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地震防災のための当面の強化策に関する質問主意書
衆議院 第99回 第8号
質問本文
衆議院議長 福田 一 殿
地震防災のための当面の強化策に関する質問主意書
去る五月二十六日正午、秋田県沖に発生した「日本海中部地震」による地震・津波災害は、秋田、青森両県をはじめ、北海道から島根県にいたる日本海側に、かつてない甚大な被害をもたらした。地震後二ヵ月になろうとする今なお、被災者はもちろん、地域社会全体に大きな影響を与えている。
被災者の立場にたつた住宅復旧など、キメ細かな救済策を講じるとともに、農業・漁業・中小企業などの経営再建、秋田港や能代港などの復旧を急ぎ、地域経済の再建、雇用不安の解消をはかるため、国の大幅な財政援助が緊急に求められている。
今回の地震が、死者百四名、住宅の損壊一万一千四十三戸など、かつてない地震災害となつたことに対する政府の防災行政上の責任を明らかにしつつ、当面の防災対策強化について、以下質問する。
一 地盤災害対策について
今回の地震災害の特徴の一つは、旧河川敷や沼地、砂丘地などに建設された住宅、公共施設等に被害が集中したことである。被災者は「業者から買つた土地の地盤が悪いなど知らなかつた」、「個人住宅は(復旧費用が)全部自前、国の特別融資を受けてもローンは二重払いしなければならない」と、窮状を訴えている。
1 今回の地震で、地盤災害が拡大された原因として、�@秋田港における地震動加速度が二百二十二ガル(cm/sec2)と、設計時の予想加速度百ガル(cm/sec2)を大きく上まわつており、誤つた予想のもとに設計が行われていたこと、�A一般住宅などを含めた地盤の安全対策が、都市計画法などによつて義務づけられてはいるが、実効ある指導がなされず、危険な宅地が販売されてきたこと、などからみて、行政の責任は重大である。この際政府は、この行政責任について明確にすべきであると考えるがどうか。
2 砂地盤の液状化については、過去二十年間に、新潟地震(一九六四年)、十勝沖地震(一九六八年)、えびの地震(一九六八年)、宮城県沖地震(一九七八年)などで確認されており、さらに、明治以来の地震についてみると、日本列島全体の埋立または沖積砂地盤に確認されている。
砂地盤の液状化対策をはじめとするいわゆる軟弱地盤対策を確立することは、緊急の課題である。
軟弱地盤地域について全国的な実態調査を実施し、その結果を公表すること。また、住宅や公共施設、周辺地域に重大な影響を及ぼす原子力発電所や石油コンビナートなどについて、設計時の予想加速度、設計震度の見直しを検討すべきであり、そうした面から安全性について再検討すべきであると考えるが、具体的対策をどのように講じているのか、明らかにされたい。
二 災害復旧について
1 「秋田港」の復旧について、同港は秋田県はもちろん東北地方の住宅建設資材、日常生活品の重要な陸揚げ港である。復旧は緊急を要するものと考えるが、その財政的負担は秋田県にとつても莫大なものである。自治体まかせとするのではなく、国の大幅な財政援助のもとで、復旧を急ぐためどのような対策を講じているのか、国直轄部分の復旧対策も含めて明らかにされたい。
2 秋田県男鹿市、若美町など被災自治体の多くが公債比率一三%を超えるという財政状態であること、地域的に集中した災害であることから、災害復旧対策を自治体まかせにしたのでは、被災自治体財政は一層圧迫され、地域経済再建はほど遠いものになつてしまう。
公共土木施設災害復旧事業に係る「激甚災害」、「局地激甚災害」の指定基準を見直すなど、被災自治体への国の財政援助を強めることが必要である。災害であるからこそ、全国的な援助が必要と考えるが、以上の点につき具体的対策を明らかにされたい。
3 災害復旧にあたつては、災害対策基本法第八十八条第二項にいう「再度災害の防止のため」行う関連事業を特例的なものとせず、耐震強度の見直しを含めた改良復旧を原則とすることが必要である。その積み重ねが、災害に強い国土を作ることにもなるのである。
「原形復旧」を規定している公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法、農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律の改正を含めて、検討すべきと考えるがどうか。
4 住宅の復旧対策については、「災害援護資金」の貸付限度額や所得制限を引き上げるなど、融資対策を講じるとともに、復旧を個人まかせにするのではなく、宅地の安全対策や具体的な復旧作業に対しても、責任ある対策を講ずるべきと考えるが、明確にされたい。
三 津波対策について
津波警報など防災情報の伝達体制については、漁船や海中作業員、港湾労働者などとともに、つり人、海水浴客や観光客への徹底をはかるため、地域防災計画の総点検、防災無線の整備などを緊急に実施すること。防災無線については、停電時の対策を含めたキメ細かな運用について早急に確立すべきであるが、政府の対策はどうか。
とりわけ、観光客や海水浴客(湘南海岸では一日百万人ともいわれている)に対する津波防災対策は盲点となつており、観光基本法第九条の精神に照らし、観光行政という面からも対策を講じるべきと考えるが、その対策を明らかにされたい。
四 地震防災対策の強化について
1 去る六月八日、秋田市における総理の発言、「地震があれば津波が来るのは常識であつた。そういう点では政府も……地震に対する備えがなかつた」に関して、わが党野間友一議員が政府の見解をただしたのに対し、加藤国土庁長官は、「東海大地震……に対しては、政府としても相当取つ組んでおります。しかし、日本海中部地震ということでは、それはもう国民全部がびつくりされた」との答弁を行つている(六月十六日、衆院災害対策特別委員会)。
これは、これまでの政府の地震防災対策が、東海大地震などに集中され、秋田県西部など、「特定観測地域」には手薄であつたと理解してよろしいのか。そうだとすれば、地震予知技術が必ずしも確立されていない段階で、特定の地域に、予知を前提とした対策に事実上限定している(それさえも十分とはいえない)政府の責任は重大であり、是正すべきと考えるがどうか。
2 東海大地震に備えるとした地震防災対策強化地域における地震対策緊急整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律による財政援助について、わが党は立法の際にも、対象となる地域と事業の拡大の必要を指摘してきたところである。
今回の地震災害の反省の上に、対象地域を少なくとも「特定観測地域」にまで拡大し、五ヵ年計画などの年次計画をもつて地震防災対策を具体的に強化することが必要と考えるがどうか。
3 地震対策緊急事業に対する財政援助は、昭和五十九年度末で期限切れとされているが、その進捗は、五十七年度末現在四三%という状況(予算執行予定額比、推定)である。さらに財政援助を増大し、期間を延長して事業の推進をはかるべきであると思うがどうか。
同時に、地震・津波災害から国民の生命と財産を直接守るべき防災予算は、圧縮・削減するのではなく、充実をこそすべきであると思うがどうか。
右質問する。
政府答弁書
一について
1 港湾の施設の耐震設計は、地震動加速度、地震の頻度等から求められる震度期待値等を考慮して行われているところであるが、秋田港の場合も、通常用いられている再来年数七十五年の震度期待値等を考慮してその設計が行われたものであり、妥当なものであつたと考えている。
また、地盤の軟弱な土地において行われる開発行為については、都市計画法(昭和四十三年法律第百号)の規定に基づき、水抜きの実施等安全上必要な措置が講じられるよう指導している。
2 地盤に関する調査としては、国土庁の推進している土地分類調査による表層地質についての調査、工業技術院地質調査所の実施している地質調査等があり、それぞれその成果は、縮尺五万分の一の地図等により公表されている。
これにより沖積層等軟弱地盤の分布の概要を知ることができるが、これらの調査は、震災対策のみを目的としたものではないので、軟弱地盤の具体的な対策のためには、個別の精査が必要となる。
公共施設等の構造物については、個々の施設を整備する場合に、あらかじめボーリング調査を実施する等により、個別に地盤を調査し、軟弱地盤である場合にはその対策を講じている。
原子力発電所については、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)による原子炉の設置許可に係る安全審査等において、耐震設計をも含めて十分に安全が確保されることを確認している。
石油コンビナートについては、消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)及び高圧ガス取締法(昭和二十六年法律第二百四号)により、施設の態様、施設を設置する場所の地域区分及び地盤区分、施設の規模等に応じた設計震度を設定して、これに耐え得るものとしている。
二について
1 秋田港の岸壁等の公共土木施設の災害復旧は、公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法(昭和二十六年法律第九十七号)に基づく災害復旧事業として、港湾管理者はもとより、国においてもこれを実施している。
このうち、国が実施する災害復旧事業については、秋田港の機能を一日も早く回復させるため、昭和五十八年度中に最大限の復旧工事を実施し、昭和五十九年度までに、すべての復旧工事を完了する予定である。
2 被災自治体の財政負担の軽減については、公共土木施設災害復旧事業等各種災害復旧事業に対する高率補助の適用、地方負担に対する地方債の充当、当該地方債の元利償還金に対する普通交付税措置等により配慮している。
公共土木施設災害復旧事業に係る激甚災害指定基準の見直しについては、激甚災害制度の趣旨を踏まえ、災害の発生状況、国及び地方公共団体の財政状況等を勘案しつつ慎重に検討することとしている。
3 公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法(昭和二十六年法律第九十七号)及び農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律(昭和二十五年法律第百六十九号)に基づく災害復旧事業においては、原形復旧が著しく困難又は不適当な場合には、これに代わるべき必要な施設を設置すること、また、必要な場合には、災害関連事業を活用して改良復旧を実施することとしており、再度災害防止については、現行の災害復旧制度の運用によつて、十分配慮をしているところである。
4 災害援護資金の貸付けは、被災世帯の生活の立て直しに資するためのものであり、現行の貸付限度額は低利の福祉的な貸付けとしては妥当な水準と考えている。また、所得制限の基準額については、毎年所得水準の向上を勘案して引上げ措置を講じており、本年も七月にその引上げを行つたところである。
住宅の災害復旧対策については、住宅金融公庫において災害復興住宅の建設等及び宅地防災工事に係る低利貸付けを行つており、災害復興住宅の建設等に係る貸付けについては、本年七月、貸付限度額の引上げを行つたところである。
三について
日本海中部地震の経験にかんがみ、津波対策を強化するため、津波警報関係省庁連絡会議を設置し、観光客及び海水浴客を含む公衆並びに船舶に対する津波警戒の徹底等について申し合わせるとともに、地方公共団体を始め関係機関に対し指導を行つている。
なお、防災無線については、地方公共団体が早期に整備し得るよう積極的に助成策を講じてきており、施設の整備に当たつては、災害時に十分機能し得るよう、施設の設置場所、風圧対策、耐震対策等のほか、停電時に備えての非常電源設備の常備及び電源容量の確保等についても従来から指導しているところである。
四について
1 現在の地震予知技術の水準においては、海洋型のマグニチュード八程度の大規模な地震について、その発生の前兆現象を相当の確度をもつて捕そくできる可能性があり、当面、このような地震の発生が懸念されている東海地域について、地震の予知を前提とした震災対策が進められているところである。
その他の地震に対する対策についても、国と地方の協力の下に、�@都市防災化の推進、�A防災体制の強化と防災意識の高揚、�B地震予知のための観測・研究の推進に重点を置いた震災対策を実施しているところであり、今後ともその強化を図つてまいりたい。
2 地震防災対策強化地域における地震対策緊急整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律(昭和五十五年法律第六十三号)が適用される地震防災対策強化地域は、�@大規模な地震が発生するおそれが特に大きいこと、�A地震の直前予知が可能であることを前提として指定されているものである。当該地域においては、地震の発生に備えて避難地・避難路、緊急輸送道路、緊急輸送関連港湾等を緊急に整備しているところであるが、それ以外の地域についても、特定観測地域を含めて、治山治水、道路、港湾、都市公園等公共事業に関する五箇年計画等に基づき、計画的な震災対策の推進と防災性の強化が図られているところであり、今後ともその積極的な推進に努めてまいりたい。
3 地震対策緊急整備事業については、計画年度内に、できる限り事業の進ちよくが図られるよう、今後ともその促進に努めてまいりたい。
また、震災対策予算については、国の財政状況等を勘案しつつ、地震予知の推進、防災体制の強化、都市防災化の推進等を重点にその充実に努めているところである。
右答弁する。
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