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ジュゴンの保護に関する質問
参議院 第147回 第23号お答えすることは困難 ×1承知していない ×2
質問本文
ジュゴンの保護に関する質問主意書
ジュゴンは、海牛目ジュゴン科の水生哺乳類の動物である。その標準和名はジュゴンと呼ぶものの、沖縄をはじめ南西諸島では、ざん、ざんのいゆ、あかんがいゆ等と呼んでおり、人魚のモデルとも言われている。また、沖縄では古来ジュゴンは「竜宮城」への使者であり、ニライカナイからの神の使者である、とも言い伝えられている。
ジュゴンは、東経三〇度~一七〇度、北緯三〇度~南緯三〇度の範囲のインド洋と太平洋の熱帯・亜熱帯の浅い海域に生息している。オーストラリアを中心に、東アフリカ、インド、インドネシア、フィリピンなどが主な分布域であり、我が国の沖縄本島東海岸がアジア太平洋地域の北限に当たる。つまり、沖縄本島東海岸は、ジュゴンが周年生息し繁殖する我が国唯一の海域であり、しかも生息範囲がたいへん狭く、生息数も少なく、他の海域の個体群から孤立しているとみられることから、絶滅の恐れが強く、緊急の保護対策が必要とされる地域個体群であると考えられている。
沖縄では石器時代からジュゴンを捕獲していたという。八重山群島の新城島は明治以前の旧藩時代にジュゴンを年貢として課せられていた、と立論する学者もいる。地球の歴史、生命誕生の歴史、人類の歴史、沖縄の歴史に照らすと、沖縄本島東海岸にははるか古代からジュゴンが生息し、人間とジュゴンは共に生き、生かされる共生の関係を保っていたものと考える。すなわち、ジュゴンの生息環境は人間にとっても大切な環境であり、ジュゴンの生息環境を守ることは、人類全体の使命である、と言っても過言ではない。
そのジュゴンの生息環境が、開発や漁業や軍事基地建設によって破壊されようとしている。わけても、我が国唯一のジュゴン生息地と思われる沖縄本島名護市辺野古沿岸域に日米両政府が建設を計画している米軍普天間飛行場の代替基地は、ジュゴンの生息環境を壊滅せしめるに違いない、と思慮される。
政府は、文化財保護法でジュゴンを「天然記念物」に指定しているが、その保護策は極めて不十分であると言わざるを得ない。今や「絶滅危惧種」となったジュゴンを保護するのは我が国の国際社会に対する責務であり、生物と人類の未来に対する責務である。
以下質問する。
一、ジュゴンネットワーク沖縄(代表世話人・棚原盛秀、謝名元慶福)や粕谷俊雄三重大学教授らの調査によると、沖縄本島東海岸域は国内で唯一のジュゴン生息地であり、生息環境を緊急に改善しないと、絶滅の可能性が高いと指摘している。ジュゴンの保護を図るうえでその生息確認調査、えさ場である海草藻場の現状調査及び個体識別調査等が必要である。政府は、過去これらの調査を実施したことがあるか、あればその調査結果を、また、今後これらの調査の必要性、調査計画の有無等について明らかにされたい。
二、私は、平成十年四月六日の沖縄及び北方問題に関する特別委員会で環境庁に対し、ジュゴンの生息調査、生態調査等の実施を求めた。これに対し、環境庁は「御指摘の海洋動物についてでございますが、海域の自然環境の重要な要素と考えてはございます。しかしながら、海洋動物は一般にこれまで生息状況についての知見が非常に少なく既存資料も少ないという状況にございまして、調査手法そのものが確立されてございません。そういったことで、ジュゴンにつきましては、環境庁といたしまして直ちに広域的な調査を行うことは困難というふうに考えているところでございます。」と答弁している。
右の環境庁答弁は、ジュゴンの保護に対する政府の消極的な姿勢を示したものであり、到底承服しがたい。環境庁が言う「生息状況についての知見が非常に少ない」、「既存資料も少ない」ということの根拠及び「調査方法そのものが確立されていない」から生息調査や生態調査が実施できないとする根拠を明らかにされたい。
三、政府は、ジュゴンの生息状況や生態についての国内、国外の研究者、自然保護団体等の知見並びに資料を速やかに、かつ、体系的に収集すべきと考えるが、その対応と方策を明らかにされたい。
四、私は、平成十一年十二月八日の予算委員会で環境庁長官に対し、稀少生物の宝庫であるキャンプ・シュワーブ水域に米軍普天間飛行場の代替施設をつくることについての所信をただした。これに対し、清水嘉与子環境庁長官は「…その規模だとか位置でありますとか、あるいは計画の内容もまだ決まっていない段階でございます。この段階で立地の是非についてコメントすることは差し控えたいと思います。ただ、仮にこの当該地域で代替施設の設置が具体化するということになりました場合には、自然環境など環境保全に十分配慮したものになるように当庁としても適切に対処するつもりでございます。」と答弁している。
米軍普天間飛行場の代替施設の移設場所として稲嶺沖縄県知事、岸本名護市長はキャンプ・シュワーブ水域の名護市辺野古沿岸域を候補地として容認した。現在、当該地域での建設に向け日米両政府間の協議が進められている。私は、当該地域への移設に断固反対である。確かに、現段階では位置、規模、工法は確定していないが、政府は、いかなる規模、方法であれキャンプ・シュワーブ水域の名護市辺野古沿岸域での米軍基地建設は容認できない旨意見表明すべきと考えるが、その対応を明らかにされたい。また、当該地域で代替施設が具体化した場合の自然環境保全への適切な対処策についても具体的に明らかにされたい。
五、文化財保護法及び水産資源保護法において、同法に基づく具体的なジュゴンの保護対策についていかなる行政上の措置が講ぜられているのか明らかにされたい。また、ジュゴンの生息水域を「保護区」として指定する法的対応策についても明らかにされたい。
六、沖縄本島東海岸のジュゴンは、生息数が少ない、生息範囲が狭い、孤立した個体群であると考えられることから、絶滅の恐れが大変強い。また、生息の確認されたキャンプ・シュワーブ水域は、沖縄県が作成した「沿岸における自然環境の保全に関する指針」では保護度の最も高い「評価ランク1(自然環境の厳正な保護を図る区域)」に位置付けられている。
よって、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」に基づき、ジュゴンを「緊急指定種」に指定し、さらに「生息地等保護区」として生息が確認された水域を指定すべきと考えるが、その対応を明らかにされたい。
七、ジュゴンを保護するうえでその生息場所の保全は不可欠である。サンゴ礁や藻場にとどまらず海辺や山原(やんばる)の森林、川の保全を含む生物の多様性を保全することがジュゴンの保護に必要であると認識すべきである。山原の森には、ノグチゲラ、ヤンバルクイナなど、地球上でここにしかいない固有種が数多く生息しており、森、川、海が一体となって生物の多様性に富み、豊かな自然環境を形成している。そのため、世界自然保護基金(WWF)などの国際自然保護団体が、沖縄本島北部の環境保全に大きな関心を持っている。
よって、「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」に基づき、返還される米軍北部演習場を含めキャンプ・シュワーブ水域名護市辺野古沿岸域を一体として世界遺産に指定登録できるようにすべきと考えるが、その対応を明らかにされたい。
八、ジュゴンの生息を脅かす人間活動、とりわけ漁業との関係も解決を図るべき深刻な課題である。沖縄では一九七九年以降、漁網によるジュゴンの混獲が九件(うち三件が刺し網、六件が定置網)報告されている。適法な漁業活動とはいえ、ジュゴンの生息地における刺し網や定置網の設置について、漁民が不利益を被らない方法で、適切な漁業活動の調整がなされるよう行政指導や対策が緊急に求められていると考えるが、その対応を明らかにされたい。
九、環境庁が環境省になるに当たって、環境保全、野生生物保護に関わる法律を、さらに拡充すべきである。「鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律」には、海生哺乳類は含まれていないが、ジュゴンについては早急にこの法律に含めるべきである。また、同法によって、沖縄本島北部に「国設鳥獣保護区」を設定すべきと考える。さらに、「自然公園法」による国立公園の指定、同法による特別保護区、海中公園地区等の設定も必要と考えられるが、その対応を明らかにされたい。
十、政府は、キャンプ・シュワーブにおける在沖米国海兵隊の訓練について、特に海域における訓練に関し、その内容、規模、頻度、環境や生物への影響について把握しているか。また、同基地からの廃棄物や廃水の処理について把握しているか。把握していれば明らかにされたい。
右質問する。
政府答弁書
一について
環境庁においては、全国の藻場、干潟及びサンゴ礁の状況を把握する調査を行っている。その中で、沖縄県内においても昭和五十三年及び平成元年に調査を実施しており、十一年間で〇・四パーセントの藻場の減少を確認している。また、ジュゴンについては、平成九年度に文献等の資料の収集を行ったところであるが、生息確認、個体識別等を目的とした現地調査は実施していない。なお、今後の調査については、未定である。
二について
国内においては、ジュゴンの生息に関する散発的な確認報告はあるが、組織的及び継続的な調査が行われていないため、全国的な分布や生態に関する知見や資料が少なく、地域に即した効果的な調査手法の設定が困難な状況にある。このようなことから、直ちに広域的調査を行うことは困難と判断したものである。
三について
環境庁においては、ジュゴンの生息状況等について、平成九年度に国内外の文献等の資料の収集を行うとともに、それ以降においても情報収集に努めているところである。
四について
普天間飛行場の代替施設(以下「代替施設」という。)については、普天間飛行場の移設に係る政府方針(平成十一年十二月二十八日閣議決定)において、建設地点を「キャンプ・シュワブ水域内名護市辺野古沿岸域」とするとともに、代替施設の工法及び具体的な建設場所については、地域住民の意向を尊重するため、沖縄県及び地元市町村とよく相談を行い、最善の方法をもって対処することとしている。
また、同閣議決定において、代替施設については、沖縄に関する特別行動委員会(以下「SACO」という。)最終報告における普天間飛行場移設に伴う機能及び民間飛行場としての機能の双方の確保を図る中で、安全性や自然環境に配慮した最小限の規模とすることとしている。代替施設の工法及び具体的な建設場所が決定していない現段階で、自然環境保全のための具体的な対処策を示すことは困難であるが、代替施設の建設に当たっては、環境影響評価を実施するとともに、その影響を最小限にとどめるための適切な対策を講じることとしている。
五について
ジュゴンは、文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)第六十九条第一項の規定により、天然記念物に指定されており、同法第八十条第一項の規定による文化庁長官の許可を受けない限り、捕獲を始めとする現状変更等を行うことはできない。
文化財保護法には動物の生息地を天然記念物に指定する制度もあるが、ジュゴンについては種としての指定により保護が図られている。
ジュゴンについては、水産資源保護法(昭和二十六年法律第三百十三号)第四条第一項に基づく水産資源保護法施行規則(昭和二十七年農林省令第四十四号)第一条第一項の規定により、北緯三十度の線以南かつ南緯三十度の線以北の海域において採捕を禁止している。
水産資源保護法には特定の海域において保護を図るための保護水面制度もあるが、ジュゴンについては先に述べた措置により、広範な海域において保護が図られている。
六について
ジュゴンは、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(平成四年法律第七十五号)第四条第四項に規定する国際希少野生動植物種に指定されており、同法第五条第一項に規定する緊急指定種の指定対象とはならない。
また、同法上、緊急指定種を対象とする生息地等保護区の制度はない。
七について
世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約(平成四年条約第七号)に基づく自然遺産の世界遺産一覧表への記載には、同条約第十一条5の規定に基づき世界遺産委員会が定めた基準に照らして、その自然環境が顕著な普遍的価値を有すると認められるものであるとともに、国内法上その自然環境を保護するための措置を採ることが必要とされているところである。
現在、環境庁においては、沖縄本島北部三村にまたがるやんばる地域において自然公園法(昭和三十二年法律第百六十一号)第二条第二号に規定する国立公園を指定することを念頭に置いて、調査及び検討を進めている段階であり、やんばる地域や辺野古沿岸域の世界遺産一覧表への記載について検討を行う段階にはないと考えている。
八について
ジュゴンについては、五についてで述べたように、北緯三十度の線以南かつ南緯三十度の線以北の海域において採捕を禁止している。
また、「水産資源保護法施行規則の一部を改正する省令の制定について」(平成五年四月一日付け五水研第二百九号水産庁長官通達)により、ジュゴンを意図せずに捕獲した場合には、生きているものは生きたまま速やかに海に戻すよう、都道府県を通じて関係漁業者等に対し指導を行っているところである。
九について
中央省庁等改革に伴い環境省を設置するに当たり、専ら環境の保全を目的とする事務については、環境省に一元化することとなり、従来環境庁が主として所管していた法律に加え、従来他省庁が主として所管していた廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号)等の法律も環境省の所管となる。また、その目的及び機能の一部に環境の保全が含まれる事務については、環境省が環境の保全の観点からの基準の策定等の事務を所管し、関係府省と共同で事務を行うこととなる。
ジュゴンなどの海生哺乳類は、水産資源保護法の対象となる海洋性の水産動物であることから、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律(大正七年法律第三十二号。以下「鳥獣保護法」という。)の対象とはなっていない。
沖縄本島北部に位置する与那覇岳周辺の区域については、鳥獣保護法第八条ノ八第一項の規定に基づき、現在沖縄県知事により鳥獣保護区が設定されているところであるが、「国設鳥獣保護区の設定について」(平成八年十二月十二日付け環自野第五百四十六号環境庁自然保護局長通知)の国設鳥獣保護区設定計画において、当該区域を国設鳥獣保護区に設定すべき地域として位置付けており、今後、地元関係者の理解を得ながら国設鳥獣保護区の設定に努めてまいりたい。
沖縄本島北部における国立公園の指定については、SACO最終報告に基づき、北部訓練場の過半が返還されることを機に、平成八年度から自然環境等の調査を実施しているところであり、また、平成十年度からは、地元有識者を含めた検討委員会において、やんばる地域において国立公園を指定することを念頭に置いた保全活用方策について検討を進めているところである。
十について
政府としては、我が国に駐留するアメリカ合衆国軍隊(以下「米軍」という。)がキャンプ・シュワブにおいて行っている訓練の詳細については承知していないが、米軍は、当該施設及び区域の陸上区域において射撃訓練を実施する場合又は当該施設及び区域の水域のうち別図の第三区域(第一区域、第二区域及び第四区域を除く。以下同じ。)において訓練を実施する場合には、訓練期間等を事前に那覇防衛施設局長に通告することとなっている。その通告によれば、陸上区域における訓練内容は実弾射撃、非実弾射撃及び廃弾処理であり、訓練期間は通年となっており、また、第三区域における訓練日数は平成九年から平成十一年までの三か年の平均で年間約八十日となっている。
当該施設及び区域における訓練による環境や生物への影響については具体的に把握していないが、米軍が訓練を実施するに当たっては、我が国の公共の安全に妥当な考慮を払うこととなっており、その一環として環境の保全にも考慮が払われるものである。
また、当該施設及び区域における廃棄物や廃水については、米軍において、我が国の法令を尊重して適切に処理されているものと承知している。
なお、政府としても、当該施設及び区域における排水口付近の海水について昭和五十三年から毎年調査を行っているが、これまで異状は見られない。
別図 (キャンプ・シュワブにおけるアメリカ合衆国が使用を許されている水域)
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