AI自動売買
LLMや機械学習で売買判断を自動化し、検証・判断基盤の分離・自己改善・従量課金までを設計する概念。
AI自動売買(AI自動取引・AI trading)とは、LLMや機械学習を活用して売買判断を自動化し、暗号資産・株式・FXなどの運用を行うシステムの設計・運用・収益化に関する概念。Kurageのプロダクト群では、単なるシグナル生成だけでなく、検証プロセス・判断基盤の分離・自己改善ループ・課金モデルまで含めた実践的な設計が扱われている。
背景
kurage-repos に収録された公開リポジトリ群には、kfreqai・kfxai・kcbrain・kfxbrain・ksbrain・kfinanalyst・ktajp・nofx・openalice-jp など実際に動くAI取引プロダクトの設計がまとまっている。kurage-lps は各LP、kurage-articles-index は関連技術解説の参照先となる。
kurage-articles-index は 2026-05-18 から 2026-09-19 までの技術解説記事 458 本を「タイトル+topics タグ+URL」で並べた索引で、取引系の記事は 2026-07 以降に集中する。FreqAI の自己改善実験(07-10)、entry_threshold の検証(07-15 頃)、特徴量が本丸だという結論(07-16)、判断と執行の境界(07-24)、判断APIの独立と証拠追跡(07-25)、Hyperliquid の非カストディ・マルチテナント執行(07-26)、OpenAlice-JP の日本語セルフホストと x402 化(07-30)、FinRobot 日本語 fork と TradingAgents-JP の SaaS 化(07-31)と、実装の関心が「検証 → 分離 → 課金」へ順に移っていく流れが索引から読み取れる。
共通する思想は「検証を先に行い、判断と執行を分離し、失敗も含めて公開する」こと。実行環境はペーパートレードないし dry-run 主体で、判断APIは従量課金の頭脳として独立している。
主要な設計パターン
検証を先に行う(ペーパートレードと段階的リスク移行)
資金を投入する前に、過去データや仮想環境で戦略を検証する。paper-trading は勝率と実損益の乖離など判断ロジックの罠を発見するために重要である。
- 取引系は初期状態を paper / dry-run に固定する運用が徹底される。kfreqai は現在ペーパートレード(dry-run)のみ。kfxai は初期設定が paper で、live モードは
OANDA_ENVIRONMENT=liveとKFXAI_LIVE_ACK=I_UNDERSTAND_THIS_USES_REAL_MONEYを同時に設定しないと起動しない。nofx は資格情報なしの検証手段として MEXC Paper Trading(mexc)を備え、10,000 USDT の模擬残高で注文・手数料・損切り・利確をローカル処理する。 - kfxai は機械学習による方向予測を約1万取引の walk-forward 検証にかけ、全時間軸で優位性なしと判断して棄却。残ったのは東京レンジ→ロンドンブレイクアウト(円ペア限定)だけだった。
- kfreqai の研究サイクルはバックテストで「もっともらしい閾値変更」が 7,000 USDT 超の仮想損失になることを検出して自動却下する。負けた仮説も台帳に残り、同じ失敗が再提案されない。
- entry_threshold のような単一パラメータは、勝率65%でも負けるという逆説を生む。高い勝率が小さな利益と大きな損失の組み合わせで相殺される構造を、閾値を動かしながら実データで確認する作業が検証の中心になる。
- 「出口をいくら弄っても黒字にならない」という実測も重要である。利確・損切りの調整ではなく、相関ペアの追加のような入力側(特徴量)の変更が赤字から黒字への反転をもたらした事例が示されている。
判断基盤の独立API化と信頼境界
売買の「判断」部分を独立したAPIとして切り出し、執行を担うOSS本体と分離する。kcbrain(暗号資産)・kfxbrain(FX)・ksbrain(日本株)がこの役割を担い、ai-judgment-backend として整理される。「勝てるbotは売らない」— コード(本体)はOSSで全公開し、「判断」だけを従量課金で量り売りする設計は、この分離を収益モデルまで一貫させたものである。
- 判断APIはブローカー・取引所の認証情報を持たず、注文数量も決めず、発注もしない。これは「頭脳はお金に触れない」という trust-boundary の原則に基づく。nofx でも「モデルは提案し、ランタイムが決定する」構成をとり、Go製実行層がポジション上限・レバレッジ上限・損切り/利確・ドローダウン自動クローズ・エントリー間隔制限などをモデルの手の届かない場所で強制する。nofx のペーパートレード検証では、AIに判断を委ねる範囲と数値ルールで縛る範囲の境界が実際に追跡されている。
- kfxbrain は vendor/ に固定した上流OSS(TradingAgents・FinGPT・AI Hedge Fund・FinRobot・FinMem)を構造化APIとして公開するが、Gemma 4 が失敗した場合に別LLMやテンプレートへフォールバックせず、明示的エラーを返す。
- ksbrain は株分析に専念し、非公式APIへの暗黙フォールバックやデータ捏造をしない。利用者が登録した証拠IDを判断の出典として突合する evidence-traceability を実装し、根拠が無ければ「証拠不足」と返す。
- openalice-jp は AI トレーディング OSS を日本語既定・Docker・HTTPS でセルフホストできるようにし、判断ツールを HTTP 402 で組み込む経路を用意する。
- vendor化するOSSはコミット固定・許諾的ライセンスのみ・出典明記という oss-vendoring の作法を徹底する。
x402による収益化
AI判断を HTTP 402(Payment Required)による従量課金で提供する仕組み。kcbrain/kfxbrain/ksbrain はいずれも x402 による1コール単位の販売に対応し(通常 $0.05)、Coinbase CDP や Bankr、PayAPI、Agent402、RapidAPI など複数のマーケットプレイスへ公開されている(ai-agent-marketplace)。OSS本体は無償公開しつつ、判断だけを売るビジネスモデルは x402 を軸に実践されている。
- ktajp は1分析=1クレジットの3択課金を実装する。x402 $0.05(Bankr/Base USDC)、20,000 urlai(Base送金+オンチェーン検証)、PayPal 200円のサーバー側照合。
- kfinanalyst は任意の0xウォレット連携を持ち、将来のx402課金や urlai 特典に備えている。
- kfreqai は暗号資産ニュースのリスクチェックと流動性サイズチェックをエージェント向けに1コール単位で販売しており、ボット自身のエントリーを制御するのと同じコード経路を使う。
- openalice-jp は Kurage Brain 判断ツールを HTTP 402 従量課金で組み込み、セルフホストしたOSS本体と外部の判断APIを疎結合に保つ。
- tradingagents-jp をマルチユーザー SaaS へ発展させた ktajp、finrobot を日本語ファーストに fork した kfinanalyst は、いずれも「画面(UI/SaaS)」と「頭脳(判断API)」を分けた構成をとる。
特徴量設計とモデル正則化
取引ボットの収益性は特徴量とモデル設計に大きく左右される。kfreqai は FreqAI(LightGBM)で多数ペアの5分足を処理し、トリプルバリア分類(利確ラインと損切りラインのどちらに先に触れるか)を用いる。677,729 予測点の較正監査で過学習を数値特定し、木を浅くする+early stopping の正則化により、検証期間で初めての30日窓黒字(+1,100 USDT・勝率60.3%)に到達した。
- 相関ペアを1本追加するだけで赤字が黒字に反転した事例は、「出口(利確・損切り)ではなく入口(特徴量)が本丸」という原則を実測で裏づける。BTC/ETH との相関特徴量が市況全体の文脈を与え、単独ペアでは拾えないレジーム変化をモデルに渡す。
- 相関ペアの追加は検証データでの過学習リスクを伴うため、追加した特徴量が同一期間・同一条件のベースライン比較で有意に効くことを確認してから採用する。
LLMによる自己改善ループ
kfreqai には、FreqAIの機械予測に加えて四つのループが常時稼働する。
- 予測ループ — FreqAI(LightGBM)が1本のローソクごとに各ペアの短期的値動きを予測。BTC/ETHとの相関特徴量で市況全体の文脈を取り込む。
- レジーム認識ループ — 1時間ごとにローカルLLMが現在の市場レジームを分類し、戦略が同時に持てるポジション数を調整する。
- リスク指示ループ — 1日3回、LLMが直近のレジーム判定と値動きを確認して risk-on / risk-off / neutral の粗いリスク姿勢を設定する。新規エントリーのサイズ決定はこの指示を読んでから行われる。
- 検死・研究ループ — クローズした全トレードを1時間ごとにLLMが検死する。エントリー前後の値動き・最大有利/不利乖離・エグジット理由はコードで計算し、LLMは数字を作らず解釈だけを書いて1行の教訓として記録。1日1回の研究パスは、1週間分の教訓と実績統計から制約付きDSLで最大2本の検証可能な仮説を提案する。
仮説は自動的にバックテスト可能な variant 戦略へ変換され、同一期間・同一条件で約160ペアのベースラインと機械比較される。P&Lを改善しドローダウンを有意に悪化させない仮説だけが採用候補となり、人間のレビューを経て本番戦略へマージされる。成功も失敗もすべて hypothesis_ledger.jsonl に記録される。決済ごとの検死が実データと照合し、「不運な事故」と「予兆のあった損失」を区別する点は ai-news の発想と重なる。これは単なる判断の自動実行を超え、ai-agent として戦略自体を進化させる方向性である。
非カストディ執行とマルチテナント
hyperliquid のように秘密鍵や資金を預けずに委任できる取引所では、非カストディのままエージェントに執行を任せられる。kfreqai の Hyperliquid 対応では、1プロセスで複数テナントを扱う執行設計と、kcbrain/kfxbrain の AI 判断ゲートを組み合わせる。テナントごとに資金・鍵・設定を分離しつつ、判断APIは共有部品として呼び出す構造は、ai-judgment-backend と ai-agent-marketplace の交点にある。
バイブトレーディングとしての運用
「仮説は人間、コードはAI、判定は数字」— 取引戦略のアイデアを日本語でAIに伝え、バックテストで検証しながら育てる運用スタイルを vibe-trading と呼ぶ。kfreqai と kfxai はこのループを実際に回すシステムで、戦略アイデアは人間が出し、コードはコーディングエージェントが書き、採否は数字が決める。kcbrain / kfxbrain / ksbrain は「いま入ってよい相場か」というAI判断ゲートを差し込む部品として機能し、kfinanalyst と ktajp はリサーチ・反証材料集め・仮説づくりの材料集めを担う。nofx は同じ考え方を実行環境まで含むターミナルとして実装している。
市場の実態把握という留保
AIエージェントに仕事を受注させる市場(ai-agent-marketplace)は、登録してみると期待したほどの案件供給がないという実測も記録されている。判断APIを並べるだけでは収益は自動化されず、需要側の成熟度を見極める必要がある。バックテストの成績と、外部に対する説明可能性(証拠の提示)が、判断を売る側の実質的な差別化要因になる。
主なツールと実装例
- kfreqai — FreqAI/LightGBM +LLM研究ラボを備えた暗号資産自動取引ボット(ペーパートレード)。Hyperliquid 対応ではマルチテナント執行を扱う
- kfxai — OANDAの価格・注文APIを使うFX自動運用ボディ。paper / practice / live モードと判断バックエンド切替を持つ
- kcbrain/kfxbrain/ksbrain — 判断基盤API群。kfxbrain はFX向け構造化判断、ksbrain は証拠追跡つき日本株分析
- kfinanalyst — 会員ウォッチリストに対する日本語マーケットレポートのオンデマンド生成(マルチテナントSaaS)。FinRobot を日本語ファーストに fork した系譜
- ktajp — TradingAgents-JP のマルチユーザー版。複数AIエージェント討論による日本株判断とクレジット課金
- nofx — 戦略が言語モデルであるOSSトレーディングターミナル。Goランタイムがハードリスク制限を強制
- openalice-jp — 日本語既定・Docker・HTTPS でセルフホストできる AI トレーディング OSS。判断を x402 で外部化
- hyperliquid — 非カストディ対応の取引所/Agent Wallet委任
- freqtrade — 暗号資産向けOSS取引ボット基盤
- oanda — FX価格・注文APIの提供元
- tradingagents-jp/finrobot — 日本株・日本語向けAI分析のOSS基盤
関連する概念
- ai-judgment-backend — 判断APIの分離設計
- paper-trading — 検証プロセスと段階的リスク移行
- trust-boundary — 判断と執行の責任境界
- x402 — 判断の従量課金
- evidence-traceability — 判断根拠の追跡可能性
- oss-vendoring — コミット固定・許諾的ライセンスでのOSS利用
- ai-agent — エージェントによる取引実行と自己改良
- vibe-trading — 仮説・コード・数字の分業による戦略開発
- ai-agent-marketplace — 判断APIのマルチプレイス展開と需要側の実態
- ai-news — ニュースを考慮した判断と事後検証
- automation — 自動化全般
- oss — オープンソース公開
Kurage.AI に質問する
