことがあると承知しているが、輸送船は港には入っておらず、領海外において乗組員のけが、病気及び交代のため停泊したものと承知している。
二の�Fについて
何らかの理由により緊急時における寄港の必要が生じた場合は、受入国政府から寄港を認める旨の回答を得た上で寄港することとしていた。
三の�@について
放射性物質による汚染に関する国家間の損害賠償については、承知している限りでは、例はない。なお、ビキニ被災事件については、三の�Dについてにおいて述べるとおりである。
三の�Aについて
放射能汚染による損害の賠償を含め、不法行為によって生ずる債権の成立及び効力に関する国際私法としては、法例(明治三十一年法律第十号)の規定がある。
三の�Bについて
動力炉・核燃料開発事業団(以下「動燃」という。)は、動力炉・核燃料開発事業団法(昭和四十二年法律第七十三号)により国とは別の法人格を与えられた独立の権利義務の主体であり、動燃の事業が日本国政府の政策に沿って推進されていることをもって日本国政府が原子力損害に係る民事法上の賠償責任を負うことにはならない。
三の�Cについて
原子力損害の賠償に関する法律(昭和三十六年法律第百四十七号)第十六条第一項の規定によれば、政府は、原子力事業者の賠償責任額が、原子力損害賠償責任保険等による賠償措置額を超え、かつ、被害者の保護等同法の目的を達成するため必要があると認めるときは、原子力事業者に対し、原子力事業者が損害を賠償するために必要な援助を行うものとすることとされており、原子力事業者の賠償責任額が六十億円を超えた場合も賠償が行われることとなる。
「所要の手続」とは、同法第十六条第二項の国会の議決等を指すものと解される。
「上限六十億円」は、原子力損害の賠償に関する法律施行令(昭和三十七年政令第四十四号)第二条に基づくものである。
三の�Dについて
米国政府は、千九百五十五年一月四日付けの日米両国政府間の交換公文に基づき二百万ドルを法律上の責任の問題と関係なく慰謝料として日本国政府に支払った。
三の�Eについて
損害を受けたと主張する者が自ら御質問のような評価を行うことが基本であるが、原子力損害の賠償に関する法律第十八条により、原子力損害の賠償に関して紛争が生じた場合における和解の仲介を行わせるため、原子力損害賠償紛争審査会を置くことができることとされており、置かれた場合には、同審査会は原子力損害の調査及び評価を行うこととされている。
四の�@について
国外における核物質の盗取の事例については、承知していない。
国内における核物質の盗取の事例としては、昭和四十八年八月二十五日、財団法人日本科学技術振興財団の科学技術館原子力部門展示室において、常設展示中の天然ウランインゴット一・九キログラムが盗取された事例が報告されている。
四の�Aについて
政府としては、従来から核物質防護上必要最小限の情報について、これを慎重に取り扱うとの方針を採ってきており、必要以上に情報を管理しているものではない。
四の�B及び�Cについて
プルトニウム輸送に係る輸送船及び護衛船に接近してくる船舶がどのような目的を有しているのかについては、当該船舶の動静、護衛船からの問いかけに対する応答等を総合的に勘案して判断することとしている。また、このような判断を行った上で、護衛船は、接近してくる船舶の行動等現場の状況に応じて、プルトニウム海上輸送の安全確保のために任務上必要な措置を採ることとしている。なお、そのような措置の内容は、接近してくる船舶の所属する団体の性格とは直接には関係がない。
四の�Dについて
原子力基本法(昭和三十年法律第百八十六号)第二条においては、我が国における原子力の研究、開発及び利用の基本方針として原子力の研究、開発及び利用の成果の公開を定めており、政府としてはこの方針にのっとり情報の公開を行っている。
四の�Eについて
本件プルトニウム輸送の必要性、安全性等について、一般国民からの問い合わせへの回答、パンフレット等の配布、報道機関への説明と情報提供及び報道機関からの取材への対応等により、本件プルトニウム輸送について国民の理解を得るべく努めた。
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