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税制改革に関する質問
参議院 第108回 第8号
質問本文
税制改革に関する質問主意書
本国会に提出されている税制改革関連法案は、これまでの租税体系を大きく改編しようとするものであり、国民生活にも重大な影響を及ぼすものである。よつて、参議院での審議に先立ち、基本的な問題のいくつかを質しておきたい。
一 今回の税制改革は、全体として税収中立とするとしても、直接税(個人、法人の所得課税)を減税し、間接税を増税(売上税を導入)することとなるため、各分野別及び所得階層別の税負担分布は大きく変化することとなる。
政府は先に、所得階層別の税負担の変化についての試算を発表しているが、民間研究機関による試算とはかなりの食い違いが見られる。その食い違いの原因は、政府の試算では法人税減税の一部を個人に割り振るという非現実的な手法を用いていることによるが、ここに改めて所得階層別並びに法人・家計別の税負担の変化を明示されたい。
二 政府は、税制改革の目的は「税制のゆがみ・ひずみを是正し、税の重圧感を除去すること」であり、そのための税体系のあり方として、「サラリーマンの税の不公平を除去し、中堅以上のサラリーマンの税負担軽減」を行うことを強調している。
そうであるならば、当然の方策として、みなし法人等に係る所得分割制を廃止するとともに、給与所得控除額を引き上げるべきだと考えるが、改革案においてはこれらの点において全く措置されていない。その理由を明らかにされたい。
三 政府税制調査会の基本答申においては、現行の給与所得控除を、「勤務費用の概算控除」と「他の所得との負担調整のための特別控除」に二分できるものであるとし、新たに、勤務に伴う実額控除を認め、「勤務費用の概算控除」との選択制を導入すべきであることが明記されている。
然るに、改革案においては、実額控除(特定支出控除)を、給与所得控除の半額に相当する「概算控除」ではなく、給与所得控除全体との選択に変更しているのはいかなる理由によるのか。
また、特定支出適用の範囲を極端に圧縮し、常識的に当然視される背広、ワイシャツ、ネクタイ、靴等の勤務のための衣服費や職場の交際費等を一切認めず、結果的に実額控除制度の実効を無に帰せしめようとしている意図は何かを明らかにされたい。
四 単身赴任手当は、社命による単身赴任の結果生ずる新たな費用の一部を会社が負担するものであり、本来、出張手当と同様に非課税対象とされるべきものである。
今回の改革案においても、引き続いて課税対象とされているが、本手当はその性格上、当然非課税扱いとすべきだと思うが政府の見解を問う。
五 売上税は、食料や医療費等を非課税としても逆進性は依然として強く、家計支出の二~三パーセント程度の負担増は免れることはできない。そしてこの負担増は、課税最低限以下の低所得層においても回避することは不可能である。
さらに、所得税の税率改正において、最高税率は七〇パーセントから五〇パーセントへと二〇パーセント・ポイント引き下げるのに対し、最低税率は一〇・五パーセントから一〇パーセントへと、〇・五パーセント・ポイントしか引き下げないこととしている。
このように、今回の税制改革では、とくに低所得サラリーマンに負担増を強いることとしているが、その理由を明らかにされたい。
六 マル優等の少額貯蓄非課税制度の沿革は古く、その限度額は個人金融資産の状況に応じて増額され、国民の財産形成のテコとしての役割を果たし、また、定年退職者や国民一般の、老後・病気への備えあるいは住宅建設のための蓄積の支えとして定着している制度である。
これを一挙に廃止することについての国民生活に及ぼす影響を、政府はどのようにとらえているのかを明らかにされたい。
また、廃止するとしても、すでに金融機関等に預託している分については、預託者は少なくとも満期到来時までは利子非課税を前提として生涯の生活設計を組み込んでいるはずである。
今回の改革案では、既存の預託に係る分についても、法律施行日を基準として期間対応課税によることとしているが、これは不利益処分の法律不遡及の原則に反するのではないか。
従つて、課税に当たつては、少なくとも改正法施行の日以後に預け入れる分についてこれを適用すべきではないか。政府の見解を明らかにされたい。
七 マル優等の限定適用対象の一つに六十五歳以上の老人が挙げられている。しかし、サラリーマンの六十歳定年制の普及度もなお低きに止まつているのが現状であり、再就職の状況は厳しく、就職できても低水準の収入に甘んじなければならないのが現実である。このように、六十歳未満で退職を余儀なくされる一方において、六十五歳を過ぎてもなお高所得を維持し、資産を有する人も存在する。
従つて、年齢制限による少額貯蓄非課税制度の限定適用に当たつては、その年齢を五十五歳以上とし、所得制限を設けるべきだと考えるがどうか。
また、その他の適用対象である母子家庭、寡婦、身体障害者等の定義並びに適用範囲を明確にされたい。
八 利子課税の改革において、現行の課税貯蓄の利子に係る三五パーセントの源泉分離選択課税の税率までも一律二〇パーセントの分離課税とすることは、高額の貯蓄を有する資産家階層にとつては大幅な税負担軽減となる一方で、低所得者にとつては確定申告による二〇パーセントの源泉徴収分の過払い税金還付の道をも閉ざすことになるなど、資産家優遇、低所得者冷遇の、きわめて妥当性を欠く結果となる。
従つて、現行の課税貯蓄の利子に係る三五パーセントの源泉分離選択課税制度はそのまま残し、二〇パーセントの源泉課税分については総合課税すべきだと考えるが、政府の見解を伺いたい。
右質問する。
政府答弁書
一について
税制改革が家計の負担に与える影響については、今回の改革の趣旨からみて、サラリーマンの就職、結婚から退職までの生涯の各段階ごとの収入や支出の態様に応じて家計のゆとりが変化するという点に着目して、税負担の変化を考えることが重要である。
なお、その際には、いかなる税も究極的には個人に帰着するものとされており、法人減税の影響も考慮に入れる必要がある。
このような観点から検討すると、今回の税制改革により、働き盛りで収入が比較的高いものの教育、住宅等の支出がかさみ、あまりゆとりのない中堅層を中心に負担が軽減されるものと考える。
二について
今回の税制改革では、税負担についての給与所得者の不公平感に対処するため、みなし法人課税を選択した場合の事業主報酬の額について実質的な限度額を設けるほか、所得税について十五万円、個人住民税について十二万円の配偶者特別控除を創設する等の措置を講ずることとしている。
給与所得控除については、マクロ的にみて給与の収入金額に対する給与所得控除額の割合が三十パーセントに達し、既に相当の水準となつていることもあり、今回の税制改革では、その控除額の引上げを行わないこととしたものである。
三について
今回の税制改革において創設することとしている特定支出控除制度は、給与所得者が通常その勤務する過程において支出を余儀なくされる支出項目のうち、その額が相当程度となると認められる単身赴任者の往復旅費等の特定支出について、そのような支出による給与所得者の負担をしん酌するという趣旨から、その額が給与所得控除額を超える場合には、申告により、その超える部分を控除することができることとするものである。これにより、給与所得者についても申告納税の途がひらかれることとなり、公平感の維持、納税意識の形成の上で意義のあることと考える。
四について
単身赴任手当は、扶養手当、僻地勤務手当等と同様に給与の一部であり、税制上非課税とすることは適当でない。
五について
売上税においては、飲食料品、社会保険診療、学校教育、住宅、一般の旅客輸送など国民生活に密接に関連する分野の多くを非課税にするといつた配慮が払われており、いわゆる逆進性は大幅に緩和されている。
また、所得税の税率構造については、大半のサラリーマンが包摂される収入階層に対して適用される税率を十パーセント一本又は十パーセントと十五パーセントの二本とし、全体としての税率の刻みも六段階に削減するなど、大幅な累進緩和を図ることとしている。最低税率の十パーセントは、先進諸国の中ではかなり低い水準であり、課税最低限が国際的に既に高い水準にあることからすれば、実際上考えられ得る最低の率である。所得税の最高税率は、その水準が高すぎる場合には、勤労意欲、事業意欲等に好ましくない影響を与えることが懸念されることから、社会の活力を維持増大する見地に立ち、今回の税制改革では、全体の累進構造をなだらかにし、最高税率を引き下げることとしたものである。なお、改革後においても、我が国の所得税と個人住民税を合わせた最高税率は、先進諸国の中で最も高い水準にあること、また、課税最低限の水準も既に高いことなどから、我が国の所得課税は、国際的にみても下に軽く上に重いものとなつている。
なお、今回の税制改革に当たつては、真に手をさしのべるべき人々に対しては所要の配慮を払うこととしている。例えば、老年者控除を二倍に引き上げるとともに、利子課税につき老人、母子家庭、身体障害者等に対し現行の少額貯蓄非課税制度及び郵便貯金非課税制度を維持するなど、適切な措置を講ずることとしている。
今回の税制改革は、全体としてみると、働き盛りで収入が比較的高いものの教育、住宅等の支出がかさみ、あまりゆとりのない中堅層を中心に負担が軽減されるものと考える。
以上のように、今回の税制改革は、低所得のサラリーマンに負担増を強いるものではない。
六について
非課税貯蓄制度の見直しは、現行制度の下で多額の利子が課税ベースから外れて所得種類間の税負担の不公平をもたらしているほか、高額所得者ほどより多くその恩典を受けているという現状にあること等に顧み、税負担の実質的な公平を図る見地から行うこととしたものであり、老人、母子家庭、身体障害者等真に手をさしのべるべき人々に対しては現行の少額貯蓄非課税制度及び郵便貯金非課税制度を維持することとしている。
今回導入しようとする利子課税制度については、昭和六十二年十月一日以後の利子等に対して適用することとしており、同日前に預入等された預貯金等については、国民の金融資産の選好に不測の影響を与えることのないように配慮する趣旨から、同日以後の期間に対応する利子等の部分につき適用し、その課税額の算出に当たつては期間按分の方法によることとしているところであつて、御指摘の不利益処分の法律不遡及に反するものではない。
七について
年齢六十五歳以上の者について所得制限を付さないで改革後の少額貯蓄非課税制度及び郵便貯金非課税制度の適用対象者としたのは、預貯金等の元本の継続的な管理が必要とされるといつた事情、国の老人福祉に係る諸制度の適用年齢等を勘案したものである。
また、その他の適用対象者である母子家庭、寡婦、身体障害者等の具体的な範囲は、遺族基礎年金受給者である被保険者の妻、寡婦年金受給者、身体障害者手帳の交付を受けている者等である。
八について
今回の税制改革では、現行の非課税貯蓄制度について、多額の利子が課税ベースから外れて所得種類間の税負担の不公平をもたらしているほか、高額所得者ほどより多くその恩典を受けているという現状にあること等に顧み、少額貯蓄非課税制度及び郵便貯金非課税制度を老人等所得の稼得能力の減退した者に対する利子非課税制度に改組した上、それ以外の利子所得については一定の税率による源泉徴収により他の所得と分離して課税することとしたものであり、これにより実質的な公平が図られるものと考える。
また、利子所得について一定の税率による源泉徴収により他の所得と分離して課税する方式は、利子所得の発生の大量性、その元本である金融商品の多様性、浮動性といつた特異性に適合した課税方式であり、かつ、簡素、中立、効率といつた要請にも応える適切な課税方式であると考える。
なお、今回の税制改革においては、勤労者の財産形成住宅(年金)貯蓄については十パーセントの税率による源泉分離課税を適用することとしている。この結果、利子課税全体としては、老人等真に手をさしのべるべき人々についての非課税制度、勤労者の財産形成住宅(年金)貯蓄についての十パーセントの税率による源泉分離課税、その他の貯蓄一般についての二十パーセントの税率による源泉分離課税の三段階に区分して対処されることになる。
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