Kurage 質問主意書アシスト

ことばで探す › 参議院 第108回

税制改革に関する質問

参議院 第108回 第1号

提出者
参議院
提出日
1986年12月29日
内閣転送 1987年1月7日
答弁書受領日
1987年1月20日
提出から22日
答弁の項目数
18
質問 2,811字/答弁 3,824字

質問本文

税制改革に関する質問主意書

シャウプ税制以来三十六年ぶりといわれる税制の抜本的改革が先に発表され、その実現に向けて準備がなされているが、その内容は国民生活に重大な影響をおよぼすと同時に総理が同日選で公約した内容と相反するものもあるので以下質問する。

一 今改革のねらいは国民の重税感、不公平感の解消が中心であつたにもかかわらず、クロヨンを始めとする不公平税制の是正にはほとんど手が触れられていない。むしろ利子課税の総合課税化放棄にもみられるように公平の原則が放棄されている。今改革で公平の原則が貫かれたと思うかどうか。政府の見解を伺いたい。

二 今改革は、国民の所得の平準化を主な理由として「広く薄く課税」するとの方針で行われている。所得税率のうち、最高税率の引下げや、利子所得の一律分離課税導入にもみられるように高所得者、すなわち金持ち優遇の改革であり、このことは税制に与えられている所得再分配機能を著しく歪めるものといわざるを得ないがどうか。

三 米国の税制改革は五年間を一つのくぎりとして、その期間を通じた各年度ごとの増減税規模が公開されているが、わが国の場合、増減税の総額は明示されてはいるものの単年度ごとの規模が不明確である。これでは増減税の単なる数字合わせに終わる可能性があり、国民の前に政策意図がフェアに公開提示されたことにはならないと思うがどうか。

四 税制改革による増減税効果については、財政当局の試算では、法人税減税をも含めて、各世代で減税が増税を上回るとしているが、法人税減税効果が国民に還元される点には不確定要素が多く、むしろ年収六百万円以下では実質的増税を強いられるとの試算もなされている。そのため財政当局がいうほどの減税効果が生ずるとは思われず、必ずしも中堅サラリーマンを中心とした税負担軽減につながるとはいいきれないが、どう考えているのか。

五 今改革はレベニューニュートラル(歳入中立)の原則を貫いたといわれるものの、そのねらいが増税、増収にあることはマル優廃止や、売上税導入が改革の中心であることからも明白である。これにより個人消費は縮小し民間活力がそがれ、その結果内外から要請されている内需拡大にまさに反することになると思うが、この点どう考えているのか。

六 所得税の課税最低限引上げは見送られているが、マル優制度廃止や売上税導入がなされるならば低所得者層は実質的に増税を強いられ、特に課税最低限以下の人たちは増税だけになる。この点について政府はどのように認識しているのか。

七 所得税の最高税率適用者数は全納税者中極めて限られており、その所得も勤労性所得以外のものとみられる。今改革で所得税の最高税率を引き下げるとしているが、その場合には、資産性所得の課税強化と見合いで行うべきであると思うがどうか。また利子課税に対する一律分離課税はその原則とは逆行するといわざるを得ないがどう認識しているか。

八 サラリーマンに必要経費の実額控除選択の途をひらいてはいるが、実額控除を選択した場合は給与所得控除は一切認められず、実額控除の対象となる必要経費も極めて限定的である。これではせつかく申告納税の途をひらいても実額控除を選択する人は限られ、制度創設の意義が生かされないと考えるが政府の認識はどうか。

九 給与所得者と事業所得者等の所得捕捉格差を含めた是正が求められているが、今回創設が予定されている配偶者特別控除制度だけでは根本的な解決策にはつながらず、みなし法人課税の事業主報酬や、専従者給与への給与所得控除の限定適用を含めた、より実効ある是正策をとるべきであると思うがどうか。

十 利子課税については少額貯蓄非課税制度を廃止し、一律分離課税を導入することはまさに大資産家優遇の措置といわざるを得ない。国民の間に定着したマル優制度は限度額管理を徹底することにより今後とも存続させ、課税貯蓄については、総合課税化の徹底を図ることにより公平の原則を貫くべきであると考えるがどうか。

十一 有価証券譲渡益については、その課税対象を拡大することとしているが、同じ資産性所得である利子所得に一律分離課税が行われているのに反して、有価証券譲渡益には原則課税が今日の時点では行われていないことは片手落ちと指摘せざるを得ないが、どうか。

十二 土地譲渡所得税については、土地供給促進の観点の名のもとに昭和六十四年度までに譲渡した土地等については、長期保有の期間を五年超としている。しかしこれによつて土地の供給が促進されるという保証はなく、むしろ土地を持たない者との間で不公平が拡大する可能性がある。土地供給促進の根拠を示すとともに、不公平拡大の是非についてどう考えるか。

十三 今回法人税率については基本的には、三年間で段階的に引き下げることとしているが、その一方、繰入率が実体とかけはなれている貸倒引当金や、利用法人割合が低く保全措置もない退職給与引当金、さらには各種準備金の見直しには手も付けられておらず、法人税の課税ベース拡大については不十分であると思うがどうか。

十四 今回導入を強行しようとしている売上税は、どんなに非課税取引や非課税業者をもうけてみても総理が導入しないと国民に約束してきた大型間接税にほかならず、その導入はまさに公約違反といわざるを得ない。公約の厳守をもとめるとともに、公約違反でないとするならば明確なる根拠を国民の前に明らかにするべきであるがどうか。

十五 仮に売上税の導入が行われた場合にはヨーロッパ各国の例を見るまでもなく、その時々の社会、経済情勢に応じて税率の引上げが容易に行われる可能性がある。当初は五%の税率とされているが、将来ともにこの五%を守つていくという保証はあるのかどうか。政府の見解を明らかにされたい。

十六 売上税導入にあたつて中小零細企業の納税事務軽減の名のもとに売上高一億円未満の企業を免税業者としているが、免税業者は税額控除票の発行ができず、それが課税業者との取引上不利になる場合も生ずることが十分に想定されるが、その点はどう考えるか。また課税業者と免税業者の間に一物二価の現象を生じかねないが、税制がこのような現象を引きおこすことは経済活動に対する中立性の観点からも決して好ましいことではない。この現象にはどう対処するのか。

十七 売上税導入は企業側のコストを増大させるのみならず、徴税側の事務量をも増大させ、税務職員の大幅な増員を余儀なくさせることが明らかである。これでは行財政改革に反するといわざるを得ないが、現行職員で売上税導入に対処できるのか。

十八 政府は税制改革案を国会にいつ提出する予定か。またその場合、税制改革の十分な審議確保のためにも、一括法として提出するのではなく、各税目別に立法化すべきであると思うがどうか。

右質問する。

参議院の原文・経過

政府答弁書

一について

今回の税制改革は、中堅所得者層の負担軽減を中心とした個人所得課税の軽減・合理化、法人課税の見直し、間接税制度の改革及び非課税貯蓄制度の見直しを大きな柱としつつ、税制全般にわたる見直しを行つたものである。

この改革は、「公平」、「公正」、「簡素」、「選択」並びに「活力」の基本理念に立脚しつつ望ましい税制の確立を図るものであり、「公平の原則」は貫かれている。

二について

今回の税制改革は、我が国における所得分布の平準化、消費態様の多様化といつた状況に対応して、特定の人たちや特定の分野に偏つた税負担を求める現行税制を改めることにより課税ベースの拡大を図るとともに、薄く公平に税負担を求めるために行おうとするものである。

なお、我が国の所得税と個人住民税とを合わせた最高税率は、引下げ後でも、先進諸国の中で最も高い水準にあり、我が国の所得税は、国際的にみても下に軽く上に重いものとなつている。

また、利子所得については、現行の非課税貯蓄制度について高額所得者ほどより多くその恩典を受けているという現状にあることからみて、一定の税率により他の所得と分離して課税することにより、高額所得者に対して相当の税負担を求めることになる。

以上のことから、今回の税制改革がいわゆる金持ち優遇となり、税制の所得再分配機能をゆがめるものであるとは考えていない。

三について

今回の税制改革については、政府としては、「昭和六十二年度税制改正の要綱」(昭和六十二年一月十六日閣議決定)において、各項目ごとの実施年度を明らかにするとともに、初年度のほか平年度の増減収額を明らかにしているところである。

四について

税制改革が家計の負担に与える影響については、就職、結婚から退職までの生涯の各段階ごとの収入や支出の態様に応じて家計のゆとりが変化するという点に着目して税負担の変化を考えることが重要である。

このような観点から検討すると、今回の税制改革により、働き盛りで収入が比較的高いものの教育、住宅等の支出がかさみ、あまりゆとりのない中堅層を中心に負担が軽減されるものと考える。

また、いかなる税も究極的には個人に帰着するものとされており、税制改革の家計負担への影響を考えるに当たつては、法人減税の影響も考慮に入れる必要がある。

なお、我が国における法人の実態をみると、個人形態の企業と実質的に変わらない中小法人が大半を占めていることが一つの特色となつている。

五について

今回の税制改革全体としてみると、個人所得課税の累進緩和や法人課税の実効税率の引下げ等は、勤労意欲、事業意欲等に好ましい影響を与え、経済の活力を高めるものと考える。

なお、昭和六十二年度税制改正においては、個人所得減税及び法人課税の税率引下げは年度当初から行われ、一方、売上税の導入や利子課税の見直しは年度後半において実施されることとなつている。この場合、所得税等の軽減額の半分程度に相当するものは、資産に関連する課税の一層の適正化等の見地から土地取引に係る登録免許税を引き上げ、有価証券取引税を見直すこと等により対処することとしている。

六について

今回の税制改革に当たつては、真に手をさしのべるべき人々に対しては所要の配慮を払うこととしている。例えば、老年者控除を二倍に引き上げるとともに、利子課税の見直しにおいては、老人、母子家庭、障害者等に対し現行の少額貯蓄非課税制度及び郵便貯金非課税制度を維持することとし、売上税においては、飲食料品、社会保険診療、学校教育、住宅等国民生活に密接に関連する分野を非課税とするなど、適切な措置を講ずることとしている。

七について

今回の税制改革における所得税の最高税率の引下げは、その水準が高すぎる場合には勤労意欲や事業意欲等に好ましくない影響を与えることが懸念されるため、社会の活力を維持増大する等の見地から実施するものである。なお、引下げ後でも、我が国の所得税と個人住民税とを合わせた最高税率は先進諸国の中で最も高い水準にある。

他方、この改革では、高額資産家ほどより多く恩典を受けている現行の非課税貯蓄制度を改めて高額資産家に相当の負担を求めるほか、有価証券譲渡益課税について、その課税対象を大幅に拡大することとしている。

また、利子所得について一定の税率による源泉徴収により他の所得と分離して課税する方式は、利子所得の発生の大量性、その元本である金融商品の多様性、浮動性といつた特異性に適合した課税方式であり、かつ、簡素、中立、効率といつた要請にも応える適切な課税方式であると考える。

八について

給与所得者について、特定支出の額が給与所得控除額を超える場合には、申告により、その超える部分を控除することができることとし、申告納税の途をひらくことは、公平感の維持、納税意識の形成の上で意義のあることと考える。

九について

今回の税制改革では、税負担についての給与所得者の不公平感に対処するため、所得税について十五万円、個人住民税について十二万円の配偶者特別控除を創設するほか、みなし法人課税を選択した場合の事業主報酬の額について制限を設ける等の措置を講ずることとしている。

十について

今回の税制改革では、現行の非課税貯蓄制度について、多額の利子が課税ベースから外れて所得種類間の税負担の不公平をもたらしているほか、高額所得者ほどより多くその恩典を受けているという現状にあること等に顧み、少額貯蓄非課税制度及び郵便貯金非課税制度を老人等所得の稼得能力の減退した者に対する利子非課税制度に改組した上、それ以外の利子所得については一定の税率による源泉徴収により他の所得と分離して課税することとしたものであり、これにより実質的な公平が図られるものと考える。

十一について

今回の税制改革においては、利子課税との権衡等を考慮し、有価証券譲渡益課税について、その課税対象を大幅に拡大することとし、「継続的取引」の基準となる売買回数を引き下げる等の措置を講ずることとしている。

十二について

今回の税制改革においては、個人の事業用資産の買換え等の特例について縮減を行うほか、時限的に、所有期間が五年を超える土地等の譲渡をした場合の譲渡所得を長期譲渡所得とするとともに、所有期間が二年以下である土地等の譲渡をした場合の事業所得等について更に重い税負担を求めることとしているが、これらの土地税制の改正は、全体として、この改革における資産性所得に対する課税の一層の適正化の見地から行うこととしているものである。

十三について

今回の税制改革では、法人税率を引き下げる一方で、賞与引当金の廃止、受取配当益金不算入制度の見直しを行い、また、中小企業等海外市場開拓準備金等についても積立率の引下げを行い法人税の課税ベースの拡大に努めているところである。

なお、貸倒引当金や退職給与引当金については、今後とも実態に即した見直しを行つていく所存である。

十四について

今般創設することとした売上税は、免税点が一億円であり全事業者の約九割が納税義務を免除されることや、飲食料品、社会保険診療、学校教育、住宅、一般の旅客輸送等国民生活に密接に関連する分野が多く非課税とされていることなどかなりの限定性を持つ制度となつており、御指摘は当たらないと考えている。

十五について

売上税の税率は法定することとしており、これを改正するためには国会の議決が必要であつて、将来税率の引上げが容易に行われるとの御指摘は当たらないと考える。

なお、ヨーロッパにおける付加価値税の税率の引上げは、そのほとんどが所得税減税等との組合せで行われていると承知している。

十六について

課税売上高一億円以下の事業者については原則としてその売上げに課税しないが、他面、税額票の発行が認められないこととなる。しかし、事業者の選択により、課税事業者となつて税額票を発行することができることも認めることとしているので、各事業者は取引上有利な方を選択することが可能であると考える。

また、一物二価が生じかねないとの御指摘については、財貨・サービスの価格の決定は、各事業者ごとに当該財貨等の需給関係等種々の要因を勘案し行われるものであると考える。

十七について

売上税の導入に当たつては、納税者の事務負担を最小限のものとする観点から、制度の仕組みを極力簡素で我が国の取引慣行になじむものにするとともに、指導、広報を十分に行うこと等により制度の円滑な定着に努めることとしている。

また、その執行に当たつては、既存の個別消費税の廃止等による要員の活用、事務の合理化、省力化等を図ることによつて極力増員数を圧縮し、簡素かつ効率的な体制で臨むこととしている。

十八について

税制改革関係の法律案については、現在、作業中であり、成案が得られ次第国会に提出する予定である。

なお、今回の税制改革については、所得課税の負担軽減、合理化とその財源措置の観点をも含めて、所得、消費、資産等の間で適切な均衡がとれた税体系を構築することを目的とするものであり、したがつて、包括的で整合性のある改革案を一体として構築することが何よりも肝要であると考えている。いずれにせよ、法案の具体的取扱いについては、現在検討を行つているところである。

参議院の原文

似た質問主意書

件名と質問本文の冒頭の意味が近いものを、前もって計算しておいた表から近い順に8件並べました(multilingual-e5-large)。同じ言葉を使っていなくても出ます。論点が少しずれていることもあります。

提出 1987年3月10日 木本 平八郎 答弁 1987年4月3日
参議院 第108回 第8号
提出 1980年11月26日 鈴木 一弘 答弁 1980年12月9日
提出 1988年4月6日 青山丘 答弁 1988年4月22日
衆議院 第112回 第23号検討してまいりたい ×1
提出 1999年2月3日 若松謙維 答弁 1999年3月16日
衆議院 第145回 第7号お答えすることは困難 ×1
提出 1987年5月14日 木本 平八郎 答弁 1987年6月9日
参議院 第108回 第18号お答えすることは困難 ×1
提出 1972年11月10日 野末 陳平 答弁 1972年11月17日
参議院 第70回 第2号

件名の語が重なる質問主意書

提出 2024年11月28日 原口 一博(立憲民主党・無所属) 答弁 2024年12月10日
提出 2022年4月20日 櫻井 周(立憲民主党・無所属) 答弁 2022年4月28日
衆議院 第208回 第50号
提出 2015年4月2日 緒方 林太郎(民主党・無所属クラブ) 答弁 2015年4月10日
提出 2011年12月7日 城内 実(自由民主党・無所属の会) 答弁 2011年12月16日
衆議院 第179回 第105号
提出 2011年11月15日 城内 実(国益と国民の生活を守る会) 答弁 2011年11月25日
衆議院 第179回 第50号
提出 2011年5月30日 浅野 貴博(民主党・無所属クラブ) 答弁 2011年6月7日
衆議院 第177回 第213号
提出 2011年3月4日 橘 慶一郎(自由民主党・無所属の会) 答弁 2011年3月15日
衆議院 第177回 第120号

この論点で次の質問を書くなら

アシストで並べる