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内閣法制局の権限と自衛権についての解釈に関する質問主意書

衆議院 第156回 第119号お答えすることは困難 ×1

提出者
民主党・無所属クラブ
提出日
2003年7月8日
内閣転送 2003年7月9日
答弁書受領日
2003年7月15日
提出から7日
答弁の項目数
7
質問 3,127字/答弁 2,941字

質問本文

内閣法制局は、「法律問題に関し内閣並びに内閣総理大臣及び各省大臣に対し意見」の具申ができ、その権限に基づき、憲法上の問題が指摘されてきた法律案に関しても、解釈の統一を図っているが、国会においても、内閣法制局長官を初めとした内閣法制局職員が当該法律案の憲法解釈に関わる答弁をなしてきたことを踏まえ、内閣法制局の権限及び自衛権の解釈について、以下質問する。

一 政府の統一解釈・統一見解と内閣法制局の権限・役割について

1 政府の統一解釈・統一見解は、時の政府の解釈であり見解であるから、政権が変われば、以前の政府解釈等を継承するのも変更するのも可能なものと考えるのか、あるいは、政府は従来の解釈等に拘束されるべきものと考えるのか、政府の統一解釈・統一見解の性格について、見解を伺いたい。

2 政府の統一解釈・統一見解を形成するために大きな役割を担っている内閣法制局は、いかなる権限・正統性に基づき憲法を含む法律の解釈を行っているのか、説明いただきたい。

3 政権が変われば、政府全体も何らかの変化があるのが自然であるが、内閣法制局は、政府の変化及び国内外の情勢の変化に対し、適度な柔軟性を持ち的確な対応ができる組織なのか、説明いただきたい。

二 自衛権の解釈について

1 自衛権についての政府の考え方について

ア 「自衛権」、「個別的自衛権」及び「集団的自衛権」のそれぞれの定義を示していただきたい。

イ 個別的自衛権と集団的自衛権との関係は、次のA図のように重複する部分もあるものなのか、あるいは、B図のように、全く重複する部分はなく、明確に区別し得るものなのか、説明いただきたい。

ウ 個別的自衛権と集団的自衛権が重複する部分がある概念であるとすれば、集団的自衛権は憲法上禁止されているとしている政府は、重複する部分に入り得る事態について、個別的自衛権で対処するのか、あるいは、集団的自衛権にも当たるものとして、個別的自衛権でさえも、制限し、対処を控えるのか、説明いただきたい。

2 憲法第九条が認める自衛権の在り方について

ア 従来の政府の統一見解の中で、政府は、「自衛権の行使に当たっては、我が国を防衛するための必要最小限度の実力を行使すること」及び「自衛のための必要最小限度の実力を保持すること」は憲法上認められているとしているが、その際、「必要最小限度の実力」とは、規模、装備、攻撃の在り方等において、いかなる程度の実力を意味しているのか、説明いただきたい。そもそも、流動的な国内外の安全保障情勢下で、「必要最小限」という曖昧な基準に拠ることは、自衛隊が既に相当程度の実力を保持する中では、内閣法制局は、法令解釈権を放棄したものではないのか。

イ 「他国から武力攻撃が加えられた場合に国土を防衛する手段として武力を行使することは憲法第九条に違反しない」とする従来の政府の統一見解については理解できるが、「憲法第九条のもとにおいて、自衛のための必要最小限度の範囲を超えて武力を行使すること及び自衛のための必要最小限度を超える実力を保持することは許されない」との従来の政府解釈については、その根拠は何も説明されておらず、理解しがたい。憲法第九条が、我が国の自衛のための武力行使あるいは自衛隊の実力について、「必要以上」を許していないとするのではなく、必要範囲であっても、その「最小限度を超えること」を許していないとする解釈の根拠を示していただきたい。

3 「専守防衛」について

ア 政府は、相手から武力攻撃を受けたときに初めて防衛力を行使するという「専守防衛」を我が国防衛の基本方針としているが、「専守防衛」を基本方針とした時期及び経緯について、説明いただきたい。

イ 国土が南北に長く、大陸に近接しているという地理的特徴を持つ我が国が、「専守防衛」に徹し、国土を防衛し得るためには、相当大きな規模・実力の抗戦力を保持する必要があると推測されるため、「専守防衛」は憲法の要請するところのものではあり得ず、政府が現在執っている防衛政策の一つに過ぎず、自衛力を確保するために、「専守防衛」の是非を検討し、必要があればこの方針を廃棄することは、憲法見直し論議とは関わりなく行い得るものと考えるが、見解を伺いたい。

ウ 政府は、「専守防衛」の基本方針を変更しないと述べているが、歴代政権が「専守防衛」方針に絶対の信頼性を置いてきたとは思えない。昭和四十七年十月三十一日の衆議院本会議において、田中内閣総理大臣は、「専守防衛というのは、防衛上の必要からも相手国の基地を攻撃することなく、もっぱらわが国土及びその周辺において防衛を行うこと」と答弁している。しかし、最近、石破防衛庁長官が、昭和三十一年の鳩山内閣総理大臣答弁及び昭和三十四年の伊能防衛庁長官答弁で示された「誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能である」旨の見解を表明したが、このような武力行使は、「自衛の範囲に含まれ、可能」であっても、「専守防衛」方針には合致しないものではないのか、石破防衛庁長官の見解は政府見解と一致するものなのか、そうであれば、政府は「専守防衛」方針の廃棄を視野に入れているのか、説明いただきたい。

4 自衛権発動三要件の一つ「我が国に対する急迫不正の侵害がある場合」について

ア 我が国を他国からの武力攻撃から防衛するために我が国に自然権として備わっている権利が「自衛権」、狭義には、「個別的自衛権」と考えるのか。

イ 政府が設定している自衛権発動三要件の一つ「我が国に対する急迫不正の侵害がある」事態という危機迫る段階の前段階において、つまり、そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態(周辺事態)に対し、我が国が個別的自衛権に基づき対処することは、憲法上問題があるのか否か、説明いただきたい。

ウ 具体的に例を挙げれば、日本を含む北東アジアの平和と安全を確保するために日朝間の公海上で監視活動等を行う米軍が北朝鮮との間で戦闘状態に入った場合において、事態は周辺事態との政府判断がなされ得るし、また、短期間のうちに我が国に対する武力攻撃事態へ発展することが予測される事態(武力攻撃予測事態)となる場合もあり得る。しかし、政府の自衛権発動の三要件に照らせば、事態が我が国に対する武力攻撃事態へ発展して初めて自衛権を行使することができ、その前段階では、せいぜい周辺事態安全確保法に基づく米軍への後方地域支援や、武力攻撃事態対処法に基づく自衛隊の防衛出動待機に限られると思われるが、事態が我が国周辺にある間に、自衛権を発動して、米軍と協力して危険を排除すれば、被害を最小限にして国土を防衛し得る場合において、我が国は自衛権を発動できるのか否か、できないとすれば、その根拠は何か、説明いただきたい。

三 内閣法制局の見解を拠り所にして歴代の政府が示してきた自衛権を初めとする憲法問題についての統一解釈は、過去の統一解釈との整合性を図るために無理に無理を重ねた結果、相互に自己矛盾に陥ったり、「武力行使との一体化」論に代表される、国際的な説得力が皆無な、独りよがりの解釈となっていることを鑑みれば、内閣法制局は、法律解釈を行うに当たっては、従来の同局見解に硬直的に縛られることなく、現政府の法律顧問として、客観的に適正と考えられる見解を示すべきであると考えるが、見解を伺いたい。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

一及び三について

お尋ねの「政府の統一解釈・統一見解」とは、憲法を始めとする法令の解釈に関する政府の見解を指すものと考えられるところ、一般的に、憲法を始めとする法令の解釈は、当該法令の規定の文言、趣旨等に即しつつ、立案者の意図や立案の背景となる社会情勢等を考慮し、また、議論の積み重ねのあるものについては全体の整合性を保つことにも留意して論理的に確定されるべきものである。政府による法令の解釈は、このような考え方に基づき、それぞれ論理的な追求の結果として示されてきたものであり、御指摘のような国内外の情勢の変化とそれから生ずる新たな要請を考慮すべきことは当然であるとしても、なお、前記のような考え方を離れて政府が自由に法令の解釈を変更することができるという性質のものではないと考えられる。中でも、憲法は、我が国の法秩序の根幹であり、特に憲法第九条については、過去五十年余にわたる国会での議論の積み重ねがあるので、その解釈の変更については十分に慎重でなければならないと考える。

行政府としての憲法解釈は最終的に内閣の責任において行うものであるが、内閣法制局は、内閣法制局設置法(昭和二十七年法律第二百五十二号)に基づき、「閣議に附される法律案、政令案及び条約案を審査し、これに意見を附し、及び所要の修正を加えて、内閣に上申すること」、「法律問題に関し内閣並びに内閣総理大臣及び各省大臣に対し意見を述べること」等を所掌事務として内閣に置かれた機関であり、行政府による行政権の行使について、憲法を始めとする法令の解釈の一貫性や論理的整合性を保つとともに、法律による行政を確保する観点から、内閣等に対し意見を述べるなどしてきたものである。

なお、御指摘の「武力行使との一体化」論とは、仮に自らは直接「武力の行使」をしていないとしても、他の者が行う「武力の行使」への関与の密接性等から、我が国も「武力の行使」をしたとの法的評価を受ける場合があり得るとするものであり、いわば憲法上の判断に関する当然の事理を述べたものである。これは、我が国の憲法が欧米諸国に例を見ない戦争の放棄等に関する第九条の規定を有することから生まれる解釈であり、「独りよがりの解釈となっている」との御指摘は当たらないと考える。

二の1及び4のアについて

国際法上、一般に、「個別的自衛権」とは、自国に対する武力攻撃を実力をもって阻止する権利をいい、他方、「集団的自衛権」とは、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利をいうと解されている。

このように、両者は、自国に対し発生した武力攻撃に対処するものであるかどうかという点において、明確に区別されるものであると考えている。

「自衛権」については、その用いられる文脈により、個別的自衛権と集団的自衛権の両者を包括する概念として用いられる場合もあれば、専ら個別的自衛権のみを指して用いられる場合もあると承知している。

二の2のアについて

我が国に対する武力攻撃が発生しこれを排除するため他に適当な手段がない場合に認められる必要最小限度の実力行使の具体的限度は、当該武力攻撃の規模、態様等に応ずるものであり、一概に述べることは困難である。

憲法第九条の下で保持することが許容される「自衛のための必要最小限度の実力」の具体的な限度については、本来、そのときどきの国際情勢や科学技術等の諸条件によって左右される相対的な面を有することは否定し得えず、結局は、毎年度の予算等の審議を通じて、国民の代表である国会において判断されるほかないと考える。

これらはいずれも、解釈によって示された「必要最小限」という規範に対する個別具体の事例の当てはめの問題であり、「内閣法制局は、法令解釈権を放棄した」との御指摘は当たらないと考える。

二の2のイについて

憲法第九条第一項は、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」と規定し、さらに、同条第二項は、「前項の目的を達成するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」と規定している。

しかしながら、憲法前文で確認している日本国民の平和的生存権や憲法第十三条が生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利を国政上尊重すべきこととしている趣旨を踏まえて考えると、憲法第九条は、外国からの武力攻撃によって国民の生命や身体が危険にさらされるような場合にこれを排除するために必要最小限度の範囲で実力を行使することまでは禁じていないと解され、そのための必要最小限度の実力を保持することも禁じてはいないと解される。

我が国がこのような自衛のために行う実力の行使及び保持は、前記のように、一見すると実力の行使及び保持の一切を禁じているようにも見える憲法第九条の文言の下において例外的に認められるものである以上、当該急迫不正の事態を排除するために必要であるのみならず、そのための最小限度でもなければならないものであると考える。

二の3について

「専守防衛」という用語は、相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、また保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限るなど、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢をいうものであり、我が国の防衛の基本的な方針である。この用語は、国会における議論の中で累次用いられてきたものと承知している。

政府は、従来から、「わが国に対して急迫不正の侵害が行われ、その侵害の手段としてわが国土に対し、誘導弾等による攻撃が行われた場合、(中略)そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置をとること、たとえば誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であるというべきものと思います。」(衆議院内閣委員会鳩山内閣総理大臣答弁船田防衛庁長官代読、昭和三十一年二月二十九日)との見解を明らかにしてきており、石破防衛庁長官の平成十五年一月二十四日の衆議院予算委員会における答弁等は、このような従来の見解を繰り返し述べたものである。このような見解と、相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめるなど、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢をいう専守防衛の考え方とが、矛盾するとは考えていない。

前記のように、専守防衛の考え方は憲法の精神にのっとったものであり、政府としては、これを変更することは考えていない。

二の4のイについて

御指摘の事態については、自衛権発動の三要件が満たされないことから、これに対応するために我が国が自衛権を発動することはできない。

二の4のウについて

お尋ねは、仮定の事実を前提とするものであるが、一般論として述べると、憲法第九条の下において自衛権の発動としての武力の行使が許されるのは、自衛権発動の三要件が満たされる場合に限られる。

衆議院の原文

この答弁書に出てくる定型句

お答えすることは困難 ×1

語の一致で数えたものです。答弁の評価ではありません。同じ型の答弁が過去にどれだけあるかは、型を押すと出ます。

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