セルフホスティング
SaaSを借りず自社サーバーでアプリとデータを自ら運用する方式。Kurage商品群の共通前提。
セルフホスティングとは、SaaSを借りるのではなく、自社のサーバーやレンタルサーバー上でアプリケーションを自ら運用し、データを自社管理する方式です。kurageのApp Store商品群はこの思想を全面に打ち出しており、kurage-productsで紹介される商品は「ソースコード同梱」「月額ゼロ」「自社サーバー内で完結」を共通の売りにしています。kurage-articles-index(2026年5月〜9月の全458本の記事索引)からも、OSSを自前運用するセルフホスティングがKurageの開発・発信の中心テーマの一つであることが見て取れます。
特徴
- データの所有権: メモ・予定・顧客情報・音声・意見データ・住所・物件情報など、すべてのデータが自社サーバーのファイルやSQLiteに保存され、他社サービスに預けない。
- 月額ゼロ・買い切り: クラウドサービスの利用料は発生せず、かかるのは自前サーバーやVPSの費用だけ。Kurage App Storeの価格も無料/5,500円/55,000円/110,000円/165,000円/220,000円という買い切りの段階で、導入後の追加課金がない。外部の有料APIを使わないことも繰り返し明記される。
- 展開方法の幅: 共有レンタルサーバーにFTPで置くだけで動くself-contained-php-app型から、Docker/VPSで本格運用するOSS日本語導入キット型まで、規模やセキュリティ要件に応じて選べる。
- DB不要: 多くの1ファイルPHP製品はSQLiteやファイル保存のみで、DBサーバーも常駐プロセスもポートも要らない。
- ライセンスと改変自由: MITライセンス・ソースコード同梱が基本で、AIエージェントによる改変・拡張を前提とする(ai-modifiable-software)。OSS本家のライセンス(AGPLなど)を引き継ぐキットもあり、自前運用だからこそライセンスの線引きの確認が要る。
- AIも自社ホスト: ローカルLLMやローカル埋め込みを使い、外部APIにデータを送らずにAI処理を完結する構成が用意されている(local-llm)。
- 配備ではなく運用設計: 認証・バックアップ・OCR言語・ライセンスの線引き・起動失敗からの復旧まで、自前で面倒を見る前提の技術領域。障害対応も自分たちの責任範囲になる。
- 限界を明示する設計: 公表データが無い項目は推定値で埋めず「未公表」「取得できない」と書き、判定できないものを「該当なし」で流さない。自前運用では説明責任も自社に残るため、この姿勢が商品の芯になっている(unknown-vs-outside-distinction、evidence-traceability)。
Kurage App Storeでの実践
kurage-productsに登場する商品は、ほぼ全て「データはご自身のサーバーの中のファイル」という設計です。販売の枠組みも一貫しており、ソースコードと手順書を買い切りで渡し、AIエージェントで改変できる形にする、そしてデモを触ってから判断してもらうという導線がほぼ全商品で共通しています。展開形態は大きく4つに分けられます。
1ファイルPHP・共有レンタルサーバー型
kurage-memoは「メモを他社サービスに預けたくない方へ——データはご自身のサーバーの中のファイルで、月額はゼロ」と説明し、セルフホスティングの価値そのものを商品化しています。kcaldavはCalDAVサーバー自体を約600行のPHP1ファイルで実装し、iPhone・Android・Thunderbirdといった標準カレンダーアプリと同期できる点が特徴です。このほかkurage-kintai、kurage-ai-meishi-analysis、kurage-crm-agent、kurage-light-chatbot、kreserve、kdbagent、kcheckit、ktrackgeo、kbilling、kpaylink、kinvoice、kurage-vibe-groupware-core、kseo、kurage-line-crm、kurage-vibe-cart、kurage-hr-post、kbbs、kurage-fillout、kurage-facilities、kurage-ai-soudan-chat、kurage-subsidy-navi、kurage-giin-statement-log、kurage-visit-nursing-naviなど、ほぼ全商品が「PHPが動くレンタルサーバーにFTPで置くだけで動作」と明記されています。これらは外部APIやDBサーバーを必要とせず、データが自社サーバーから出ない設計です(self-contained-php-app)。
kurage-vibe-cartのように、他ECからの乗り換えでも商品ページのURLを変えずに済む設計を売りにするものもあり、SaaSから自前運用へ移すときの実務上の障害(ブックマークや検索インデックスの引き継ぎ)まで商品の一部として扱っています。
OSS日本語導入・運用キット型
もう一つの柱は、海外製OSSやAI系OSSを「日本語で社内運用できる状態」にして配布するキット群です。oss-japanese-localizationと組み合わせることで、TrelloやNotion、Zendesk、SalesforceなどのSaaS代替を自前運用できるようになります。
- planka-japanese-kit・vikunja-japanese-kit・docmost-japanese-kit・docspell-japanese-kit — カンバン・タスク管理・社内Wiki・書類管理をDocker/VPSで日本語運用。移行手順、バックアップ、実測トラブル表を同梱。
- libredesk-japanese-kit・freescout-japanese-kit — Zendesk等の代替ヘルプデスク。後者は共有レンタルサーバー編。
- krayin-crm-japanese-kit・espocrm-japanese-kit — SaaS CRMの代替。共有レンタルサーバーでの設置の罠を回避し、日本語ファイルや一般権限ユーザー作成スクリプトを同梱。
- decap-cms-japanese-kit — GitHub Pages上にCMSを持ち、WordPressの保守から解放される静的サイト運用。認証中継だけをPHP1枚で共有レンタルサーバーに置く構成が芯。
- billionmail-japanese-kit — メルマガ配信SaaSの代替。SPF/DKIM/DMARCなど到達性の実務を日本のVPS事情で解説。
- pdfmathtranslate-japanese-kit — 英語PDFの日本語化を自社GPUのローカルLLM/完全オフラインで実現し、文書を社外に出さない構成を選べる。
- kouchou-ai-local-kit — 意見データを外部に送らない完全ローカル構成の広聴AI。APIキー不要でOllama+ELYZA-JP-8Bを使う。
- codealmanac-japanese-kit — コードに書けない社内判断を記憶させるOSSをmacOS/Linuxでセルフホストし、AIコーディング業務の文脈を自社管理する。
- openvpm(OpenVPM日本語版 導入キット) — 動物病院の電子カルテを自院サーバーで動かし、紙カルテからの移行やバックアップまで手順化。月額の利用料がかからないことを明示している。
これらのキットは「入れるだけ」ではなく、日本語UIの当て方、認証・バックアップ・OCR言語・ライセンスの線引き(例: Plankaの第三者向けホスティングは商用ライセンス)まで実測ベースの運用知識を同梱している点に特徴があります。つまりセルフホスティングは配置作業ではなく、運用設計まで含むテーマです。
公的データを自前で引く制度ナビ・防災判定
セルフホスティングの第三の柱は、国の公開データや自治体の条例を自社サーバーに取り込んで引くタイプの商品群です。外部の有料APIや地図サービスに住所を送らずに判定できることが商品価値になっています。
- 制度・暮らし: kurage-seido-navi(困りごと→使える制度・申請先・期限・必要書類。名古屋市版45制度を同梱しJSON差し替えで他自治体へ)、kecnavi(通報先ナビ)、kurage-chinjo-navi、knintei、kghome、khoudei、kshuro、kkaigo、kgakudo、kacnavi、kminpaku、kshuisho、ktoshikeikakuなど。自治体ごとのデータを差し替えて全国展開する型が共通する(municipality-data-swap-expansion)。
- 防災・ハザード: kurage-flood-hazard-map、kurage-landslide-hazard-map、kurage-tsunami-map、kurage-refuge-map、kurage-earthquake-map、kurage-morido-map、kurage-disaster-risk-area-map、kurage-disaster-judgment-set、kurage-juyo-saigai-check。国土数値情報や国土地理院データをSQLiteに取り込み、PostGISもDockerも不要にする構成が目立つ(hazard-map-judgment)。
- 分析・意思決定: kshoken(商圏分析)、kconsensus(合意点マップ)、karchitect(設計書生成)。
この型では、「区域外」と「データなし」「未指定」を必ず区別すること、データ時点を必ず添えること、AIに結論を変えさせないことが設計の芯として繰り返されます。公的データを使う以上、誤って安全だと読ませない責任が運用者に残るため、セルフホスティングは説明責任の設計でもあります(unknown-vs-outside-distinction、deterministic-core、ai-judgment-backend)。
AIを安全に使うための自社ホスト構成
データを外に出さないAI活用も、セルフホスティングの主要な動機になっています。kurage-ai-momはWhisperによる文字起こしとAI議事録下書きを自社サーバー内で処理し、人が承認した確定議事録だけを後から参照できます。kdbagentは設定で宣言した「表・列・操作」の範囲内でのみAIエージェントにDB操作を許可します(config-declared-scope、approval-workflow)。kshokenはe-Statや国土地理院タイルを利用した商圏分析を自社サーバーで完結させ、読み取り専用のMCPサーバー経由でClaude Code等から実データに問い合わせられます(mcp)。kurage-line-crmはLINE公式アカウントへの相談対応を自社レンタルサーバーに置き、送信ツールを既定で無効にするなど、外に出る操作を明示的に有効化したときだけ現れる設計にしています。このように、AI利用の信頼境界を自分たちで管理するために、サーバーごと自社に置く選択が広がっています(trust-boundary)。
ブログ記事にみるOSSセルフホスティングの広がり
kurage-articles-indexには、Kurage独自商品に限らないセルフホスティング実践が多数記録されています。とりわけ2026年8月以降、「海外OSSを立てる → 日本語の穴を埋める → 本家にPRを返す」という一連の手順を実測つきで記録した記事群は、セルフホスティングを配備ではなく運用設計のテーマとして扱っています(oss-upstream-contribution、oss-japanese-localization)。
- 全文検索・ナレッジ: fess(日本発の全文検索OSS。PDF45本を索引し、ollamaのローカルLLMで「聞けば答える」を実測)、openkb(ベクトルDB不要のRAG「PageIndex」で自社ナレッジのAI相談窓口とWikiを構築。deepseekなどのローカルLLMと組み合わせる)。
- 文書管理・OCR・署名: paperless-ngx(日本語請求書を貯める。jpn+eng設定が見出しを壊す実測と正解)、docspell-japanese-kit、docuseal(自社ホストの電子署名基盤をDocker1行で立てる)。
- ヘルプデスク・CRM: zammad(日本語が23%しかなかったところから5,123エントリを全訳し本家Weblateを100%にするまで)、libredesk-japanese-kit、freescout-japanese-kit、krayin-crm-japanese-kit、espocrm-japanese-kit。
- Wiki・タスク管理: docmost-japanese-kit、vikunja-japanese-kit、planka-japanese-kit。いずれも「翻訳100%でも日本語検索に穴がある」という共通の落とし穴が報告されている。
- 自治体・公共: alaveteli(英国WhatDoTheyKnowの中身である情報公開請求OSSの日本語化)、fixmystreet(ちばレポ相当の道路通報システムを無料OSSで自前に)、theyworkforyou(国会会議録の全文検索サイトを自前で立てる)。
- 政治・行政の透明化: kurage-giin-statement-logやkshuishoのように、会議録や答弁書を自社サーバーに取り込んで引く道具も、公的データの自前運用という同じ系譜にある。
- 監視・運用: zabbix(監視基盤とローカルLLMを組み合わせ、障害調査・対応を自律化する運用/ai-agent)、appsmith(公式イメージの初回起動を中断すると永久に壊れる罠を突き止め、データを消さずに復旧した事例)。
- 音声・翻訳: whisper.cppによる日本語文字起こし(47秒の会議音声を27秒・文字誤り率2.7%)や、PDFMathTranslateによる英語PDFの自社翻訳(15ページを3分・費用0円)など、外部サービスに音声・文書を渡さない処理が定着している。kurage-voice-proもこの流れに位置づく。
- 金融AI: openalice-jp(AIトレーディングOSSを日本語既定・Docker・HTTPSで安全にセルフホスト)、ほかkfreqai/TradingAgents系の自前運用(ai-trading)。
これらの事例は、セルフホスティングが単なる配置方法ではなく、データ管理・AI活用・業務自動化を自社の支配下に置くための基盤思想であることを示しています。
エコシステムとの関係
セルフホスティングは、kurageの提供するkurage-platformの基盤であり、kurage-app-storeを中心としたkappstore-ecosystem全体の共通前提です。ソースコードが同梱され、MITライセンスで改変自由なため、AIエージェント(例: claude-code)を用いて自社向けに拡張する運用とも相性が良い(ai-agent、vibe-coding)。販売代理店向けに商品を並べたkurage-productsのような一覧そのものが、セルフホスティング商品の流通チャネルを成り立たせています(sales-partner-system)。
関連項目
- self-contained-php-app — セルフホスティングを容易にする軽量PHPアプリ設計
- oss-japanese-localization — 海外OSSを日本語化して自社運用する流れ
- oss-upstream-contribution — 日本語化の成果を本家に還元する流れ
- local-llm — 外部APIに依存しないAI推論
- config-declared-scope — 管理範囲を設定で制限する安全設計
- approval-workflow — AIの出力を人が承認して確定する設計
- trust-boundary — 自社ホスト環境での信頼境界
- unknown-vs-outside-distinction — 「区域外」と「データなし」を区別する設計
- deterministic-core — 判定を決定的コードで行いAIに委ねない設計
- hazard-map-judgment — ハザードデータを自前で引く判定の型
- municipality-data-swap-expansion — 自治体データの差し替えで全国展開する型
- ai-modifiable-software — AIエージェントによる改変を前提としたソフトウェア
- kurage-platform — セルフホスティングを前提としたKurageの全体基盤
- kappstore-ecosystem — セルフホスティング商品を流通させるストアの生態系
- oss — セルフホスティングの対象となるオープンソースソフトウェア
- kurage-memo、kcaldav、kreserve、kurage-vibe-cart — 代表的なセルフホスティング商品
- kurage-vibe-groupware-core、kvgwc — 定義ファイル1枚で業務アプリを追加できるグループウェア基盤
- kurage-seido-navi、kecnavi、kurage-flood-hazard-map、kurage-tsunami-map — 公的データを自前で引くタイプの商品
- openkb、openalice-jp、zabbix、fess、paperless-ngx、appsmith — ブログで詳しく解説されたセルフホスティング実践例
- zammad、docuseal、alaveteli、fixmystreet、theyworkforyou — 日本語化・自前運用まで記録された海外OSS
See also: kurage-sites、kurage-articles-index、kurage-repos、kurage-lps、kurage-products。
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