AI判断バックエンド(AI判断レイヤー)
プロダクト本体から分離され、差し替え・従量課金できるLLM判断層と、その安全設計パターン
AI判断バックエンドとは、プロダクトの主要ロジック(注文執行・記事生成・データ保存など)から分離され、LLMによる分析・判断を担う差し替え可能な層です。kfreqai・kfxai・kfxbrain・kcbrain・ksbrain・url2brainなどKurageシリーズで共通採用されています。README群(kurage-repos)やLP(kurage-lps)では、この分離が「頭脳はお金に触れない」「TRUST BOUNDARY」として明文化されています。取引所・ブローカー認証情報なし、数量決定なし、執行なし。静かなフォールバックはせず、失敗は見えるエラーで返し、最終的なリスクゲートは「ボディ」側が持つ——という設計がbrain系APIすべてに共通します。
設計パターン
- OSSボディ+交換可能なブレイン(open-core with a metered brain): kfreqaiはリポジトリ単体でLLM・GPU・APIキーなしに動作し、判断レイヤーだけを環境変数で選ぶオープンコア方式をとります。LPの表現ではOSS Body(安全はコードで固定)とIntelligent Brain(知能は交換可能)に分かれます。
- バックエンド切替: 環境変数(例:
KFREQAI_JUDGMENT_BACKEND、KFXAI_JUDGMENT_BACKEND)で以下を選択します。 rule_based: 外部LLM不要の決定的基準実装。全機能は動くが判断は「dumb but safe」。local_llm: ollama上のgemma 4など自前LLM(local-llm)。障害時はルールへフォールバックする例があります。x402: 有料判断API(x402)。LLMを自前で持たず、従量課金で外部判断エンジンを利用します。
kfreqaiはrule_basedを新規クローンの既定とし、x402はライブダッシュボードと同じ判断エンジンを遠隔HTTPで呼ぶと説明。kfxaiはlocal_llmでOllamaのGemma 4を使い、障害時はルールへ安全にフォールバックします。
- 信頼境界: AI判断レイヤーは注文API・認証情報・注文数量の決定権を持ちません(trust-boundary)。kfxaiのREADMEは「AI判断レイヤーは注文API、認証情報、注文数量を持ちません。最終リスク判定はOSS bodyだけが行います」と明記。kfxbrainも「APIは判断だけを返し、ブローカー認証情報、注文API、注文数量の決定権を持たない」と謳います。nofxはGo製ランタイムがモデルを上書きできないハードリスク制限(ポジション上限・レバレッジ上限・交換所側の損切り/利確・ドローダウン自動クローズなど)を強制します。
- 「画面」と「頭脳」の分離: 記事「TradingAgents-JPを公開し、判断基盤ksbrainを独立APIにした設計——日本株AIで『画面』と『頭脳』を分ける」が示す通り、UI/執行部と知能部を分けるのがKurage流です。公開面はkurage-php-gatewayがX認証とCSRFを担い、内部APIは共有トークンだけを受け取る構成でも分離が貫かれます。
- LLMの振り分け: 無料枠・管理者にはローカルLLM、課金ユーザー・一般ユーザーにはdeepseekを割り当てるパターンが複数READMEに登場します(kfreqai/kfxai/kfxbrain系の実装を参照)。
ホスト型判断API(Kurage brainシリーズ)
Kurageエコシステムでは、この判断バックエンドを独立した従量課金APIとして公開しています。これらはコミット固定・出典明記でOSS知能をvendor化し(oss-vendoring)、「頭脳はお金に触れない」設計を共通に持ちます。
- kcbrain(暗号資産): 5つのOSSトレーディング知能(ai-hedge-fund-crypto・CryptoTradingAgents・Vibe-Trading・LLM_trader・HELM Agents)をvendor化。DeepSeek V4 Flashで稼働し、ローカルGemma 4 12Bも設定で選択可能。通常1コール$0.05(JPYC 7.5)。単発判断もマルチエージェント連鎖も同一料金。
- kfxbrain(FX): FX自動売買ボディから独立して利用できるGemma 4による構造化判断API集。tradingagents・fingpt・ai-hedge-fund・finrobot・finmemのLLM知能をvendor化し、分析・討論・売買案・リスク判定・取引後レビュー・改善仮説などをHTTP API化します。有料レールはDeepSeek、自前運用はローカルGemma 4を選択可能。TradingAgents完全グラフは約5.5分のマルチエージェント討論で$0.50、他は全て$0.05。全レスポンスに出典を明記します。
- ksbrain(日本株・米国株): 根拠を追跡できる日本株インテリジェンスAPI。入力された証拠ID以外を判断の出典として返さず、証拠が無ければ「証拠不足」と明示します(evidence-traceability)。J-Quantsは設定済みAPIキーで同期し、キーが無ければデータを捏造せずHTTP 503を返します。EDINETは設定状態を公開しますが0.1.0では自動同期対象外。TradingAgents-JPがリファレンス実装。全スキル$0.05。
- url2brain(URL解析・生成・投稿): URLを1つ渡すとSNS告知文とブログ記事を生成する、URL2AI Publisherの「頭脳」。9スキル、1回$1.00。ホスト版はDeepSeekで実行し、OSS版は
url2pubとして自前運用できます。投稿系エンドポイントはconfirm_post=trueが無ければ実際には投稿せずdraft_readyを返す安全モデルを踏襲します。
有料レールはDeepSeek(deepseek-v4-flash)、自前運用ではローカルGemma 4を選択できます。決済はx402で1コールごと(USDC on Base / JPYC on Polygon)に行われ、402チャレンジ自体がオンボーディングを兼ねます。
提供チャネルと「払う前に試せる」検証
LPが一貫して強調するのは、同一の頭脳をあらゆるチャネルで公開し、支払い前に検証手段を組み込んでいる点です。
- 無料のブラウザWorkbench: 本番と同じAPIを叩くライブコンソール。エンドポイントを選び、プリセット(BTC/USDT、EUR/JPY)か自分のevidence JSONを貼れば構造化された判断が返ります。バックエンド(DeepSeek/Gemma)の死活表示付き。
- 402チャレンジでの事前検証: 全ての有料エンドポイントは未払いリクエストにHTTP 402を返し、正確な価格・ウォレット・ネットワークを事前確認できます。curlで叩くと
maxAmountRequiredやpayToが返ります。 - 機械可読カタログ:
.well-known/x402.jsonで全パスを公開(kcbrain 24パス、kfxbrain 36パスなど)。 - マーケットプレイス公開: Coinbase CDP x402・Bankr・PayAPI Market・Agent402・JPYC・Virtuals ACP・RapidAPI(カード決済)に同一プロバイダー(bittensorman)として掲載。kfreqaiはニュースリスクチェックと流動性サイズチェックをx402/USDC(Bankr)またはRapidAPIで単体購入できます。OSS自前運用ではマーケットプレイスの従量課金は不要です。
判断バックエンドを利用するプロダクト
- kfreqai:
KFREQAI_JUDGMENT_BACKENDでrule_based(既定)・x402・local_llmを切替。現状はpaper trading(dry-run)のみで、予測・レジーム認識・リスク指示・事後レビューと仮説検証の4ループを持ちます。LLMはレジーム分類・リスク指示・取引後レビュー・改善仮説を担当し、仮説は約160ペアのバックテストで機械的に判定されます。Hyperliquid対応版ではkcbrain(crypto)とkfxbrain(FX)をAI判断ゲートとして毎時組み込み、見送りや逆方向エントリーを止める設計です。 - kfxai:
KFXAI_JUDGMENT_BACKENDで選択。local_llmはOllamaのGemma 4で判断し、障害時はルールへ安全にフォールバック。x402はkfxbrainの有料APIを使います。初期設定はpaperで実口座へは注文しません(paper-trading)。地合い分類・リスク指示・取引反省・改善仮説をメータードブレインに委ね、スプレッド制限・日次損失制限などの固定リスクゲートはボディが持ちます。 - kfinanalyst: 会員ごとにウォッチリスト(日本株・米国株・暗号資産・FX)を持ち、AIアナリストが日本語マーケットレポートをオンデマンド生成するSaaS。一般ユーザーはDeepSeek、admin(既定xb_bittensor)のみ運営内部のローカルLLM。
KFINANALYST_LLMで全ユーザー強制上書き(検証用)。kcbrain/kfxbrain/ksbrainの所見をレポートに添付可能です。 - ktajp: TradingAgents-JPのマルチユーザー版。一般ユーザーの分析はDeepSeek固定、adminのみ内部設定・課金対象外。kcbrain・kfxbrain・ksbrainの所見をレポートに添付し、判断の裏付けとします。
- nofx: 戦略そのものが言語モデルであるAIトレーディングターミナル。各トレーダーは市場構造を読む→決定→執行→理由を記録するループを回しますが、実行はGo製ランタイムが強制する固定リスク制限の内側だけです。日本語コミュニティ版はkcbrainを標準AIプロバイダーとして接続し、LPでOSS Body / Intelligent Brain構成と説明しています。
- openalice-jp: OpenAlice-JPをx402対応AIエージェントにし、Kurage Brain判断ツールをHTTP 402従量課金で組み込んだ事例があります。
- finrobot: FinRobotを日本語ファーストにforkし、Kurage判断API(x402従量課金)を接続。Kurage FinanalystというSaaSに発展しました。
- tradingagents-jp: TradingAgents-JPをマルチユーザーSaaS化し、Kurage TradingAgentsとしてkcbrain・kfxbrain・ksbrainの所見をレポートに添付します。
また、kvtuberはAgent-executing VTuberとして、これら判断バックエンドを含む複数のAIシステムを自然言語の仕事依頼につなぎ、記事・動画・URL・Gitコミットなどの実成果物を返すキャラクター実行基盤です(agent-executing-vtuber)。
判断バックエンドの応用範囲
同じ「核心はコード、LLMは補助」の考え方は取引以外にも広がっています。kseoは判定にLLMを使わず決定論的ルールで採点し、LLMは改善案の文章生成だけに利用します。kproofreadは決定論的検査を先に実行し、LLMは矛盾指摘の補助に留め、最終判断は照査者が行います。kurl2grはサイト概要を基盤にGPT Researcherが外部調査し、記事化の文章だけをLLMが担当します。これらはAI判断バックエンドの設計思想が、LLMの判断を信頼境界の内側に入れない形で応用された例です。
安全設計との関係
トレード系プロダクトではpaper-tradingを既定モードとし、実資金モードは明示的な環境変数と確認文字列の両方が揃わない限り起動しません(例: kfxaiのliveモード、nofxの資金・ロット制限)。AI判断バックエンドの失敗挙動は「ルールへフォールバック」か「明示エラー」のどちらかに統一し、黙って別モデルやテンプレートへ切り替えません。kfxbrainも「Gemmaが失敗した場合にテンプレートや別LLMへフォールバックせず、明示的なエラーを返す」と明記します。判断APIは「渡されたevidenceに基づくLLMの見解」であり、データが足りない場合は捏造せず「足りない」と正直に返します。公開面ではkurage-php-gatewayがX認証とCSRFを担い、内部APIは共有トークンだけで守ることで、テナント分離と認証の一元化を実現します(tenant-isolation)。
主な関連記事
kurage-articles-indexに収録されている、本概念を直接実践・解説する記事:
- 「勝てるbotは売らない ― コードはOSSで全公開、『判断』だけをx402で量り売りする設計」
- 「NOFXを日本語化し、kcbrainをDeepSeek V4 Flash対応にした:AI自動取引OSSと知能APIを分離する」
- 「TradingAgents-JPを公開し、判断基盤ksbrainを独立APIにした設計——日本株AIで『画面』と『頭脳』を分ける」
- 「FinRobotを日本語ファーストにforkして、Kurage判断API(x402従量課金)を繋いだ — Kurage FinanalystというSaaSになるまで」
- 「OpenAlice-JPをx402対応AIエージェントにする — Kurage Brain判断ツールをHTTP 402従量課金で組み込んだ話」
- 「kfreqaiをHyperliquidに対応させた設計——非カストディ委任・1プロセス多テナント執行・kcbrain/kfxbrainのAI判断ゲート」
- 「NOFXは数値で売買するのか、AIが決めるのか?ペーパートレードで追った判断とリスク制御の境界」
関連ページ
- ai-agent — エージェントとしての判断実行
- vibe-trading — AI判断を活用したトレードスタイル
- x402 — 有料判断APIの決済レール
- local-llm — ローカルLLM実行基盤
- trust-boundary — 判断層と実行層の分離原則
- paper-trading — 実資金を使わない安全な検証モード
- evidence-traceability — 判断根拠の追跡
- oss-vendoring — OSS知能のコミット固定・出典明記
- kurage-php-gateway — X認証を一手に担う公開ゲートウェイ
- tenant-isolation — ユーザー単位のデータ分離
- agent-executing-vtuber — 判断結果を成果物として届けるUI
- kurage-repos — 本概念が登場する主要プロダクトREADME群
- kurage-lps — 各プロダクトLPで明文化された設計
See also: kurage-articles-index, kurage-products
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