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物価高対策としてのエネルギー自給率向上及び産業基盤強化等の必要性に関する質問主意書
参議院 第219回 第3号趣旨が明らかではない ×1
質問本文
近時の物価高、特に輸入物価の上昇は、エネルギーを始めとする原材料価格の高騰や為替レート等による影響が大きく、資源の多くを輸入に頼る我が国の経済の脆弱性を改めて浮き彫りにしている。特に、円安基調の下でエネルギー資源の輸入コストが増大し、鉱物性燃料の輸入額は二〇二〇年の約十一兆円から二〇二四年には二十五兆円を超える規模へと拡大した。このことは、国富の流出を招くのみならず、家計や企業活動に深刻な打撃を与えている。
我が国で講ずべき物価高対策は、こうした輸入依存からの脱却を図ることである。ばくだいな輸入コストが生じるエネルギー分野においては、国産の再生可能エネルギー(以下「再エネ」という。)や蓄電池等を活用し、エネルギー自給率を向上させ、自立化を目指すことが重要である。
二〇一二年七月の固定価格買取制度の開始以降、我が国における再エネの導入は進展してきているものの、太陽光パネルや風力発電の大型風車、更には蓄電池においても、主要な機器・部材については海外製品への依存度が高い。日本企業は技術開発に優れ、初期市場は確保するものの、市場の拡大に伴い産業基盤の強化が十分に図られず、海外勢に市場シェアを奪われる状況が繰り返されている。
物価高から国民生活を守るため、政府は、中長期的視野に立ったエネルギー自給率の向上に向け、責任ある制度設計とその実施に取り組むべきである。
また、国民生活の更なる向上を図るためには、我が国の将来を見据えた産業戦略、研究開発強化策等を示すことも必要である。我が国の産業の国際競争力が高まれば、輸出の拡大を通じた海外からの所得の流入が期待できる。政府は物価高対策の実施に当たり、多額の国債発行を余儀なくされているが、これは、将来世代へ負担を先送りすることに他ならず、財政の健全性を確保する上で看過できない。我が国の経済を長期的に展望すれば、投資を促進し、産業の各分野において世界の先導的地位を確立するための施策を講ずることが必要である。
以上を踏まえて、以下質問する。
一 我が国の二〇二三年度のエネルギー自給率は、わずか十五・三%である。政府は、二〇四〇年度におけるエネルギー需給見通しにおいて、エネルギー自給率三割から四割程度を達成するとしているが、その目標を確実に達成することが重要である。目標の達成に向けた戦略・施策を具体的に示されたい。また、物価高対策としてのエネルギー自給率向上の重要性について、政府の見解を示されたい。
二 政府は、二〇四〇年度における電源構成について、再エネが四割から五割程度になるとしている。エネルギー自給率向上には、国産のエネルギー源である再エネや蓄電池の導入拡大が必須であると考える。エネルギー自給率向上に向けた現状の課題について、政府の認識を示されたい。また、エネルギー自給率向上の確実な実現に向け、政府はどのような計画を策定するのか、具体的に示されたい。
三 太陽光パネル、大型風車、蓄電池分野において、海外勢にシェアを奪われてきた過去の失敗について、政府はその責任をどのように受け止め、要因をどのように分析しているか示されたい。
四 我が国が、かつてのように様々な産業において世界の先導的地位を確立するためには、新たな産業への積極的な投資を行うとともに、投資すべき分野の選択が必要であると考える。いかなる産業戦略を策定・実行し、世界市場の獲得を目指していくのか、政府の具体的方針について示されたい。
五 ペロブスカイト太陽電池、洋上風力、蓄電池の各分野は、エネルギー安全保障と産業競争力強化の両立に資すると考えられる。これらの分野において、国内技術の確立、産業基盤の強化を確実に実現していく必要があると考えるが、その具体的な工程を示されたい。
六 世界市場を獲得するための次世代技術については、重点的に予算を割いて研究開発を支えていくことが必要である。また、研究開発を担う人材の数・質を確保することが不可欠である。近年、我が国では、科学技術分野の研究開発予算が十分に確保されていないとの指摘が各方面からなされている。大学等における基盤的研究費の不足は、中長期的には人材育成に支障を来すなど我が国の国益を毀損しかねない。研究開発を支える予算の拡充や人材育成について、政府の取組方針を具体的に示されたい。
七 我が国で次世代技術の研究開発を推進していくためには、義務教育や高等学校における教育の果たす役割が大きい。質の高い研究者を増やすためには、我が国の将来を担う子供たちへの教育の質を確保することが不可欠と考える。そのためには質の高い教育を行うことができる教師の確保が極めて重要である。教師不足が課題となっている状況下において、質の高い教師を十分に確保する必要性について、政府の認識を示されたい。また、教師の確保に当たっては、抜本的な制度改正や改革が必要であると考えるが、質の高い教師を確保し、我が国の科学技術を再び発展させるための政府の方針について、具体的な計画や数値目標を含めて示されたい。
右質問する。
政府答弁書
一の前段及び二について
お尋ねの「エネルギー自給率向上に向けた現状の課題」については、エネルギー源について化石燃料に過度に依存している状況からの脱却、再生可能エネルギーの導入拡大、原子力の活用等が挙げられる。また、お尋ねの「目標の達成に向けた戦略・施策」及び「エネルギー自給率向上の確実な実現に向け、政府はどのような計画を策定するのか」については、政府としては、「エネルギー基本計画」(令和七年二月十八日閣議決定)において、令和二十二年度におけるエネルギー需給の見通しを示すものとして一定の前提の下で令和七年二月に経済産業省が作成した「二千四十年度におけるエネルギー需給の見通し(関連資料)」が「実現した場合、二千四十年度エネルギー自給率は三~四割程度が見込まれる」としており、同計画に記載しているとおり、「再生可能エネルギー、原子力などエネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い電源」の活用などに取り組む方針である。
一の後段について
政府としては、「エネルギー基本計画」に記載しているとおり、「エネルギー分野のインフレーションが契機となり、食品など様々な分野において国際的なインフレーションが発生した。我が国においても、電力需給ひっ迫やエネルギー価格の高騰が生じるなど、石油危機以来のエネルギー危機が危惧される極めて緊迫した事態に直面することとなった」との認識の下、お尋ねについて、「化石燃料への過度な依存から脱却し、エネルギー危機にも耐え得るエネルギー需給構造への転換を進めていく」ことが重要であると考えている。
三について
お尋ねの「太陽光パネル」については、令和七年三月二十六日の衆議院経済産業委員会において、武藤経済産業大臣(当時)が「政府としても、この間、固定価格買取り制度等、いわゆるFIT導入を進めた一方で、量産体制の確立ですとかサプライチェーンの強化などの面では、必ずしも対応が十分ではなかった」と受け止め、「欧州ですとか、特に中国の海外市場が猛烈なスピードで拡大をする中で、原材料のシリコンの安定調達、そして市場の拡大に対応した十分な規模の設備投資がなされず、厳しい価格競争にさらされ、急速にシェアを落としていった」と述べているとおりである。
お尋ねの「大型風車」については、同年六月六日の参議院本会議において、同大臣(当時)が「現在、大型風車を製造できる日本企業がないのは、・・・事業環境の変化への対応が官民共に十分ではなかったとの反省があります」と受け止め、「世界の洋上風力市場が急拡大をした二千十年代後半に風車の受注や大型化競争で海外企業に後れを取ったことなどが背景だと考えています」と述べているとおりである。
お尋ねの「蓄電池」については、同年四月十一日の同委員会において、同大臣(当時)が「従来の政策というものは、世界に先行して日本が技術優位を確立した液系のリチウムイオン電池、これについて、量産投資は民間企業に委ね、そして、次世代技術である全固体電池、この方に技術開発を我々は政策資源を集中してきた」として、「蓄電池産業政策に対する反省については、有識者を交えた官民で議論を行いまして、二千二十二年に蓄電池産業戦略を策定した際に整理をした」と受け止め、「世界では、例えばお隣の国ですとか、政府支援の強力なものを背景に、液系リチウムイオン電池の投資競争が激化をして、中国並びに韓国企業が技術で日本に追いつき、コスト面も含めて国際競争力で逆転をされてしまった、まさに日本の蓄電池の世界シェアの低下につながったものと分析をしている」と述べているとおりである。
四について
お尋ねについては、御指摘の「世界市場の獲得」も見据えた我が国の産業の国際競争力の強化に向けて、国際競争の激化、急速な技術革新の進展、産業構造の変化等の我が国の産業を取り巻く情勢の変化を勘案しつつ、令和七年十月二十四日の所信表明演説において、高市内閣総理大臣が「我が国の課題を解決することに資する先端技術を開花させることで、日本経済の強い成長の実現を目指します」及び「AI・半導体、造船、量子、バイオ、航空・宇宙、サイバーセキュリティ等の戦略分野に対して、大胆な投資促進、国際展開支援、人材育成、スタートアップ振興、研究開発、産学連携、国際標準化といった多角的な観点からの総合支援策を講ずることで、官民の積極投資を引き出します」と述べている方針に沿って、具体的な政策を不断に検討し、実施していく考えである。
五について
御指摘の「国内技術の確立」及び「産業基盤の強化」に係るお尋ねの「工程」について、御指摘の「ペロブスカイト太陽電池」については、「エネルギー基本計画」において、「二千二十五年までに二十円/キロワットアワー、二千三十年までに十四円/キロワットアワー、二千四十年までに十円~十四円/キロワットアワー以下の水準を目指して技術開発を進める。また、国内において強靱な生産体制を確立させることが重要であり、二千三十年を待たずにギガワット級の構築を目指す。官民関係者が総力を挙げて、世界に引けを取らない規模とスピードで、量産技術の確立、生産体制整備、需要の創出に三位一体で取り組み、二千四十年には約二十ギガワットの導入を目標とする」としている。
御指摘の「洋上風力」については、技術開発を行う事業者等に対してグリーンイノベーション基金を通じた開発費用の一部補助等の継続的な支援を行っており、「洋上風力産業ビジョン(第二次)」(令和七年八月八日洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会策定)において、「我が国におけるライフタイム全体での国内調達比率を二千四十年までに六十五パーセントにする」との産業界の目標を定めている。また、「エネルギー基本計画」においても「特に浮体式洋上風力発電について、技術開発によるコスト低減と量産化、生産・設置基盤や最適な海上施工方法の確立を通じ、国内サプライチェーンの強化や国際展開を進めるとともに、産業界と教育・研究機関が連携した人材育成を強力に推進する」としている。
御指摘の「蓄電池」については、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画二〇二五年改訂版」(令和七年六月十三日閣議決定)において、「蓄電池産業戦略に基づき、二千三十年に向けた国内外の蓄電池・部素材・製造装置の製造基盤の更なる拡大及び二千三十年頃の本格実用化に向けた全固体電池の研究開発を進める」こととしており、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律(令和四年法律第四十三号)第七条の規定に基づき特定重要物資として政令で指定された蓄電池等の生産基盤の整備等に関して、安定供給確保支援基金を通じて事業者等を支援するとともに、蓄電池の開発を行う事業者等に対してグリーンイノベーション基金を通じてその費用の一部補助等を継続的に行っている。
六について
政府としては、お尋ねの「研究開発を支える予算の拡充」については、「統合イノベーション戦略二〇二五」(令和七年六月六日閣議決定)において、「科学技術・イノベーションを巡る国家間の競争を勝ち抜くため、官民が連携・協力して引き続き必要な研究開発投資を行う」としていることなどを踏まえ、その確保に取り組むこととしている。また、お尋ねの「人材育成」については、同戦略において、「世界トップ水準の大学院教育を行う拠点形成や教育研究の国際化等の大学院改革の推進とともに、博士課程学生・若手研究者の処遇向上を進める」としていることなどを踏まえ、人材育成の強化に取り組むこととしている。
七について
前段のお尋ねについては、令和七年五月二十一日の参議院本会議において、あべ文部科学大臣(当時)が「公教育の再生に向け、教師に優れた人材を確保する必要があると認識しております」と述べているとおり、御指摘のように「質の高い教師を十分に確保する必要」があると認識している。
後段のお尋ねについては、御指摘の「抜本的な制度改正や改革」及び「再び発展させる」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、次代を担う科学技術人材の育成のための取組を、義務教育段階及び高等学校段階から総合的に推進することは重要であると認識しており、これらの教育を担う御指摘の「質の高い教師」を「確保」するための「政府の方針」として、「経済財政運営と改革の基本方針二〇二五」(令和七年六月十三日閣議決定)において「教師に優れた人材を確保するため、働き方改革の更なる加速化、処遇改善、指導・運営体制の充実、育成支援を一体的に進める。二千二十九年度までを緊急改革期間と位置付け時間外在校等時間の月三十時間程度への縮減を目標とし、学校・教師の担う業務の適正化やDXによる業務効率化、教育委員会ごとの取組状況の見える化、PDCAサイクルの強化、指導・運営体制の充実に取り組む。(中略)地域枠の活用を含む教員養成大学等の機能強化、養成段階からの教師人材の育成・確保の仕組みの改革、研修の充実、奨学金返還支援の学部段階を含む更なる検討に取り組む」としている。